FAの世界
2章:慶びごと - 4 -
「嗚呼、なんて……百合の茎のように、甘い香りがいたします」
股間に顔を寄せた男は、陶然と囁いた。薫 をふくむ蜜房 を優しく揉みながら、屹立に高い鼻をこすりつける。すると、蜜口が切なげに喘ぎ、一滴 の蜜を滴 らせた。
「美 し蜜が……」
恍惚の表情で囁いた隷 は、赤い舌を伸ばし、雫を舐めとった。そのまま性器に短いくちづけを繰り返し、根本までおりると、くぼみに強く吸いついた。
「ぁんっ」
烈しい悦楽の目眩が虹を襲った。
こぽり……震える性器から、透明な雫が溢れでる。隷 はそこを凝視したまま、ほっそりした大腿を押さえつけて、くちを大きくひらいた。
「ぅあッ」
熱い粘膜に包まれて、虹の意識は一瞬で溶けそうになった。無意識に足の指先がきゅうっと丸くなる。
「ん、ふ……だめっ」
虹は躰を横に倒そうとするが、緩慢な動作にすぎず、たやすく阻まれてしまう。
「甘い……ン、もっともっと、味わせてくださいませ、ぁ……美 し蜜に感謝を……っ」
甘く貪り喰われて、深い酩酊の波濤 に揺られていると、ひくつく後孔に指が触れた。びくりと虹が震えると、指の動きは一瞬止まったが、
「こちらも……朝露に濡れた薔薇の蕾のようでございます。なんて魅惑的なかぐわしい香気なのでしょう……っ」
昂りをしゃぶられながら、長い指がつぷりと蕾にもぐりこんでくる。
「ぁ……あ、あぁっ」
敏感な肉壁をなぞられると、総身が切なげに震えた。長い指を抜き差しされるほどに、じゅぷじゅぷぷっと水音は激しさを増して、大腿にまで垂れた。
「嗚呼、こんなに蜜をこぼしてっ」
「や……っ」
身を起こそうとする虹の肩を、アーシェルが後ろから押さえこんだ。
「さぁ、種蒔きを始めましょう」
祈りを促す信徒のように、優しく告げた。
神聖といっても過言ではない口調だったが、虹は壮絶な予感に襲われた。
「……種蒔きって、まさか……僕のなかに?」
「ええ、虹様。貴方様は多産と豊穣の象徴。種を蒔けば、必ず実を結ぶのです」
嗚呼――己の躰の変容と、恐ろしいなりゆきに身震いする。しかし眩暈を覚えると同時に、肉の疼きを禁じえなかった。
アーシェルは戸惑う虹を仰向かせると、ぴったりと唇を塞いだ。
「んっ」
既視感を覚える液体を口移しで飲まされ、虹はもがく。しかし、両腕を頭上でひとつに束ねられ、頬を固定されるともう、嚥下するしかなかった。
「ごほっ……何を?」
涙目でにらむと、アーシェルは済まなそうな表情を浮かべた。
「ごく薄めた、子宮狂を誘発する媚薬でございます」
「媚薬っ?」
「どうか御無礼をお赦しください。虹様の負担を少しでも軽くするためでございます」
「そ……人を、なんと……」
虹は怒鳴ろうとしたが、呂律はあやしかった。飲んだ傍から血潮が熱くなり、全身が火照っている。思考に靄がかり、もがく四肢の動きはさらに緩慢になった。
「我が水晶の君に、神の祝福を賜りますように……聖なる胎に、豊穣の実りを授け給え」
天から遣わされた使途のように、涼やかな声で祝禱 を捧げる。
神秘的な姿でありながら、碧い双眸には、深く痼疾 となった狂信者の恍惚が顕れているように見えた。
「実りを願い、種を蒔きましょう」
「ぃや……」
虹は抵抗しようとしたが、小鳥のように、ささやかな動きでしかなかった。逃げ道を探して視線をめぐらせれば、焦がれるような幾つもの熱視線に搦め捕られた。
ちりちりと灼 けそうに強い視線が、しっとり火照った素肌を撫でる。
一種異様な興奮に感染したように、或いは薬の効き目が表れたのか、虹の心臓は速く脈打った。
美しい水晶族たちは、熱烈な恋をしているように、賛嘆と敬愛の眼差しで虹を凝 と見つめている。
「水晶の君……」
薄桃色の長髪の男が、虹の手をとり、恭しく甲に唇を押し当てた。その行為を、虹は無感動で見つめていた。
男たちに促されるまま、四つん這いになり、足を開く。もはや羞恥心はなかった。
しかし、腰を覆う薄絹がめくりあげられ、尻が外気に触れると、かつて味わったことのない不安が兆 した。傍にアーシェルがいることを無意識に確認してしまう。
「どうか恐れないで、虹様……」
彼は宥めるように虹に声をかけると、尻に手を伸ばした。
「んぅッ」
虹はどうにか声を抑えようとしたが、そこに刺激を与えられると、こらえきれぬ嬌声が迸った。
「清らかな原初の水晶で、道を拓きます。幾千の胤 が宿りますよう、祈りをこめて」
叙情詩的な言葉を囁きながら、美しくも淫靡な円柱型の水晶を、ずずっと孔に埋めていく。
「く、ふぅ……ん……っ」
少しずつ、少しずつ奥へと。絶妙な力加減で、虹の奥に入ってくる。
「少し、動かします」
円柱をゆっくり抜き差しされると、虹の腰は勝手に揺らめいた。
「お上手ですよ、虹様……」
アーシェルはうっとり囁きながら、円柱を押して、引いて、また押して……身をくねらせる虹の痴態を眺めながら、ゆっくりと丹念に繰り返した。水晶柱は水飴をからめたみたいに濡れて光り、くち、ぬちと粘着な音を帯び始めた。
透明水晶は、押し広げられた媚肉の内側を明らかにする。そこに熱い視線が注ぎこまれるのを、虹はぼんやりと感じていた。
美しくも淫靡な水晶が引き抜かれていく。水晶族たちの欲望の目が、熟れた秘孔に集中する。
「ぁっ……ふぅ……んっ……あぁんっ!」
ぐぽっと抜け落ちた瞬間、虹は背を弓なりにして喘いだ。溢れでた蜜が腿を塗らしていく。
美しい男たちが腿を掴んで足を割り広げ、そのうちのひとりが孔に顔をうずめた。
「ぁッ!?」
舌を突きいれられ、拒む間もなく、激しく前後し始めた。
「待っ、はげし……ッ! うぁ……んぅっ」
強烈な悦楽に襲われ、虹は全身を戦慄 かせた。どうにか逃れようとするが、腰は固定され、身動きを許されない。秘めた孔を舌に暴かれ、じゅっじゅっじゅるる! 奥から溢れる蜜を、至醇 の葡萄酒、或いは生涯最後の御馳走とでもいうように、貪欲にすすられてしまう。
「ひっぃ、ぁ゛っ、んっ……やぁ! ぁあん……っ」
全身が燃えるように熱い。汗を滴らせて、屹立から蜜が噴きあがり、乳首からも迸る。
水晶族の隷 は欲望に眸をぎらつかせ、蜜に塗れた虹に手を伸ばした。
「ひぃ、離してぇ……っ」
虹は哀願するが、彼らはやめたりしなかった。双つの乳首は、絶えず誰かの舌がからみつき、摘まれ、転がされ、びゅくびゅくと蜜を噴きあげた。
「あぁ、水晶の君! 愛しています……美 し蜜に感謝をっ……」
普段は氷のように冷静な水晶族たちが、頬を紅潮させ、虹に夢中になっている。
恍惚の表情で性器を口に含み、舌をからめてしゃぶりたてる。唇も、指も、汗も。虹の躰の全てが、彼らにとっては天上の美酒だった。
「あぁっ! んっ、ふぅ! あぁんッ」
虹は混乱の極致で泣き喚いた。
切羽詰まった声で窮状を訴えるが、淫蕩な饗宴は始まったばかり。疼く孔には、まだ舌しか挿れられていない。
数えきれぬほどの絶頂を迎え、性器から何もでなくなると、群がっていた水晶族たちはいったん退いた。
「……?」
虹は、うつぶせのまま、のろのろと顔をあげた。朦朧としており、瞳は潤み、頬は紅潮し、唇は朱く腫れている。もはや筋道をたてて考えることはできなかった。
「虹様……」
目があったアーシェルは、驚いたように眸を瞠ると、急に渇きを覚えたように喉を上下させた。
彼は、涙に濡れた虹の頬を労わるように撫でた。何度かそうした後、ゆっくりと虹に覆いかぶさる。月白 の髪が一筋、はらりと流れて虹の背に落ちた。その刺激だけで、虹の身体は木の葉のように震えた。
「虹様……お慕いしております、虹様……」
アーシェルは少し冷たい掌を虹の背中において、ゆっくり撫でおろしていき……大胆に尻を揉みしだいた。
「ふぁ……んっ」
あえかな声があがる。アーシェルは一瞬動きをとめ、次に虹の尻を親指で割り開いた。愛撫で潤みきったそこに、ひたと自身の熱い昂りを押し当てる。
「ひとつになりましょう」
「ぁ……」
先端の肌のなめらかさ。熱さに、躰が陶酔を覚える。
――ようやく、与えられるのだ。
思い知らされた気がした。ずっとこうしてほしかった。アーシェルが欲しかった。
「ぁ、アーシェ……っ」
潤んだ声で虹が呼んだ瞬間、彼は一気に挿入 ってきた。
「ああぁぁッ!」
初めての挿入。奥まで刺さる一突きに、虹は絶頂を極めた。脳がはじけ飛び、星屑になったように感じられた。
「嗚呼、虹様。とても……」
アーシェルは虹の震えが治まるのを待ち、腰を遣いだした。緩急をつけた巧みな律動で子宮を突きあげる感触に、虹は潮 さながら、ふたたび欲望を滾 らせた。
「ぁ、あっ、はぁっ、はげしッ……あっ! あ、あっ、ン、ぁんッ」
短く喘ぐ虹の背中を慈しむように撫でながら、浅く、深く、なかを抉る。
「は……」
艶めいた吐息をもらし、アーシェルの楔がふくれあがった。熱い精液をどっと迸らせ、蠕動 する媚肉を孕ませる。
濃厚な精気がみちみちて、虹は恍惚の表情を浮かべた。悪魔的な愉悦だ。滾りに滾っていたものが放たれ、自らも放ち、熱く白く濡れていく……
しかし、他の男が乗りあげてくるのを見て、官能の熱がわずかに引いた。振り向いてアーシェルを確認すると、
「虹様、美 し蜜をお与えくださりありがとうございます。次は、どうか兄弟 にお与えください」
美貌の隷 は、虹の頬を優しく撫で、くちびるにキスをした。
「我らの飢えは、くちづけや抱擁だけでは癒されないのです。まぐわいこそが良薬……虹様は我らを養い、我らは虹様を養うのです」
「待って、あーしぇる……」
「恐れることは、なにひとつありません。これが水晶族の生きる流儀なのでございます」
アーシェルが体を横にずらすと、別の隷 が虹の後ろに膝をついた。腰を両手でつかみ、躰を倒して背中にキスを浴びせる。
「水晶の君……愛しております」
見知らぬ麗しい青年が囁く。
初めて会ったはずなのに、そのたった一言に、深い思いがこめられていた。激しい恋情と欲情、畏敬の念と敬愛、そういったものが渾然一体になった声だった。
「待って……」
力なく囁いたが、ぐっと腰がせりだされて、熱塊がもぐりこんできた。
「あ、あぁ……っ」
喘ぐ虹の腰を撫でながら、男は横溢 する昂りを虹にしずめていく。震えながら泣いている屹立にも手を伸ばし、優しく擦りながら、根本まで埋めこんだ。
「くふぅ、ンっ」
「お慕いしております、水晶の君……心から愛しております」
耳元で囁いてから、ゆったりとした抽挿 を開始した。虹を怯えさせないよう、配慮が伺えた。波間をたゆたうような律動に、虹の躰から次第に力が抜けていく。そっと背後をうかがうと、美しい菫色の眸と遭った。
「あぅっ!」
不意打ちで奥を突かれ、虹はのけぞる。灼熱の楔 が力強い律動を刻み、やがてうねる媚肉の最奥に熱い飛沫を解き放つと、生命力が全身を循環するのが感じられた。
「なんて甘美なのでしょう。どこもかしこも……貴方様はっ」
吐精の余韻を味わうような、感嘆めいた声だった。
あまりにも非道徳的で、常識外れだと思っていたが、アーシェルのいう通りだった。虹はからからに渇いていて、瑞々しい精気を必要としていた。理屈を超えて間違いなく感じとれる。
嗚呼――己は淫魔の眷属になってしまったのだろうか?
次の男が虹の後ろに立ち、腰を掴んだ。やめて、虹は小さく懇願したが、いくつもの腕が伸ばされ、虹の躰を支え起こした。
「ああぁぁんッ」
ぐんっと熱 りたつ屹立に突きあげられ、虹は胸をさしだすようにして喘いだ。正面にたつアーシェルの、燃ゆるがごとき眸と遭う。海よりも碧い瞳は、ぎらぎらと肉食獣めいた欲望に翳っている。
「んっ、ふぅっ!」
唇を奪われ、強引に舌が割って入ってくる。激しく貪られながら、突きあげられる。
艶めかしい腰の動きで、横溢 した剣 に貫かれ、虹は髪をふりみだした。暴れようにも、四肢を搦め捕られて逃げられない。
「ひぁッ! そこぉ……っ……ああぁッ!」
情け容赦なく揺さぶられて、心臓は壊れそうなほど動悸している。まるで全世界が胎動しているようだ。
遍満 する荒い呼吸と熱気に包まれて、ぱっちゅん、ぱっちゅん、穿たれる媚肉は海嘯 に嚙みつかれたように白く泡だちおどる。
「くぁッ……ひ、ぁんっ、あ、あぁ……っ」
虹は抗し難いほどに敏感になって、淫らに濡らされた躰で、代わる代わる肉棒に貫かれた。
強烈な炎に烈しく攻めたてられ、胎 に熱い精をぶちまかれる。自らも薄くなった白蜜を噴きあげると、蝗 が唐黍 に群がるみたいに、幾人もの男たちに舐めしゃぶられた。
「ひぃ、やめて、舐めないで、はっ……やぁっ、ン……だめってぇ……っ」
恥も外聞もなく涙まじりに懇願したが、容赦のない愛撫は続いた。美 し蜜に感謝を――淫らな文句を囁きながら、乳首も陰茎も指の合間にいたるまで、躰のあらゆる場所に舌とくちびるが這わされた。
そして繰り返される突きあげ――結合部は、己の蜜と吐精された白濁がまざりあい、氾濫する湖、或いは熔解 した欲望の坩堝 さながらだった。
淫靡な水音に鼓膜までも犯されながら、躰の一番やわらかいところを突かれて、突かれて、突かれて、硬く尖った乳首を指に挟まれ、蜜を噴きあげて、噴きあげて、噴きあげて……
帳をおろした寝室には、乳と愛液の香にみちみちた。
狂気を孕んだ豊穣の宴は一晩中続き、星の煌めきが薄れ始めたころにようやく終わりを告げた。
最後の楔 がぬけたあとの秘孔からは、こぽこぽと白い精液が河のように流れていた。
股間に顔を寄せた男は、陶然と囁いた。
「
恍惚の表情で囁いた
「ぁんっ」
烈しい悦楽の目眩が虹を襲った。
こぽり……震える性器から、透明な雫が溢れでる。
「ぅあッ」
熱い粘膜に包まれて、虹の意識は一瞬で溶けそうになった。無意識に足の指先がきゅうっと丸くなる。
「ん、ふ……だめっ」
虹は躰を横に倒そうとするが、緩慢な動作にすぎず、たやすく阻まれてしまう。
「甘い……ン、もっともっと、味わせてくださいませ、ぁ……
甘く貪り喰われて、深い酩酊の
「こちらも……朝露に濡れた薔薇の蕾のようでございます。なんて魅惑的なかぐわしい香気なのでしょう……っ」
昂りをしゃぶられながら、長い指がつぷりと蕾にもぐりこんでくる。
「ぁ……あ、あぁっ」
敏感な肉壁をなぞられると、総身が切なげに震えた。長い指を抜き差しされるほどに、じゅぷじゅぷぷっと水音は激しさを増して、大腿にまで垂れた。
「嗚呼、こんなに蜜をこぼしてっ」
「や……っ」
身を起こそうとする虹の肩を、アーシェルが後ろから押さえこんだ。
「さぁ、種蒔きを始めましょう」
祈りを促す信徒のように、優しく告げた。
神聖といっても過言ではない口調だったが、虹は壮絶な予感に襲われた。
「……種蒔きって、まさか……僕のなかに?」
「ええ、虹様。貴方様は多産と豊穣の象徴。種を蒔けば、必ず実を結ぶのです」
嗚呼――己の躰の変容と、恐ろしいなりゆきに身震いする。しかし眩暈を覚えると同時に、肉の疼きを禁じえなかった。
アーシェルは戸惑う虹を仰向かせると、ぴったりと唇を塞いだ。
「んっ」
既視感を覚える液体を口移しで飲まされ、虹はもがく。しかし、両腕を頭上でひとつに束ねられ、頬を固定されるともう、嚥下するしかなかった。
「ごほっ……何を?」
涙目でにらむと、アーシェルは済まなそうな表情を浮かべた。
「ごく薄めた、子宮狂を誘発する媚薬でございます」
「媚薬っ?」
「どうか御無礼をお赦しください。虹様の負担を少しでも軽くするためでございます」
「そ……人を、なんと……」
虹は怒鳴ろうとしたが、呂律はあやしかった。飲んだ傍から血潮が熱くなり、全身が火照っている。思考に靄がかり、もがく四肢の動きはさらに緩慢になった。
「我が水晶の君に、神の祝福を賜りますように……聖なる胎に、豊穣の実りを授け給え」
天から遣わされた使途のように、涼やかな声で
神秘的な姿でありながら、碧い双眸には、深く
「実りを願い、種を蒔きましょう」
「ぃや……」
虹は抵抗しようとしたが、小鳥のように、ささやかな動きでしかなかった。逃げ道を探して視線をめぐらせれば、焦がれるような幾つもの熱視線に搦め捕られた。
ちりちりと
一種異様な興奮に感染したように、或いは薬の効き目が表れたのか、虹の心臓は速く脈打った。
美しい水晶族たちは、熱烈な恋をしているように、賛嘆と敬愛の眼差しで虹を
「水晶の君……」
薄桃色の長髪の男が、虹の手をとり、恭しく甲に唇を押し当てた。その行為を、虹は無感動で見つめていた。
男たちに促されるまま、四つん這いになり、足を開く。もはや羞恥心はなかった。
しかし、腰を覆う薄絹がめくりあげられ、尻が外気に触れると、かつて味わったことのない不安が
「どうか恐れないで、虹様……」
彼は宥めるように虹に声をかけると、尻に手を伸ばした。
「んぅッ」
虹はどうにか声を抑えようとしたが、そこに刺激を与えられると、こらえきれぬ嬌声が迸った。
「清らかな原初の水晶で、道を拓きます。幾千の
叙情詩的な言葉を囁きながら、美しくも淫靡な円柱型の水晶を、ずずっと孔に埋めていく。
「く、ふぅ……ん……っ」
少しずつ、少しずつ奥へと。絶妙な力加減で、虹の奥に入ってくる。
「少し、動かします」
円柱をゆっくり抜き差しされると、虹の腰は勝手に揺らめいた。
「お上手ですよ、虹様……」
アーシェルはうっとり囁きながら、円柱を押して、引いて、また押して……身をくねらせる虹の痴態を眺めながら、ゆっくりと丹念に繰り返した。水晶柱は水飴をからめたみたいに濡れて光り、くち、ぬちと粘着な音を帯び始めた。
透明水晶は、押し広げられた媚肉の内側を明らかにする。そこに熱い視線が注ぎこまれるのを、虹はぼんやりと感じていた。
美しくも淫靡な水晶が引き抜かれていく。水晶族たちの欲望の目が、熟れた秘孔に集中する。
「ぁっ……ふぅ……んっ……あぁんっ!」
ぐぽっと抜け落ちた瞬間、虹は背を弓なりにして喘いだ。溢れでた蜜が腿を塗らしていく。
美しい男たちが腿を掴んで足を割り広げ、そのうちのひとりが孔に顔をうずめた。
「ぁッ!?」
舌を突きいれられ、拒む間もなく、激しく前後し始めた。
「待っ、はげし……ッ! うぁ……んぅっ」
強烈な悦楽に襲われ、虹は全身を
「ひっぃ、ぁ゛っ、んっ……やぁ! ぁあん……っ」
全身が燃えるように熱い。汗を滴らせて、屹立から蜜が噴きあがり、乳首からも迸る。
水晶族の
「ひぃ、離してぇ……っ」
虹は哀願するが、彼らはやめたりしなかった。双つの乳首は、絶えず誰かの舌がからみつき、摘まれ、転がされ、びゅくびゅくと蜜を噴きあげた。
「あぁ、水晶の君! 愛しています……
普段は氷のように冷静な水晶族たちが、頬を紅潮させ、虹に夢中になっている。
恍惚の表情で性器を口に含み、舌をからめてしゃぶりたてる。唇も、指も、汗も。虹の躰の全てが、彼らにとっては天上の美酒だった。
「あぁっ! んっ、ふぅ! あぁんッ」
虹は混乱の極致で泣き喚いた。
切羽詰まった声で窮状を訴えるが、淫蕩な饗宴は始まったばかり。疼く孔には、まだ舌しか挿れられていない。
数えきれぬほどの絶頂を迎え、性器から何もでなくなると、群がっていた水晶族たちはいったん退いた。
「……?」
虹は、うつぶせのまま、のろのろと顔をあげた。朦朧としており、瞳は潤み、頬は紅潮し、唇は朱く腫れている。もはや筋道をたてて考えることはできなかった。
「虹様……」
目があったアーシェルは、驚いたように眸を瞠ると、急に渇きを覚えたように喉を上下させた。
彼は、涙に濡れた虹の頬を労わるように撫でた。何度かそうした後、ゆっくりと虹に覆いかぶさる。
「虹様……お慕いしております、虹様……」
アーシェルは少し冷たい掌を虹の背中において、ゆっくり撫でおろしていき……大胆に尻を揉みしだいた。
「ふぁ……んっ」
あえかな声があがる。アーシェルは一瞬動きをとめ、次に虹の尻を親指で割り開いた。愛撫で潤みきったそこに、ひたと自身の熱い昂りを押し当てる。
「ひとつになりましょう」
「ぁ……」
先端の肌のなめらかさ。熱さに、躰が陶酔を覚える。
――ようやく、与えられるのだ。
思い知らされた気がした。ずっとこうしてほしかった。アーシェルが欲しかった。
「ぁ、アーシェ……っ」
潤んだ声で虹が呼んだ瞬間、彼は一気に
「ああぁぁッ!」
初めての挿入。奥まで刺さる一突きに、虹は絶頂を極めた。脳がはじけ飛び、星屑になったように感じられた。
「嗚呼、虹様。とても……」
アーシェルは虹の震えが治まるのを待ち、腰を遣いだした。緩急をつけた巧みな律動で子宮を突きあげる感触に、虹は
「ぁ、あっ、はぁっ、はげしッ……あっ! あ、あっ、ン、ぁんッ」
短く喘ぐ虹の背中を慈しむように撫でながら、浅く、深く、なかを抉る。
「は……」
艶めいた吐息をもらし、アーシェルの楔がふくれあがった。熱い精液をどっと迸らせ、
濃厚な精気がみちみちて、虹は恍惚の表情を浮かべた。悪魔的な愉悦だ。滾りに滾っていたものが放たれ、自らも放ち、熱く白く濡れていく……
しかし、他の男が乗りあげてくるのを見て、官能の熱がわずかに引いた。振り向いてアーシェルを確認すると、
「虹様、
美貌の
「我らの飢えは、くちづけや抱擁だけでは癒されないのです。まぐわいこそが良薬……虹様は我らを養い、我らは虹様を養うのです」
「待って、あーしぇる……」
「恐れることは、なにひとつありません。これが水晶族の生きる流儀なのでございます」
アーシェルが体を横にずらすと、別の
「水晶の君……愛しております」
見知らぬ麗しい青年が囁く。
初めて会ったはずなのに、そのたった一言に、深い思いがこめられていた。激しい恋情と欲情、畏敬の念と敬愛、そういったものが渾然一体になった声だった。
「待って……」
力なく囁いたが、ぐっと腰がせりだされて、熱塊がもぐりこんできた。
「あ、あぁ……っ」
喘ぐ虹の腰を撫でながら、男は
「くふぅ、ンっ」
「お慕いしております、水晶の君……心から愛しております」
耳元で囁いてから、ゆったりとした
「あぅっ!」
不意打ちで奥を突かれ、虹はのけぞる。灼熱の
「なんて甘美なのでしょう。どこもかしこも……貴方様はっ」
吐精の余韻を味わうような、感嘆めいた声だった。
あまりにも非道徳的で、常識外れだと思っていたが、アーシェルのいう通りだった。虹はからからに渇いていて、瑞々しい精気を必要としていた。理屈を超えて間違いなく感じとれる。
嗚呼――己は淫魔の眷属になってしまったのだろうか?
次の男が虹の後ろに立ち、腰を掴んだ。やめて、虹は小さく懇願したが、いくつもの腕が伸ばされ、虹の躰を支え起こした。
「ああぁぁんッ」
ぐんっと
「んっ、ふぅっ!」
唇を奪われ、強引に舌が割って入ってくる。激しく貪られながら、突きあげられる。
艶めかしい腰の動きで、
「ひぁッ! そこぉ……っ……ああぁッ!」
情け容赦なく揺さぶられて、心臓は壊れそうなほど動悸している。まるで全世界が胎動しているようだ。
「くぁッ……ひ、ぁんっ、あ、あぁ……っ」
虹は抗し難いほどに敏感になって、淫らに濡らされた躰で、代わる代わる肉棒に貫かれた。
強烈な炎に烈しく攻めたてられ、
「ひぃ、やめて、舐めないで、はっ……やぁっ、ン……だめってぇ……っ」
恥も外聞もなく涙まじりに懇願したが、容赦のない愛撫は続いた。
そして繰り返される突きあげ――結合部は、己の蜜と吐精された白濁がまざりあい、氾濫する湖、或いは
淫靡な水音に鼓膜までも犯されながら、躰の一番やわらかいところを突かれて、突かれて、突かれて、硬く尖った乳首を指に挟まれ、蜜を噴きあげて、噴きあげて、噴きあげて……
帳をおろした寝室には、乳と愛液の香にみちみちた。
狂気を孕んだ豊穣の宴は一晩中続き、星の煌めきが薄れ始めたころにようやく終わりを告げた。
最後の