BLIS - Battle Line In Stars -
episode.3:TEAM - 2 -
すらりとした長身を仰いで、昴も吉田も固まった。
連は昴の傍にやってくると、包み込むように肩に手を置いた。昴は肩から力を抜いたが、吉田は身体を強張らせた。
「よぉ、連……」
冬の湖水のような眼差しを向けられて、吉田は頬を引き攣らせている。
「何してるの?」
「え、怒ってる? 何もしてないぞ??」
困ったような顔の吉田と眼が合い、昴は慌てて頷いた。
「一緒にランク戦してたんだよ」
「そうそう」
吉田は昴の言葉に相槌を打った。連は疑わしそうに吉田と昴の顔を見比べている。
「……吉田さんがACEで、俺はサポートやったんだ。久しぶりすぎて、相当ぎこちなかったよ」
昴は笑いを取ろうとしたが、連の無表情は変わらなかった。吉田は居心地悪そうにしている。
「じゃぁ、俺はそろそろいくわ。石田君、リーグ頑張ってね」
「ハイッ! ありがとうございます!」
逃げるように席を立つ吉田を、昴は会釈して見送った。顔を上げて視線を連に戻すと、咎めるような眼差しを向けられた。
「何かいわれた?」
「や、別に、何もいわれてないよ」
「じゃ、何で沈んでるの?」
「いや~……プロになっても、いろいろあるんだな~って、ちょっとナーバスになっただけ」
「いわれたんじゃないか」
昴は眼を泳がせた。
「違うよ。俺がヘタレなだけ」
「昴は努力している。着実に上達しているよ」
「ありがとう」
面映ゆい心地で視線を彷徨わせる昴を、連は眼を細めて見つめている。今さっきの凍りついた表情が嘘みたいだ。
「ところで、学校は?」
やはり訊かれるか、そう思いながら昴は唇を開いた。
「……午前中だけいった。午後からここで練習してたんだ」
連は思案気な顔をした。
「俺にいえた台詞じゃないけど、あんまりサボるなよ」
「うん……本当は、BLISに集中したいんだけど~……うーん、でも桐生さんにも許可もらっているし、ちゃんと学校もいくよ」
がしがしと頭を掻く昴を見て、連は柔らかくほほえんだ。乱れた髪を、優しい手つきで整える。甘い眼差しに、昴の頬は熱くなった。
「一戦しようよ」
照れを誤魔化すようにいうと、いいよ、と連は気安い返事をして隣の席に座った。
結局、一戦どころか、立て続けに五戦した。連勝が気持ち良くて、やめられなかったのだ。
e-Sports GGGを出た後、一風堂でラーメンを食べてから家に戻った。風呂を浴びて一息つくと、Ranked SoloQueueを一戦だけして、その後は眠くなるまで他のプレイヤーの配信をチェックした。
部屋の電気を落としてベッドに入ると、椎名奏汰からLINEで話しかけられた。
『Galaxy Boysのトライアウトに受かりました!』
おぉっ、と昴は思わず声に出した。逸る気持ちで文字を打つ。
『おめでとうございます! ポジションは?』
『ありがとう。ACEだよ』
『ですよね! すごい!』
『ありがとう。昴君とリーグで戦えることを楽しみにしています!』
胸に、熱いものが込み上げた。ごく短期間に、いろいろなことがあったけれど、二人ともリーグに出場できるのだ。
『本当におめでとうございます。すごく嬉しいです。俺も椎名さんと戦えることを、楽しみにしています』
まだまだやることはたくさんあるが、一つの目標に到達できたのだと、昴は感慨を抱いた。