メル・アン・エディール - 無限海の海賊 -

6章:告げる想い、秘する想い - 4 -

 沈黙……苦悩を滲ませた熱い吐息が、それを壊した。

「……でも、この気持ちを押しつけることはできない。ティカが大人になるのを、待つべきなんだろう」

 子供と言われたも同然だ。ティカが眉根を寄せると、ヴィヴィアンは宥めるように眉間に口づけた。

「大切にしたいんだ」

「……だから、他の人と過ごすの?」

 ティカにしては鋭い指摘に、ヴィヴィアンは苦笑を零した。

「かわいいティカを見ながら、あさましくも俺は時々欲情しちゃうんだ。どこかで発散しないと、優しい俺でいられないんだよ」

 優しい眼差しに、ティカは確かに身体が昂るのを感じた。彼の首に両腕を絡めるように回す。

「行かないで」

 先の尖った耳朶に囁いた。

「ティカ」

「どこにも、行かないで」

 突然、ヴィヴィアンはティカの首筋に吸い突いた。甘い痛みに、ティカの喉からか細い声が漏れる。

「こんなことをされても?」

「アイ……」

 ヴィヴィアンはティカの真意を探るように、だいだいの瞳を真っ直ぐ見つめた。

「――本当に?」

 青い双眸に、どこか険しい光が宿る。覚悟を試されているようだ。声にしたら震えてしまいそうで、ティカはヴィヴィアンを見つめたまま頷いた。
 神々しい美貌が近付いてきても、逃げない。唇が重なる瞬間、そっと瞼を閉じた。

「ん、んぅ……っ……!!」

 唇が触れた途端に、息もつけぬ激しいキスが始まる。
 深い口づけの合間に、ヴィヴィアンはティカのシャツをたくし上げて、肌を確かめるように撫でた。
 首筋、鎖骨、肩、胸……触れられる度に、身体は魚のように何度も跳ねる。どこもかしこも、熱くて堪らない。
 ヴィヴィアンはようやく唇を離すと、ティカの顎の先にキスをして、ゆっくり首筋を唇で辿る。そのまま胸まで下りて、やがて胸の先端に辿り着くと、ふぅと息をふきかけて、やんわりと唇で挟みこんだ。

「ん……っ」

 尖らせた舌で、先端をなぶられる。たとえようもない刺激が、ティカの全身に走った。くすぐったいだけじゃない、身体の中心に疼くような熱が溜まる。
 身体は逃げようとし、背中は弓なりにしなった。しかし、背中を手で支えられ、追い駆けてくる唇に、乳首ごと口に含まれる。聞いたこともない水音が、ティカの耳に届いた。
 堪らずに腰を揺らめかせると、ヴィヴィアンは右手をティカの下履きの中に忍ばせて、角度を持ったティカの中心を撫で上げた。

「や……っ」

 恐怖に眼を見開いた。
 そんなところを撫でられるんて。ヴィヴィアンはティカの動揺をものともせず、優しく上下に擦り上げる。
 えもいわれぬ快感が走る。自分で触るのとは全く違う。知らなかった。人に触れると、こんなにも甘美な刺激に変わるなんて。
 ヴィヴィアンはティカの小さな乳首を交互に舌で愛しながら、頭をもたげた中心を、ゆっくり包み込むように扱いた。

「んぅ……っ」

 身体中の熱が中心に集まってくる。このままだと、ヴィヴィアンの手を汚してしまう……!

「だめっ! 離して、ヴィーッ!」

 悲哀の滲んだ、必死の声で叫んだ。

「いいから……」

「やめてぇっ!!」

 押しのけようとしても、まるで歯が立たない。顔を背けるティカを、ヴィヴィアンは熱の灯った青い瞳で見つめていた。

「可愛い、ティカ」

「あ、あ、あぁ……っ」

 先端を親指で優しく撫でられた時、ティカは身体を震わせて吐精した。どくどく……熱が零れてゆく。
 思考を奪われるほどの悦楽。身体は悦びに震えても、心は訳も判らず深く傷ついた。

「ふ……ぅ……っ」

 こめかみや頬に触れる、優しいキスが慰めてくれるけれど、ティカは煩そうに顔を振った。
 やめてと言ったのに……ヴィヴィアンは強引すぎる。

「ティカ」

「やだ」

「ティカ」

「嫌い」

 嫌い、と口にした途端、唇を塞がれた。

「んっ」

「嫌い、って言う度にキスする」

 憮然として沈黙すると、ヴィヴィアンは意地悪い笑みを浮かべた。

「言えばいいのに」

「やだ」

 口をへの字にすると、ヴィヴィアンは噴き出した。

「かわいい……あー、俺もどうかしてるな。こんな子供に手を出すなんて」

「子供じゃないッ」

 脊髄反射のように吠えた。

「そう?」

「うん」

「じゃあ、もう少し進んでもいい?」

「アイ……」

 勢いで応えたが、ヴィヴィアンに抱き上げられて、ベッドに横たえられた途端、喉が鳴った。早まったかもしれない……