BLIS - Battle Line In Stars -
episode.4:BLIS JL - 7 -
ROUND 9は荒れた。
Inner Infinity Impact VS Stylish Logic Styleを、〇-二でStylish Logic Styleが下し、トーナメント戦績を五-五、チームランク四位につけた。
Summer Seasonも、残すところあと一週。Round10を残して、これまでの戦績はこのようになった。
【1】Team Deadly Shot
【2】Inner Infinity Impact
【3】Hell Fire
【4】Stylish Logic Style
【5】GIGA Force
【6】Galaxy Boys
恐ろしいことに、一位のTeam Deadly Shotは、前人未到のリーグ無敗を爆走している。
二位はInner Infinity Impactだが、リーグ途中にして、外国人選手二名がビザの問題で自国へ帰ってしまった。替えのリザーブ選手を出してリーグを続行しているが、チームの威力は完全に失速してしまった。
三位につけているのがHell Fireだ。
ROUND 10をHell Fireが〇-二で負けた場合、総合戦績で四位のStylish Logic Styleに負けることになる。
次の十戦目でInner Infinity Impactに一勝でもすれば、三位確実。セミファイナルに出場が確定する。〇-二で負けた場合は、四位確定。現在四位につけているStylish Logic Styleが、セミファイナル出場に確定する。
失速したInner Infinity Impactに対して、海外選手に頼り過ぎ、と指摘する声もあるが、チームの主力二人が抜けてしまっては、チーム弱体化はいたしかたない。
この事態に、勝率が上がるとHell Fireの面々は喜んだが、和也だけは少々気の毒そうな顔をした。
「チームから二人抜けては、もう接続障害(DC)と同じだよね。少し同情しちゃうな」
「いいんだよ、うちの勝率が上がるんだから」
ルカはばっさり切り捨てた。
「最終戦にいいマッチングが残ったよね。二、三、四位が最終戦で決まるなんて、すごくドラマチックだ」
アレックスが笑うと、まぁね、とルカも笑った。ルカは笑顔のまま昴を振り向くと、バシッ、と肩を叩いた。
「気合い入れてね! 最終戦の視聴率は跳ね上がるよ」
「おうッ」
さぁ――意気込んだROUND10。
Hell FireはInner Infinity Impactを二-〇で完封した!
フルボッコにしてやった。気持ちの良いストレート勝ちに昴は有頂天になった。
「見事にPICKがはまったなぁ! うぉーッ、セミファイル進出かよ!?」
吠える昴の頭に、連は手を置いた。
「3Iには優秀なアナリストがいる。今日の試合は徹底的に分析されて、きっちり対策を立ててくるだろうから、同じ構成で勝てると考えない方がいい」
ボロ勝ちした後でも、連は相変わらず冷静だ。
勝負に勝ったが、試合後の戦績を見て、ルカは般若の表情になった。昴の合計通常攻撃ダメージが、敵ACEに比べて低かったのだ。
「昴ッ! 火力って知ってる?」
「すみませんッした!」
「ちゃんとダメージ出してよ!」
肩を激しく揺さぶられて、昴は
「ご、ごめん~~っ」
ゲームに勝利してもルカは厳しい。
「みっちり練習するからね!」
「ハイッ!!」
ROUND10を終えて、気がつけばもう八月。昴も学校が夏休みになり、平日でもメンバーと一緒に朝から練習できる。
セミファイナルまでの一週間は、朝から晩までBLIS漬けだった。
八月七日。セミファイナル。
対戦カードは、Inner Infinity Impact VS Hell Fire。
ROUND 10を戦ったチームの再戦だ。
敵は、BAN&PICKから連の意表を突いてきた。三つのBAN枠全てを、連の得意とするディオスに使ってきたのだ。ものすごく警戒されている。
だが、こういう事態も予め想定して対策を立ててある。連の強さの一つは、限界のないディオス・リストにあるといってもいい。
後から聞いた話では、連のPICKがモニタに映った途端に、SNSは沸いたらしい。この局面で、連は今リーグ一度も使ったことのないディオスをPICKしたのだ。
敵がBANを連に集中した分、他のメンバーはそれぞれ得意とするメタディオスをPICKすることができた。
試合は緊張感に満ちていた。
ROUND10ではHell Fireの圧勝だったけれど、セミファイナルを前に、Inner Infinity Impactはしっかり戦略・戦術を修正してきた。
一戦目をInner Infinity Impact、二戦目をHell Fireがとり、勝敗を決する三戦目はお互いに慎重になり、試合時間が五〇分を越えた!
苦戦を強いられたが、どうにかHell Fireが勝った。
Hell Fire、グランドファイナル進出決定。
対戦カードは、Team Deadly Shot VS Hell Fire。
相手はリーグ無敗の王者だ。これまで二連敗している相手に、Hell Fireの面々は、朝早くから、夜遅くまで対策を講じた。
連は家にいても、ずっと戦略のシミュレーションを練っている。
「……緊張している?」
PCの前でシミュレーションしている連の背中に声をかけると、いや、と連は首をふった。
「TDSはオンラインでもオフラインでも強いチームだからね。万全の準備をしておきたい」
「そっか……ちゃんと寝ろよ」
もう夜中の三時過ぎだ。明日も朝から練習があるのに、連はいっこうに休もうとしない。
「ありがとう。昴は? 緊張している?」
「してる。でも、わくわくする気持ちもある。オフラインで試合できるし、リーグで闘うのは楽しいよ。もっと、いろんな人と戦ってみたい」
リラックスしていう昴を見て、連はほほえんだ。
視線をかわし、ふとしみじみとした気持ちを味わった。連は親友で、再会して恋人になり、今日までリーグを共に乗り越えてきた。前から仲は良かったが、今の方がずっと、分かり合えていると感じる。
「勝つぞー」
ゆるく昴がいうと、おう、と連も笑った。