月狼聖杯記
6章:眠れぬ夜に - 3 -
宣告通り、シェスラはラギスを独占した。
日中は政務をこなすが、朝と夜は人を寄せつけず、ラギスと二人だけで過ごす。明け方まで貪るように抱いて、陽が射しこみ、ラギスが目を醒ますと、乳首や陰茎を唇で愛撫し、
「ん……?」
今朝も目を開けたら、視界に銀糸の髪が揺れていた。シェスラは、盛りあがったラギスの胸筋を両脇から手で掴み、その谷間に端整な顔を埋めて舌を這わせている。
「……何してやがる」
「お早う」
シェスラは上目遣いにラギスを見、舌を這わせながら微笑をこぼした。
「あんたは大人しく眠ることもできないのか」
「眠ったさ」
「朝から盛るな」
「そなたの匂いに惹かれたのだ」
その甘い視線に誘われて、ラギスはシェスラの銀糸の髪に指を潜らせ、背中から尻にかけてのなだらかな曲線を分厚い掌で摩った。
「そのように私を誘惑して……」
シェスラは顔をあげると、淫らな聖杯、とラギスの耳朶にそっと吐息を吹きこんだ。
「ッ、あんたが先に始めたんだ――んッ」
噛みつくように吠えると、口を塞がれた。唇を吸って、
「はぁ、はぁ……」
濃厚な口づけをほどいた時、シェスラの形の良い唇は、艶やかに濡れて朱く染まっていた。
美しい水晶の瞳と目が合い、ラギスは
「ラギス……」
情のこもった声で囁くと、シェスラは足を絡ませ、硬く張り詰めた欲望をラギスの腰に押しつけた。そのまま身体を前後させて、原始的な欲求を訴えてくる。
「はぁ……そなたに包まれたい」
シェスラは自分の膝で巨木のような大腿を割ると、両脚を掴んで大きく開いた。ラギスは顔を背けていたが、ゆっくり、深く刺さる挿入を拒むことはしなかった。
「あ、ぁッ」
喘ぐラギスを食い入るように見つめながら、シェスラは熱い楔を柔肉に沈めた。
「……そなたのここは熱くて、いつでも濡れているな」
「ッ」
唸りながらラギスが睨みつけると、シェスラは薔薇色に上気した顔でほほえんだ。
「褒めているのだ。私を受け入れる準備ができているということ……甘く締めつけて離さない……」
シェスラは身体を倒すと、尖った乳首を口に含んで、ラギスを啼かせた。そのまましゃぶりながら腰を揺らし始める。
「あ、あ、は……んッ」
本格的に腰を遣いだすと、ラギスの思考回路は崩壊していった。官能の渦に突き落とされて、身体を服従させられる。これ以上は耐えられないと思った瞬間、シェスラは身を引いて放熱を遂げた。ラギスも腹を霊液で濡らしている。
絶頂を極めて互いにしがみつきながら、快楽の余韻に身を震わせる。
朝から汗と霊液に塗れて、湯浴みが必要になってしまった。文句をいってもいいはずだが、ラギスはシェスラの愛撫に思い遣りと優しさを感じとっていた。今も彼は、ラギスの耳を優しく撫でている。
(……俺は、なんでじっとしているんだろうな)
ぼんやりしていると、シェスラは満足そうに吐息をもらし、穏やかな声でいった。
「湯浴みをしよう」
「……拭くだけでいい」
「面倒なのだろう? 私が洗ってやる」
「いらねぇよ」
「ほら、こい」
シェスラに抱きあげられ、ラギスは唸りながら彼の腕からおりた。牽制するように尾を振りながら浴場の方へ歩いていくと、後ろからシェスラの忍び笑いが聞こえた。
早朝にも関わらず、風呂は手入れが行き届いてた。浴槽にはたっぷりと熱い湯が張られ、柑橘の花が浮いている。
豪奢な浴槽には目もくれず、かけ湯で済まそうとするラギスの腕を掴み、シェスラは彼を桐の椅子に座らせた。
「背中を洗ってやろう」
そういって自ら石鹸を手にとると、ラギスの逞しい身体に塗り広げた。心地良いが、敏感になっている肌は、少し触れられるだけで再び熱を持ち始めた。
「どうした?」
「……るせぇ」
悪態をつくだけで精一杯だ。快楽を抑えこもうとして、汗を流した傍から汗をかいている。
湯浴みを終える頃には、すっかり疲労困憊していた。ぐったりしているラギスをシェスラは寝椅子に座らせ、大判の麻布で水分を丁寧にふきとった。そのあと裸のまま寝椅子に押し倒され、ラギスはぎょっとした。
「おい、どけよ……ん、ぁ……ッ」
シェスラは情熱的に覆い被さり、文句を吐こうとするラギスを征服するように押さえつけ、脈打つ太い首筋に唇で吸いついた。炎のような航跡を残しながら、鎖骨をたどり、あえぐ胸へとおりていく。
朱く尖った乳首を口に含まれて、ラギスは歯を食い締めた。シェスラはそこを舐めたり、しゃぶったりして甘く
「……また腫れてしまったな」
「てめェのせいだろうが!」
発情している間はひっきりなしに吸われるため、乳首の休まる暇がないのだ。
「ふ、痛むか?」
ラギスは無言を貫いた。痛くはないが、じんと痺れるような甘痒さに苛まれている。服を着ていても、布がこすれるだけで腰に響くとは口が裂けてもいえない。
「うつぶせになれ」
ラギスは黙って従った。シェスラが覆い被さってくる。
「ッ、は……」
喘ぐラギスを焦らすように、ゆっくりと唇は降りていき、硬い臀部を掌で揉みしだきなら、尾のつけ根に舌を這わせた。
「あぁ……っ」
敏感な肌を吸われて、ラギスは小さな悲鳴をあげた。
「ふ、いい声だ」
苛立たしげに尾を振ると、シェスラはくぐもった笑いを漏らした。尾を優しく掴んで、執拗につけ根を舌で舐る。
「あ、ふぅッ……ん、ん、ん」
喉の奥から蕩けた声が零れてしまう。涙の滲んだラギスの金瞳をのぞきこみ、シェスラは囁いた。
「このようにひくつかせて……私がほしいか?」
ほしい。本心ではそう思っていたが、ラギスは渋面をつくって呻いた。
「……では期待に応えて、深く浅く、掻き混ぜてやろう」
「頼んでねぇよ!」
愉しげに笑いながら、シェスラは尻のあわいに指をすべらせた。
「私はそなたのここに、包まれたい……いいだろう……?」
ラギスは意地でも無言を貫こうとしたが、後孔をつん、と突かれて思わず腰を震わせた。シェスラは力強くラギスを抱き起こし、仰向けにして足を割り広げると、目を見つめたまま熱塊でラギスを貫いた。
「んぁッ」
仰け反るラギスの胸を撫で、尖った乳首を指で摘まむ。突きあげながら、雄々しくはちきれんばかりの屹立には触れずに、緩やかな刺激のみを繰り返した。
「は、もぅ……シェスラッ」
身体中が熱い。視姦されている胸の尖りも……血が沸騰しているようだ。焦れてラギスが腰を動かしても、シェスラは熱の籠った目で見つめるばかりで、律動を一定に保っていた。
「私がほしいか?」
執拗な責め苦に永く焦らされ、忘我の果てに追いこまれたラギスは、その問いに無我夢中で頷いた。
「ほしい、お前が、シェスラッ……あぁッ!」
深い突きあげと同時に、シェスラがついと手を伸ばし、ラギスの蕾と、双玉の間を撫でた。
「ひぃあっ」
えもいわれぬ快感に貫かれ、ラギスの腰が跳ねた。指先に力をこめて、卑猥に腰を揺すってしまう。中を犯す熱塊に、敏感なしこりを擦りつけて――
「気持ち善いか?」
「い、いい……っ」
ねっとした視線に局部を舐められ、ラギスは身体を振るわせた。腰が甘く痺れる。下半身が液体のように溶けてしまったようだ。シェスラを呑みこんでいる肉が、どくどくと脈打っている――
「私もいいぞ……」
シェスラは硬く尖った乳首を、やんわりと指で摘んだ。ラギスは膝を締め、剛直を食い締めるように腰をくねらせた。
「腰が動いているではないか」
「んぅッ」
ぐんっと突きあげられ、ラギスは声を上擦らせた。
「だめだッ」
「なぜ?」
「んっ、で、でちまう」
羞恥に顔を染めるラギスを食い入るように見つめて、シェスラは艶めいた笑みを浮かべた。
「だせばいい。見ていてやろう」
「あぁッ、は、んぁ……ッ、や、あ……あぁ――っ」
ラギスは仰け反り、乳首と亀頭の割れ目から、琥珀の蜜を噴きあげた。胸を喘がせ、断続的な痙攣をおこす。
シェスラは、恍惚の表情を浮かべるラギスの頬を優しく撫でたあと、身体中に飛び散った霊液に舌を這わせた。
「んぁ……あ、ン」
目と目があい、どちらからともなく口を吸い合った。舌を搦めて深い交歓に耽る。シェスラはラギスの尻を優しく揉みしだき、再び剛直を埋めた。
「あ、ふっ」
凶器のような楔が奥深くに沈みこむ。シェスラはラギスの足首を掴み容赦なく足を開かせ、腰を打ちつけた。
「あ、あ、あ、んぁっ」
淫らな水音が響く。
「ま、また……あぁっ」
「極めそうか? 何度でもだすがいい……」
四肢が戦慄く。王の雄は萎えることなく、情熱的にラギスを貪る。
艶めかしい刺激に、熾火は再び燃えあがり、ラギスはもはや