メル・アン・エディール - 無限海の海賊 -
13章:十五歳の恋人 - 4 -
視線を彷徨わせると、不意に抱きしめられた。こめかみに唇が押し当てられる。
「かわいいな。妬いてくれたの?」
「えっ」
「自分以外の誰かが、俺に愛を囁く姿を想像して嫉妬した?」
沈黙すると、ヴィヴィアンはティカの両肩に手を置いて、少しだけ身体を離した。
複雑な感情を持て余し、顔を歪めるティカを見て、美しい彼は満足そうに微笑む。何もかも見透かしたような笑みに、不意に苛立ちが芽生えた。
「やだ」
厭わしげに顔を背け、手を振り払うと、もう一度両肩を大きな手に包まれた。
「ごめん。からかったわけじゃないよ。恋人が嫉妬してくれたと知って、嬉しかったんだ」
「……」
「さっきの言葉のせいか。ごめんね。でも、気にする必要なんてないよ。どんな洒落た告白も、ティカの“好き”の一言には遠く及ばない」
「……洒落たことなんて、言えない」
憮然として告げると、彼は可笑しそうに小さく吹き出した。
「いいよ。ティカはそのままで」
「でも僕、言ってみたい……」
消え入りそうな声で呟くと、ぎゅうっと抱きしめられた。ヴィヴィアンは嬉しそうに笑う。いつものように、かわいい、と口にしながら。
抱擁に応える気になれず、力なく項垂れていると、彼は訝しげに顔を覗き込んだ。
否応なしに目線を合わせられ、ティカは心を決めると神妙に呟いた。
「……ヴィーの瞳は、本当に青金石色 のように、素敵だと思ったんです。ヴィーは初めて言われる言葉じゃなくても、僕は今、初めて言いました」
「ティカ……」
「僕の感動が、ヴィーに少しも届かないことが、僕は哀しいのかもしれない……」
視界が潤みかけると、慌てて眼を見開いた。こんなことで感傷的になってしまうなんて。ティカは羞恥に駆られたが、ヴィヴィアンは表情を改めてティカの頬を両手で包み込んだ。
「からかったり、笑ったりしてごめん……どんな言葉でも、ティカのくれる言葉なら、俺は嬉しいよ」
「……」
「本当だよ。さっきだって、言われ慣れてるから聞き流したわけじゃなくて、嬉しくて……少し照れ臭かっただけだよ」
どこか気まずげに告げる彼の顔を見て、ティカはようやく肩から力を抜いた。欠片も彼の心に響かなかったわけではないらしい。
「俺に、こんなことを言わせるとは……やるね、ティカ」
面映ゆげに視線を逸らす恋人を見て、ティカの中になんとも形容し難い感情が芽生えた。衝動のままに、手を差し伸べて艶やかな青と白銀の髪に指を潜らせる。
「……っ」
不意を突かれたように、ヴィヴィアンは眼を瞠ると、まじまじとティカを見た。煌めく眼差しに見惚れながら、ティカの内に芽生えた感情は、よく彼の口から聞かされる言葉であった。
「ヴィー、かわいい」
思い浮かんだままに口にすると、彼は呆気に取られた表情を浮かべた後、艶を乗せて笑んだ。ティカは流れる空気が変わったことに気付かず、唐突に唇を奪われた。
「んぅ……っ」
驚いたものの、キスを受け入れると、忽 ち口づけは深いものへと変わっていく。濡れた水音が、煌びやかな部屋に満ちる。
腰に回された腕は、隙間なくティカの身体を引き寄せ、ティカも両腕を彼の首に回した。
合わさった唇から、どちらのものか判らぬ甘い吐息が漏れる。腰に置かれた手は悪戯に滑り、服の上からティカの尻を丸く包みこんだ。
「――っ」
慌てて手を掴もうとするが、不埒な手は巧みに躱す。いやらしく尻を揉みこみ、双丘のあわいへと指を潜らせた。
「……っ、ヴィー」
布の上から窄まりを刺激され、ティカは慄 いた声を上げた。降参を知ってか、不埒な手は、双丘を優しく撫で上げ、宥めるように背中に回される。
「誰がかわいいって?」
青金石色の瞳に悪戯めいた光を灯して、ヴィヴィアンは微笑んだ。
「……」
かわいくない……さっきも、もしかしたら目の錯覚であったかもしれない。
沈黙で応えると、ヴィヴィアンは優しいキスをした後に、満足したように身体を離した。
腕を組んで、ティカが首を捻っていると、ヴィヴィアンは手を伸ばして黒髪を撫でた。優しい仕草で、額に口づける。
「かわいいのは、ティカだよ。俺の小さな恋人」
面映ゆげに視線を逸らしたのは、今度はティカの方であった。
美しい恋人は、覆いかぶさるようにして、再びティカの唇を塞いだ。膝から力が抜け落ちる身体を抱き寄せ、耳朶に囁く。
「部屋に行こう」
小さく頷くと、強い腕に肩を抱き寄せられた。
「かわいいな。妬いてくれたの?」
「えっ」
「自分以外の誰かが、俺に愛を囁く姿を想像して嫉妬した?」
沈黙すると、ヴィヴィアンはティカの両肩に手を置いて、少しだけ身体を離した。
複雑な感情を持て余し、顔を歪めるティカを見て、美しい彼は満足そうに微笑む。何もかも見透かしたような笑みに、不意に苛立ちが芽生えた。
「やだ」
厭わしげに顔を背け、手を振り払うと、もう一度両肩を大きな手に包まれた。
「ごめん。からかったわけじゃないよ。恋人が嫉妬してくれたと知って、嬉しかったんだ」
「……」
「さっきの言葉のせいか。ごめんね。でも、気にする必要なんてないよ。どんな洒落た告白も、ティカの“好き”の一言には遠く及ばない」
「……洒落たことなんて、言えない」
憮然として告げると、彼は可笑しそうに小さく吹き出した。
「いいよ。ティカはそのままで」
「でも僕、言ってみたい……」
消え入りそうな声で呟くと、ぎゅうっと抱きしめられた。ヴィヴィアンは嬉しそうに笑う。いつものように、かわいい、と口にしながら。
抱擁に応える気になれず、力なく項垂れていると、彼は訝しげに顔を覗き込んだ。
否応なしに目線を合わせられ、ティカは心を決めると神妙に呟いた。
「……ヴィーの瞳は、本当に
「ティカ……」
「僕の感動が、ヴィーに少しも届かないことが、僕は哀しいのかもしれない……」
視界が潤みかけると、慌てて眼を見開いた。こんなことで感傷的になってしまうなんて。ティカは羞恥に駆られたが、ヴィヴィアンは表情を改めてティカの頬を両手で包み込んだ。
「からかったり、笑ったりしてごめん……どんな言葉でも、ティカのくれる言葉なら、俺は嬉しいよ」
「……」
「本当だよ。さっきだって、言われ慣れてるから聞き流したわけじゃなくて、嬉しくて……少し照れ臭かっただけだよ」
どこか気まずげに告げる彼の顔を見て、ティカはようやく肩から力を抜いた。欠片も彼の心に響かなかったわけではないらしい。
「俺に、こんなことを言わせるとは……やるね、ティカ」
面映ゆげに視線を逸らす恋人を見て、ティカの中になんとも形容し難い感情が芽生えた。衝動のままに、手を差し伸べて艶やかな青と白銀の髪に指を潜らせる。
「……っ」
不意を突かれたように、ヴィヴィアンは眼を瞠ると、まじまじとティカを見た。煌めく眼差しに見惚れながら、ティカの内に芽生えた感情は、よく彼の口から聞かされる言葉であった。
「ヴィー、かわいい」
思い浮かんだままに口にすると、彼は呆気に取られた表情を浮かべた後、艶を乗せて笑んだ。ティカは流れる空気が変わったことに気付かず、唐突に唇を奪われた。
「んぅ……っ」
驚いたものの、キスを受け入れると、
腰に回された腕は、隙間なくティカの身体を引き寄せ、ティカも両腕を彼の首に回した。
合わさった唇から、どちらのものか判らぬ甘い吐息が漏れる。腰に置かれた手は悪戯に滑り、服の上からティカの尻を丸く包みこんだ。
「――っ」
慌てて手を掴もうとするが、不埒な手は巧みに躱す。いやらしく尻を揉みこみ、双丘のあわいへと指を潜らせた。
「……っ、ヴィー」
布の上から窄まりを刺激され、ティカは
「誰がかわいいって?」
青金石色の瞳に悪戯めいた光を灯して、ヴィヴィアンは微笑んだ。
「……」
かわいくない……さっきも、もしかしたら目の錯覚であったかもしれない。
沈黙で応えると、ヴィヴィアンは優しいキスをした後に、満足したように身体を離した。
腕を組んで、ティカが首を捻っていると、ヴィヴィアンは手を伸ばして黒髪を撫でた。優しい仕草で、額に口づける。
「かわいいのは、ティカだよ。俺の小さな恋人」
面映ゆげに視線を逸らしたのは、今度はティカの方であった。
美しい恋人は、覆いかぶさるようにして、再びティカの唇を塞いだ。膝から力が抜け落ちる身体を抱き寄せ、耳朶に囁く。
「部屋に行こう」
小さく頷くと、強い腕に肩を抱き寄せられた。