COCA・GANG・STAR
1章:優輝と遊貴 - 12 -
瞳を揺らす優輝を見て、遊貴もまた菫色の瞳を瞬いた。
「あれ?」
キスした本人は、きょとんとした顔で首を傾けた。その瞬間、優輝は音が立ちそうなほど大袈裟なアクションで、遊貴から遠ざかった。
「あれ? じゃねぇよッ! 何してくれてんだ、テメーはッ!」
指を差して喚く優輝を、遊貴は戸惑ったような顔で見つめている。艶のある黒髪をかき上げながら、形の良い唇を開いた。
「いや……欲求不満みたいだから、同じ名前の
「意味判んねぇッ」
「……俺も意外。震える優輝ちゃんに、ときめいたな」
「は?」
「頼りなげに、俺の腕掴んだりしちゃって」
「ッ?! 何いってんの?」
「確かめさせて」
「は?」
「こっちにきて。もう一回キスさせて」
「い、意味判んない」
動けずにいると、遊貴の方からにじり寄ってきた。優輝は慌ててソファーから立ち上ると、部屋の中ほどへ逃げた。
どういうわけか、遊貴も追い駆けてきた。見つめ合ったまま、じりじりと後退する。壁に背がつくと、思わず喉が鳴った。顔に影が落ちる。熱を灯した紫の瞳が怖い……
「……っ」
「ちょ!?」
耳を抑えて長身を仰ぐと、強い紫の視線に射抜かれた。
空気が変わる。後頭部を丸く包みこまれて、綺麗な顔が降りてくる――
「んぅ……っ!?」
どうしよう、と思う間に唇を塞がれた。唇を閉ざす余裕もなく、舌を挿し入れられる。
全力で肩を押したが、遊貴は引こうとしない。優輝の手首をきつく掴んで、軽々と抵抗を抑え込む。
舌が触れ合い、優輝は怯えて舌を引っ込めた。なのに、逃げる舌を追い駆けるように、
「や……ぁ、ゆ」
どうしてキスをしているのか、意味が判らない。唇を離そうとすると、叱るように舌を甘噛みされた。
「んぅっ」
膝の力が抜けて、
息苦しさに喘ぐ優輝を見て、名残惜しそうに、遊貴はキスをほどいた。二人の間に伝う銀糸を、艶めかしく舌で切る。
「かわいいね……」
潤んだ瞳で上目遣いに仰ぐ優輝を見下ろし、陶然と遊貴は呟いた。唇に視線が落ちるのを感じて、優輝の全身に
「――んぅ」
再び唇が重なり、
(どうして……やめてくれよ……ッ!)
感情が昂り、目の端に涙が滲んだ。濡れた
長く情熱的なキスがようやく終わると、優輝は壁を背に押しつけて、ずるずると座りこんだ。遊貴も追い駆けるように膝をつく。
頭がくらくらする。肩で息を整えていると、首筋に吸いつかれた。迸りそうになる声を必死に抑えると、襟をくつろげられ鎖骨に吸いつかれた。
「んッ、あぁ」
「優輝ちゃんの声、エロくていいね。腰にクる……勃った」
吐息混じりに囁かれ、優輝の顔にさっと血が上った。
「な、ば、ばっかやろう!!」
感情が爆発して、渾身の力で振り払った。遊貴は大して動じなかったが、僅かに身体を離した。
「気持ち良くするって約束するから、セックスしない?」
「はぁ――っ!?」
酔狂にもほどがある。口を開けて呆ける優輝を、遊貴はラグマットの上に押し倒した。
「ちょっ……」
啄むようなキスが顔中に雨と降る。恋人にするような、優しくて甘いキス。
「やめろって」
「やめない」
「遊貴!」
圧し掛かる身体の下でもがくと、ぐっと下肢を押し付けられた。昂りが擦れて、優輝は驚愕に目を見開いた。