超B(L)級 ゾンBL - 君が美味しそう…これって○○? -
4章:新人類 - 4 -
ふと意識が浮上した。
暗闇のなか、電子時計の文字が際立って見える。
深夜一時……
状況が掴めず、ぼんやりしたのは一瞬で、すぐに記憶が蘇った。
そうだ、ここは第ニ海ほたるだ。
感染者と同じ檻に放りこまれて、挙げ句ビーカーを押しつけられたのだ。それから谷山がやってきて……
「うぅ……」
寝台のうえで広海は呻いた。
為す術もなく暗鬱に沈んでいると、レオのことが思い浮かんだ。彼と離れてもう二日になる。無事でいるのだろうか?
ワクチンを作れるかもしれないなんて、甘い幻想に過ぎなかった。或いはいつか実現するのだとしても、どうして広海ばかりがこんな辛い思いをしなければならないのだろう?
……朝になれば、また恐ろしい実験につきあわなければいけないのだろうか。
いっそ逃げてしまいたいが、全くといっていいほど、躰に力が入らない。
(動かねー……)
躰は気だるい虚脱状態だが、妙に意識は冴えている。どうせ眠れないなら、薬なんぞ飲まなければ良かった。
つくづく、ついていない運命を呪いながら、広海は瞼を閉じた。
このまま朝を待つしかないのか……諦めかけた時、喧 ましいエマージェンシー・コールが鳴り響いた。
「っ!?」
ぎょっとして、目を開けたものの、身動きはできない。視線を泳がせていると、廊下から狂気じみた悲鳴が聞こえてきた。
最悪に嫌な予感がする。
まさか――まさか、館内に感染者が侵入したのだろうか?
「た、すけて、誰か……」
必死に叫ぼうとするが、掠れた小声にしかならなかった。
丸窓に感染者がへばりついた瞬間、広海の心臓は止まりかけた。
大丈夫だ、この部屋にはロックがかけられているのだから――自分にいい聞かせるが、あっけなく扉は開いた。
「ッ」
息を飲んだ一刹那 、感染者は頭を吹き飛ばされて昏倒した。
広海は震えあがったが、拳銃を手に立っている人物を見て、目を瞠った。
「レオ……!」
傍に駆け寄ってきたレオは、広海の頬に掌を押しあてた。
薄闇のなか、金緑の眸 が爛と赫 いている。よほど消耗しているのか、その顔は青白く、疲労が色濃く滲みでていた。
「怪我は?」
レオは広海の全身に素早く目を走らせながら、上半身をそっと抱き起こした。
「だい、じょう、ぶ……」
広海は震える声でいった。麻酔のせいで、うまく発音できない。
レオは、広海の手首に残る朱い擦り傷を見て、苦しげな表情を浮かべた。親指で手首を優しく擦りながら、
「かわいそうに……痛かったろ」
思い遣りに満ちた言葉に、広海の胸は熱くなった。レオだって酷い顔色をしているのに、広海の心配をしてくれる。手首の傷より、彼の優しさがこたえた。
「ごめん、レオ……お、俺、迷惑かけて……っ」
きちんと謝罪しようと思うのに、感情が昂ぶって、声が震えてしまう。
「ロミのせいじゃない」
レオは広海を胸に抱き寄せた。広海も逞しい胸に頬を寄せ、懐かしい匂いを吸いこんだ。罵倒されても仕方がないと思っていたのに、レオは怒らなかった。広海を赦したかのように、幼い子をあやすように、髪にくちづけている。
「早くここをでよう。動ける?」
広海は力なく頸を振った。ちっとも役に立たない我が身が口惜しい。
「ごめん……っ……うごけなぃ……」
顔をくしゃくしゃにして熱い涙を流す広海の肩を、レオは励ますようにぽんぽんと軽く叩いた。
「大丈夫だから、泣くな」
レオが身を屈める。涙に濡れた広海の顔を、レオは真剣に見つめてきた。
「ロミ、悪ィ……俺も限界で……少し、もらっていい?」
熱と狂気をたたえた眸 を覗きこみ、承諾の代わりに目を瞑った。
少し冷たい唇が、ゆっくりと激しく、広海の唇に重なった。
「んぅっ」
頭を押さえられ、広海は唇を塞がれたまま呻いた。ゆっくりと、優しくなぶるようにキスをされながら、レオの香りを深く吸いこんだ。
するとレオも興奮したように広海に躰を押しつけて、優しいキスから、荒々しい濃密なキスに変えてきた。熱を帯びた掌に躰を探られながら、舌が痺れるほど搦め捕られ、溢れでる唾液を啜られる。
「ん、ふぅ……っ」
餓えていたといわんばかりの必死さで貪られ、広海は苦しげに喘いだ。レオは少し顔を離すと、名残惜しそうに、広海の唇に親指で触れる。
「ロミ……足りない」
掌が貫頭衣の裾に忍びこみ、内腿をするりと撫であげた。
背筋がぞくりと慄えるのを感じながら、広海は躰を引こうとした。
「ここで?」
押し退けようとレオの胸に手をつくと、レオはその手を掴んで、胴のあたりを横から抱くようにして引き寄せた。
金緑の虹彩は落ち着くどころか、情欲に濡れて、獰猛さを増している。
「最後まではしないから、飲ませて」
暗闇のなか、電子時計の文字が際立って見える。
深夜一時……
状況が掴めず、ぼんやりしたのは一瞬で、すぐに記憶が蘇った。
そうだ、ここは第ニ海ほたるだ。
感染者と同じ檻に放りこまれて、挙げ句ビーカーを押しつけられたのだ。それから谷山がやってきて……
「うぅ……」
寝台のうえで広海は呻いた。
為す術もなく暗鬱に沈んでいると、レオのことが思い浮かんだ。彼と離れてもう二日になる。無事でいるのだろうか?
ワクチンを作れるかもしれないなんて、甘い幻想に過ぎなかった。或いはいつか実現するのだとしても、どうして広海ばかりがこんな辛い思いをしなければならないのだろう?
……朝になれば、また恐ろしい実験につきあわなければいけないのだろうか。
いっそ逃げてしまいたいが、全くといっていいほど、躰に力が入らない。
(動かねー……)
躰は気だるい虚脱状態だが、妙に意識は冴えている。どうせ眠れないなら、薬なんぞ飲まなければ良かった。
つくづく、ついていない運命を呪いながら、広海は瞼を閉じた。
このまま朝を待つしかないのか……諦めかけた時、
「っ!?」
ぎょっとして、目を開けたものの、身動きはできない。視線を泳がせていると、廊下から狂気じみた悲鳴が聞こえてきた。
最悪に嫌な予感がする。
まさか――まさか、館内に感染者が侵入したのだろうか?
「た、すけて、誰か……」
必死に叫ぼうとするが、掠れた小声にしかならなかった。
丸窓に感染者がへばりついた瞬間、広海の心臓は止まりかけた。
大丈夫だ、この部屋にはロックがかけられているのだから――自分にいい聞かせるが、あっけなく扉は開いた。
「ッ」
息を飲んだ
広海は震えあがったが、拳銃を手に立っている人物を見て、目を瞠った。
「レオ……!」
傍に駆け寄ってきたレオは、広海の頬に掌を押しあてた。
薄闇のなか、金緑の
「怪我は?」
レオは広海の全身に素早く目を走らせながら、上半身をそっと抱き起こした。
「だい、じょう、ぶ……」
広海は震える声でいった。麻酔のせいで、うまく発音できない。
レオは、広海の手首に残る朱い擦り傷を見て、苦しげな表情を浮かべた。親指で手首を優しく擦りながら、
「かわいそうに……痛かったろ」
思い遣りに満ちた言葉に、広海の胸は熱くなった。レオだって酷い顔色をしているのに、広海の心配をしてくれる。手首の傷より、彼の優しさがこたえた。
「ごめん、レオ……お、俺、迷惑かけて……っ」
きちんと謝罪しようと思うのに、感情が昂ぶって、声が震えてしまう。
「ロミのせいじゃない」
レオは広海を胸に抱き寄せた。広海も逞しい胸に頬を寄せ、懐かしい匂いを吸いこんだ。罵倒されても仕方がないと思っていたのに、レオは怒らなかった。広海を赦したかのように、幼い子をあやすように、髪にくちづけている。
「早くここをでよう。動ける?」
広海は力なく頸を振った。ちっとも役に立たない我が身が口惜しい。
「ごめん……っ……うごけなぃ……」
顔をくしゃくしゃにして熱い涙を流す広海の肩を、レオは励ますようにぽんぽんと軽く叩いた。
「大丈夫だから、泣くな」
レオが身を屈める。涙に濡れた広海の顔を、レオは真剣に見つめてきた。
「ロミ、悪ィ……俺も限界で……少し、もらっていい?」
熱と狂気をたたえた
少し冷たい唇が、ゆっくりと激しく、広海の唇に重なった。
「んぅっ」
頭を押さえられ、広海は唇を塞がれたまま呻いた。ゆっくりと、優しくなぶるようにキスをされながら、レオの香りを深く吸いこんだ。
するとレオも興奮したように広海に躰を押しつけて、優しいキスから、荒々しい濃密なキスに変えてきた。熱を帯びた掌に躰を探られながら、舌が痺れるほど搦め捕られ、溢れでる唾液を啜られる。
「ん、ふぅ……っ」
餓えていたといわんばかりの必死さで貪られ、広海は苦しげに喘いだ。レオは少し顔を離すと、名残惜しそうに、広海の唇に親指で触れる。
「ロミ……足りない」
掌が貫頭衣の裾に忍びこみ、内腿をするりと撫であげた。
背筋がぞくりと慄えるのを感じながら、広海は躰を引こうとした。
「ここで?」
押し退けようとレオの胸に手をつくと、レオはその手を掴んで、胴のあたりを横から抱くようにして引き寄せた。
金緑の虹彩は落ち着くどころか、情欲に濡れて、獰猛さを増している。
「最後まではしないから、飲ませて」