COCA・GANG・STAR
3章:C9H - 7 -
狂気の夜が更けていく。
渋谷に聳えるタワー・マンションに着くと、呆然自失する優輝を、遊貴はリビングのソファーに座らせた。
死人のような気分でいたが、優輝はどうにか笑みらしきものを顔に浮かべて、友哉に無事だけは伝えた。後で説明すると約束してスカイプを落とすと、虚ろな眼差しでソファーに沈み込んだ。
脳が考えることを、拒否しているのかもしれない。
遊貴は、物言わぬ優輝の隣に腰掛けて、そっと肩を抱き寄せた。
腕の中でじっとしていると、頭にちゅっとキスが落ちた。ほんの一時間前、非情に銃を撃った同じ人間とは思えぬ仕草だ。
もたれかかっていると、おとがいに指がかけられ、上向かされた。
紫の瞳と視線が絡む――眞鍋に向けて引き金をひく遊貴の姿が、脳裏に蘇った。
恐怖を振り払うように、優輝は慌てて立ち上った。訳も分からず、駆け出す。
「優輝ちゃん!」
ここから逃げ出さなくては、そう思ったが、リビングを出ようとしたところで足を止めた。
「あ……」
恐くて、振り向けない。遊貴が近付く気配を察知して、避けるように壁際に寄る。
視線を背けたまま、両腕をさする優輝を見て、遊貴は紫の瞳を冷たく細めた。
「……優輝ちゃん、何もされなかった?」
「え?」
「眞鍋に、何もされなかったよね?」
恐る恐る振り向くと、どうなの、と遊貴は尋問口調で訊ねた。
「いや……」
「俺が怖い?」
穏やかだが、低めた声に気圧される。無意識に後じさると、壁に背が当たった。
「何をいわれた?」
「え……」
目を逸らそうとすると、頬を撫でられた。そこに触れるだけのキスを与えられる。吐息が頬に触れて瞳を固く瞑ると、唇にもキスをされた。
「――ッ」
唇は離れたけれど、遊貴はまだすぐ傍にいる。
「……逃げないの?」
試すように、遊貴は囁いた。ここから逃げたいのか、逃げたくないのか、優輝にも判らない。
ずるずると背中から頽れると、遊貴も追い駆けるように膝をついた。床にへたりと座り込んだ優輝の顔を覗き込み、頭を両手で丸く包みこむ。
「ん、ぁ……っ」
視線が絡むと、すぐに荒々しく唇を奪われた。
舌を挿し入れられて、好き勝手に荒らされる。腕を掴む手は、おかしいくらいに震えて、まとに力が入らない。
「は……心配したよ」
切なさの滲んだ、掠れた声。優輝の中で、何かが弾けた。
ぼろぼろと泣き出す優輝を見て、遊貴は少し困ったような顔をした。
「嫌だった?」
首を左右に振る。彼にしては自信なさそうに、恐る恐る優輝の頬に手を伸ばした。綺麗な菫色の瞳に、顔をぐしゃぐしゃにした優輝が映っている。
「俺……ッ! 本当は、すっげぇ怖くて……んぅっ」
告げた途端に、再び唇を塞がれた。角度を変えて、何度も貪られる。寒いとすら思っていたのに、瞬く間に体温が上昇していく。
「……っ」
シャツの内側に手が潜り込んだ。
動揺しきってその手を掴んだが、遊貴は怯まずに触れてくる。下腹を撫でられ、きゅっと下肢に力が入り、自分とは思えぬ甲高い声が洩れた。
「遊貴……っ」
切羽詰まった声で名前を呼ぶと、欲に濡れた瞳が優輝を映した。
背筋にびりびりと電流が走る。仰け反るように顔を逸らすと、追い駆けてきた唇に、噛みつかれるようにして塞がれた。
「んぅ」
口内を貪られながら、手のひらで胸を
艶めいた息遣いに、身体が熱くなる。角度を持った中心を撫でられて、ひくりと優輝の腰は揺らめいた。
「や、やだ……」
腰を引くと、遊貴は逃がさないというように背中に腕を回して、引き寄せた。