BLIS - Battle Line In Stars -

episode.3:TEAM - 7 -


 家に帰るまで、殆ど会話はなかった。
 緊張しているせいか、駅前の賑わった風景も妙に冴え冴えとして映る。夜闇の空に皓々こうこうと輝く月を仰ぎながら、家に帰った後の展開を考えた。
 手足が震えそうになるけれど、これから起こることは、昴も望んでいることだ。
 意を決して家に入った。
 廊下の電気を点けて、先にリビングに入っていく連の背中を見つめていると、心臓がおかしいくらいに騒ぎ始めた。

「とりあえず……BLISのリプレイ見る?」

 リビングルームに入り、気を紛らわせるように提案すると、連は淡く微笑した。

「いいよ。さっきのリプレイを見ようか」

「おう」

 連が準備している間に、昴はインスタントの珈琲をいれた。マグカップを二つ持って、ソファーの前に胡坐を掻いて座る。
 連は、六十インチのモニタにリプレイ映像を映すと、一時停止した状態で、リモコンを手に戻ってきた。昴のすぐ後ろに座る。背後から抱きしめられ、肩に顎が乗せられた。

「ッ!?」

 え、この体勢で?
 昴は激しく狼狽したが、連はナチュラルに昴を抱きしめたまま、動画に視線を注いでいる。

「再生するよ?」

「おう」

 動画が再生されて集中しようとするが、どうしても密着した体温、充溢した腕や腿の筋肉に気を取られてしまう。心臓の音が、聞こえてしまわないか不安だ。

「……ドキドキしてるね」

「ッ!」

 背後から耳朶に囁かれて、口から心臓が飛び出そうなほど驚いた。足の合間から逃げ出そうとしたら、思いのほか強い力で引き留められた。

「あッ」

 耳殻をなぞるように、唇が辿っていく。穴に舌を挿し入れられ、濡れた音がダイレクトに鼓膜を叩き、下肢にまで響いた。

「ちょ、連?」

 上擦った声が出た。内股を撫でられて、背筋がぶるりとふるえる。

「見ていていいよ」

「いや、でも……」

「好きにさせてもらうから」

「え……」

 カーゴパンツの上から、角度を持ち始めた昂りを、長い指がなぞりあげる。思わず身をくねらせて逃げを打つと、連は手を止めた。

「触られるのは、嫌?」

「……嫌、じゃない」

 抱き寄せられて、また唇を塞がれた。耳朶に吹き込むように、本当に? と囁かれる。頷くと、連は覚悟を試すように昴の顔を横向けてキスを繰り返した。何度も、何度も。

「ふ、ぅ」

 いつの間にか、シャツのボタンは全て外され、あられもなく前がはだけていた。

「あう」

 素肌の上を指がつと滑り、高い声が喉から迸った。慌てて唇を噛みしめるが、

「うぁッ」

 乳首を指で倒された瞬間、堪えきれない嬌声が迸った。
 おののく昴を、涼しい眼差しが見下ろしている。決意を試されているようで、昴の方から連にしがみついた。顔を近づけて、そっと唇を重ねると、唇は火がついたように燃え上がった。

「ンッ!」

 連はラグマットの上に昴を組み敷くと、猛ったものを荒々しく下肢に擦りつけた。破りそうな勢いでシャツを腕から引き抜き、露わになった昴の素肌の上に覆い被さる。鎖骨から下へと何度も吸いつきながら、乳首を口に含んだ。

「ん、ぁっ」

 思わず甘い声が喉から迸った。連は顔を上げると、陶然となって、昴の顔を見下ろした。涼しげな眼差しは情欲で濡れている。きっと、昴も同じような顔をしているのだろう。

「……気持ちいいの?」

「ちが、ぅ」

 ぷっくりした突起を唇で挟みこまれ、舌でくすぐられる。腰がびくびくと撥ねてしまう。嬌声を上げぬよう、口を覆う手を、連は容赦なく引きはがした。

「聞かせて、声。聞きたい……」

 甘い懇願に、背筋がぞくっとした。連の壮絶な色気と、快楽のきざしに、腰に熱が溜まっていく。

「気持ちいいんだ?」

 昴の下肢に手を伸ばした連は、嬉しそうに目を細めた。確かに反応し始めている兆しを、掌であやす。

「んぁッ」

「俺が相手でも、ちゃんと感じてくれるんだ」

 昴が真っ赤になって顔を背けると、連は上体を伏せて、昴の眼元に唇で触れた。

「すげぇ、嬉しい……もっとよくしてあげる」

 押し退けようと腕を突きだすが、鋼のような身体はびくともしない。綺麗な顔をしている癖に、連の身体はしなやかな筋肉に覆われていた。
 欲情した瞳で見下ろす様は、美しい獣を思わせる。組み敷かれている昴は、狙われている獲物だ。意識すると、コクリ、喉が鳴った。端正な顔がさがっていき――


「う、ぁ」

 尻の合間を、舌がなぞりあげた。
 そんなところを舐められるとは思っておらず、昴は身体を捻って逃げようとした。すかさず腰をつかまれて引き戻される。

「あぅっ」

 うなじを甘噛みされて、昴は堪えきれずに嬌声をあげた。
 慄き、震える昴の背中に、連は何度も唇を落とす。背骨をついばむように吸われる度に、おかしいほど腰が撥ねた。
 双丘を揉みしだかれ、両の親指で蕾を押し開かれる。あまりの羞恥に、昴の瞳には涙が滲んだ。

「ま、待って!」

「昴」

「ちょ、頼むからッ!!」

 身をよじって懇願する昴を見て、連は動きを止めた。

「シャワーを浴びたい……逃げないから、頼むよ……」

「……判った。一緒に入る?」

 昴は無言で首を横に振った。
 男同士のセックスについて、一応調べてはある。予想はしていたが、やはり昴が受け入れる立場なのだろう。事前準備もせず、連に尻を触れられるのは嫌だった。

「頼むよ……」

 震える声で、絞り出すように懇願する昴を見て、連は渋々といった風に承諾した。

「……がっついて、ごめん。いいよ、ゆっくり心の準備をしてきて」

「ありがとう」

 ぎこちなく頭を下げると、昴は風呂場に逃げた。時間をかければ、その分緊張する。腹をくくった昴は、短時間で、可能な限り身体を綺麗に洗った。
 服を着用するか迷ったが、覚悟を決めて、下着だけ履いた姿で、リビングルームで寛ぐ連の前に出た。

「……連も入る?」

 ソファーに座っていた連は、舐めるように昴の全身に視線を走らせた。

「いい」

 短く答えると、連は昴の腕を強く引っ張った。連の部屋に連れ込まれ、ベッドの上に二人で倒れた。

「昴……」

 連は熱に浮かされたように、昴の肌に触れてきた。風呂上りで、肌はしっとり濡れている。

「ン……」

 顎の先から鎖骨まで、優しいキスが落ちる。心地良さに眼をつむると、足の間を膝で割られた。

「好きだよ、昴……」

 俺も、と答えると同時に唇をふさがれた。舌を吸われて、濡れた水音が二人の間から聞こえる。
 熱を帯びて萌し始めた中心を、連は膝の位置を上げて攻めてくる。昴の口から、あえかな声がもれた。

「あ、んッ、んぅ……ッ……く……」

 下着をはぎ取られ、さっきは拒んだ場所を舌で突かれる。中を舐められて、奥まで濡らされていく。
 昴の下肢がぐずぐずに溶けきった頃、連はゆっくり身体を起こした。力の入らない昴の身体を仰向けて、膝裏に腕を入れる。

「……挿れるよ」

 ついにこの時がきた。熱に浮かされていた思考は瞬間的に冷え、見つめ合ったまま、昴は思わず連の腕を掴んだ。

「大丈夫。力、抜いて」

「う、うん……」

 昴は顔を背けて、覚悟を決めた。
 あぁ……圧倒的な熱量が、隘路あいろを押し開くように入ってくる。

「んっ」

 衝撃に耐える昴の様子を見ながら、連は慎重に貫いていく。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 荒い呼吸を繰り返す昴の顔に、連は愛おしそうにキスの雨を降らせた。

「あンッ」

 優しく腰を揺すられて、昴は思わず嬌声を上げた。声の高さに驚いて、咄嗟に唇をかみしめると、連はくすりと微笑をこぼした。

「かわいい、昴……」

「あぅッ……んッ……連っ」

 身体を開かれていく。甘く淫らに尻を穿たれて、昴は翻弄された。波間をたゆたうような抽挿は長く続き、次第に理性は溶けていった。

「はふぅ、うッ」

 昴は自分でも気づかぬうちに腰を動かしていた。深く穿たれると痛みが走るが、酷く感じる場所もあり、そこを屹立が擦り上げる度に、嬌声が喉から迸った。目から鱗だ。尻でこんな快感を得られるとは知らなかった。
 痴態を眼で楽しみながら、連は腰をつかう。大きな掌は、昴の肌を飽くことなく滑り、尖った乳首を唇で吸い上げた。

「や、あっ」

 ちゅぱっ、と濡れた音が立ち、昴は羞恥に顔を染めた。一瞬、連と眼が合い、すぐに顔を倒した。
 連は身体を横向けると、昴の顔を覗き込みながら腰を打ちつけた。

「あんっ」

 全身を愛されながら、身体の深いところを穿たれる。揺さぶられる度に、昴は甘い声を上げた。

「好きだよ……」

 耳朶に吹くこむように、連は囁いた。その瞬間、昴は身体が烈しく燃え上がったように感じた。

「お、俺も、俺も好き」

 濡れた視線が絡んだ。連の眼差しの奥深くに、烈しい光が灯る。情欲よりも、もっと強い何か、心臓を引き絞られるような、強烈な想いを垣間見た気がした。

「んぁ、あッ、待っ」

「昴ッ」

 小刻みに震える昴の足を持ち上げ、連は水音が立つほど腰を打ちつけた。

「ちょぉッ……待っ」

 腹につくほど反り返った屹立が、揺さぶれる度に、飛沫を散らしている。限界が近い。精管を刺激されて、昴は叫んだ。

「や……で、でるッ!」

「イッて」

「あ、あ、あ――ッ!」

 欲望を駆けあがり、昴は悲鳴を上げた。何も考えられないほど、気持ちがいい。真っ白になった思考の向こうで、身体の奥が熱く濡れるのを感じた。