超B(L)級 ゾンBL - 君が美味しそう…これって○○? -

2章:エナジー・ドリンク - 9 -

 十月三十一日。六十三日目。
 昨日の午前中に要塞をでていったきり、レオが戻ってこない。
 安否が判らず心配していた広海だが、昼過ぎにこれから戻ると連絡が入り、安堵に胸を撫でおろした。
 緊張が緩んだせいか、少し横になるつもりが、思っていたよりも長く午睡を貪ってしまった。
 目を醒ました時、外はもう薄暗かった。
 かと思えば、重たい曇天が真昼のように閃いた。鈎裂き状に稲妻がはしった一刹那いちせつな、世紀末のような雷鳴が轟いた。
「ぅわ……ッ」
 腹に響く重低音が、六十三階の窓を振動させる。
 広海は、憑かれたように窓辺に寄った。バルコニーにでた途端に突風に吹かれ、カーテンが舞いあがった。
 よせばいいのに、半ば怖いもの見たさで、手すりに掴まって渋谷の街を覗きこんだ。
 おお……これほどハロウィンに相応しい光景はないだろう。
 禍々しい雷雲が唸りをあげるなか、半壊した街を、コスプレでもなんでもない、紛うなき本物のゾンビが彷徨っているのだから。
 まるで世界の最後の審判だ。
 無人の荒廃した街を、荒れ狂う嵐が襲う様は、この世の滅亡を見ているようだった。
 稲妻の交響曲に魅入られていると、玄関から物音が聴こえた。
 ぱっと振り向いた広海は、急いで部屋に入り、レオを見るなり笑顔になった。
「お帰りなさい! 良かったぁ、無事で……心配しましたよ」
「ただいま。悪ィ、思ったより時間喰っちまった」
 レオはくたびれたようにいった。背負っていたバックパックをおろして、ガンベルトも外し、肩を揉んでいる。
「どこまでいってきたんですか?」
「九段下の旧避難所だよ。そしたら、でっけーコロニーがあって、放置しとくのもあれだし、ぶっ壊してきた。一晩かかったわ」
「マジッスか。一人で大丈夫でした?」
「まぁな。焼夷弾しょういだん持っていって正解だった。苦労した割に、何も残ってなかったな。あんま期待してなかったけど……くたびれたわ」
 ぐったりとソファーに沈みこんだレオは、広海の手を引っ張り、脚の間に座らせた。素早く腕を回して、ぎゅっと後ろから抱きしめる。
「っ、レオ」
 すぐに立ちあがろうとするが、腹に腕を回された。腕のなかに閉じこめられて、髪を梳かれ、頬を撫でられる。欲しい・・・とおねだりしているのだ。
「ロミ……」
 耳元で、掠れた声に囁かれると、広海は顔が熱くなるのを感じた。煙草と硝煙の匂いに混じって、彼自身が纏う蠱惑的な香りが漂う。
 さりげなく視線をあわせると、欲望に気づかないふりをしてほほえんだ。
「珈琲でも淹れましょうか?」
「いい。それより……飲ませて・・・・
 怖いくらい真剣な口調だった。
 危険なほど明るい金緑のひとみに、飢餓の色が浮かんでいる気がする。
 これは押し倒されるパターンでは……身構える広海を抱き寄せ、レオは素早く唇を奪った。
「んっ」
 抗う間もなく、下唇をまれて、引っ張られる。強引に唇を開かされると、口づけはたちまち深くなった。
 思わず広海はレオにしがみついた。肩を掴んで、引き離すべきか迷っているうちに、舌を搦め捕られてしまった。いつもより余裕がなくて強引だ。少しおののいていると、骨ばった手がシャツのなかに潜りこみ、素肌に触れた。
「揉まないでっ」
 またしても腹肉を揉みしだかれ、広海はきっっとなった。何遍いっても、レオは人の腹を揉むことをやめようとしないのだ。
「ロミ、かわいい……」
 かぁっと燃えるように顔が熱くなる、広海は視線を泳がせた。瞼や頬、こめかみにちゅっちゅっとキスの雨が降る。恋人のじゃれあいみたいで恥ずかしくて、
「もぉ、おしまい!」
 逃げようとしたら、ジーパンに手がかかり、器用に釦をはずされた。
「レオっ」
 腕を突きだして彼を遠ざけようとするが、レオは顔をさげて、広海の首すじを啄んだ。鎖骨までおりていき、くぼみに唇を押し当てながら、尻をぎゅっと掴む。
「待って……そこはだめ」
「ん」
 怯えたように広海がいうと、レオは素直に腰から手を離した。かと思えば、再びシャツのなかへ手をもぐらせ、妖しい手つきで胸をまさぐり始めた。
「そこもだめ……っ」
「だめばっかだな。どこならいーんだよ?」
 首筋に唇を押し当てたまま、レオはくすっと笑った。
「うぅ……キスだけなら」
「キスね」
 レオは微笑すると、シャツをたくしあげた。無意識に胸をそらす広海の腰をかきいだき、顔を伏せる。熱い吐息が肌に触れた。
「違う! キスだけ」
「キスだよ」
 低く囁いて、震える突起を唇で挟んだ。
「ぁっ」
 こみあげる感覚に背筋がぞくりとした。一体この躰はどうなっているのだろう?
「や……っ……ん、ぁ……っ」
 胸は熱く膨らみ、尖った乳首からじんわりと蜜が滲み始めた。骨ばった指でくにくにと刺激されると、さらに溢れでるのが判った。
「あぁっ」
 白い蜜が飛び散り、レオの唇にかかると、彼は恍惚の吐息を漏らした。熱に翳った瞳で広海を見つめたまま、唇の端に付着したそれを、艶めかしく舌で舐めとる。
 ぞくっとした震えが、広海の全身を貫いた。
「ぁ……吸わないで」
「なんで? ……飲ませろよ」
 レオは欲望の滲んだ目で、ぷっくりしたふたつの乳首を見た。視線がそこに落ちただけで、体温が跳ねあがる。やめさせようと肩を掴んだが、強引に口に含まれた。
「んぁっ」
 藻掻こうとする腕をきつく掴まれ、好き勝手に舐めしゃぶられ、甘噛みされる。
「あっま……ロミすげーな……っ」
 陶酔したようにレオは烈しく舌を搦めて、広海は息も絶え絶えに喘いだ。
 左をたっぷり吸われ、ようやく解放されたと思えば今度は右を吸われ、射精感にも似た悦楽がはしり抜けて、溢れでる正体不明の白蜜を吸われてしまう。
「んぁっ……も、吸わないでぇ……っ」
 朱く膨らんだ突起を舌と唇でめちゃくちゃにされて、恥ずかしいのに気持ちよくて、腰が揺れるのを止められない。
 胸も股間も熱く疼いて、淫らな奔騰ほんとうに翻弄される。無意識に大腿を擦りあわせていると、服の上から後孔を親指でぐっと押された。
「んっ??」
 広海は、ふとこみあげた排泄の感覚に戦慄した。
 粗相を恐れて渾身の力でレオを突き放すと、レオは驚いたように目を瞠り、すぐにまた広海の腕を掴んでソファーに押し倒した。
「離してっ」
「暴れんな、落ちる」
「トイレ! やばい、漏れそうっ」
 広海は切羽詰まった声でいった。が、レオは奇妙な顔つきになった。
「トイレ? ……ロミさ、最後にトイレでしたのいつか、覚えてる?」
「えっ?」
 広海は動きを止めた。
 ……そういわれると、ここしばらく、排泄した記憶がない。便秘かと思っているうちに忘れていたが、長すぎやしないだろうか?
「腹痛ぇのかよ?」
「いや……判んないけど、なんかむずむずして……とにかくトイレ!」
 広海は腕を使って再び暴れ始めた。レオは難なく広海を押さえつけると、ひっくり返して下着ごとズボンを脱がした。
「ふぎゃっ!?」
「見せてみ」
「はぁッ!? やめろッ!」
 本気で怒鳴ったが、レオは動じない。あらぬところを、じっくり見られてしまう。じゅくじゅくとした熱が尻に集まり、広海は真っ赤になった。確かに、排泄衝動とは違う気もするが、判らない。脳裏を疑問符が飛び交い、まともに考えられない。
「うぅ~っ……ンなとこ、見るなよぉ……っ」
 レオは孔の縁を指でなぞった。親指をぐっと押しこみ、なかを探られた瞬間、なにかが溢れる感触がした。
「ひっ」
 広海は恐慌に陥った。絶望と共に股間を見ると、想像とは違う、無色透明な不定形状の物体が、大腿を滴り落ちていた。
「何、これ……っ」
 質問には答えず、レオは指をさらにもぐらせ、ぐるりと撹拌かくはんするように動かした。
「やばっ! でちゃうっ」
「だせよ」
「うぅぅッ、だめだからぁっ、だしちゃいけないものだからぁっ」
 死にたくなるほどの羞恥と絶望に駆られて、えぐえぐと泣く広海の尻を、レオは容赦なく両手で割り開いた。
「つーか、舐めるし」
「はあぁッ!? ちょっと何いっているか……待っ、うぎゃぁ――ッ!!」
 れろ……っと入り口を舐められ、広海は絶叫した。尻を振って逃げようと試みるが、がっしり掴まれて逃げられない。レオは、美しい顔を尻に沈めて、あまつさえ舌を押しこんできた。
「あぁッ!?」
 救いを求めて伸ばした手が、虚しく宙を掻く。レオは逃げようとする広海を捕まえて、餓えた獣のようにむしゃぶりついた。
「嘘ッ、吸わないでっ、汚いっ」
 広海は必死に叫んだ。
 そんなことはお構いなしに、レオは音を立てて、正体不明の液体を啜りあげる。
「ン……汚くねーよ、エナジー・ドリンクだろ、これ。元気でてきたし」
 そんなわけあるか――罵倒が心に閃くが、躰の奥から堰を切ったように蜜が溢れでて、舌打ちのような舌鼓のような水音を撥ねさせながら啜られると、思考を粉々にされてしまう。
「うぁっ、やめろ! ……ひぅ……吸わないでくれぇっ」
 初めての快感に怯えて、広海は震える肩を縮こませた。それでもレオはやめようとしない。尖らせた舌を剣のように突き刺し、頬をすぼめて吸飲しまくる。
「やだぁッ、んぁっ……ぁ……くふぅ、ん……っ」
 こんなこと耐えられないと思いながら、広海は、淫らな愛撫をせがむように、妖しく身をくねらせていた。
 さんざんしゃぶられたあと、背中に、柔らかくキスされた。ようやく終わり……ぐったり突っ伏していると、腕を引っ張られて、抱き起こされた。
「何っ?」
 吃驚びっくりして汗ばんだ首にしがみつくと、レオは熱い目で広海の顔を覗きこんだ。
「ベッドいこ……」
 媚薬のような声で囁かれて、広海は首をすくめた。淫らな予感に貫かれて、躰の芯がじゅんと濡れる。
 このあとの展開が読めるのに、なぜか腕のなかでじっとしていた。恐怖と期待が綯い交ぜになったような心地でいたが、ベッドの上におろされた途端に、恐怖に傾いた。
 服を脱ぎ捨てたレオが、引き締まった躰で伸し掛かってくる。
「ぁ……」
 欲情した金緑の眸に射抜かれて、今さら尻で後ずさりしてしまう。逃さないとばかりに両脚を掴まれ、問答無用に割り拡げられた。
「レオっ」
 男として、これほど屈辱的な格好があるだろうか?
 ショックを受けながら、後孔に触れられると、ひくんと疼いた。ぬかるんだ蕾は、たやすく指を飲みこんで奥へと誘う。
「とろとろ……美味そ……」
 レオは独り言のように囁くと、指を抜いた。屈みこんで、股間に顔を埋めようとする。
「だめだってば……っ」
 また吸われてしまう。レオの頭を両手で押しのけようとするが、後孔にぴったりと唇を押し当てられてしまった。
「やだ! ……えっち! レオのエッチィ!」
「は? ロミのお尻がエッチなんだろ、どんどん溢れてくる……舌が溺れちゃいそうなんだけど」
 熱に浮かされたような夢中さで、レオは、後孔を舌で烈しく穿ち始めた。
「やめて、お願い……っ」
 泣いて懇願しても、レオはやめようとしない。飽かず啜っている。
 広海も拒絶を口にしながら、次第に淫らな愛撫の虜になって、前後不覚に蕩かされて、艶かしく喘いで、懇願して……忘我の境地を彷徨った。
「ふぁ……ぁ……レオ」
 窓の向こうで、稲妻がきらめいている。
 尻からも性器からも、とろりと蜜が溢れでて、雷光に照らされ淫靡な光を放つ。
 滅びゆく世界から隔離されて、甘い香りが漂う部屋のなか、二人とも陶酔したようになって、貪り、貪られていた。
 舌が抜けていく瞬間、ちゅぼっと水音が撥ねて、広海の全身は羞恥に染まった。
 顔も胸も尻も赤くなって、股間はかつてないほどいきっている。
 レオは身を起こすと、広海の顔を覗きこんできた。
「……悪ィ、飛んでたわ。ロミ、ヘーキ?」
 尻から溢れでたものが大腿に垂れてきて、その熱く濡れた感触に、広海はくしゃりと顔を歪めた。
「ふぅ、っく……俺っ、何? ……なんなのぉ……?」
 おこりのように慄える背を、レオは宥めるように撫でた……が、深く息を吐きだすと、広海の両脚を掴んで肩にかつぎあげた。
 尻が浮きあがり、広海は蒼白になった。
「待って、何する気」
れる」
「無理ッ!」
 脚をばたつかせると、レオは苛立ったように、広海の両脚をしっかり押さえこんだ。熱く猛った屹立を、尻のあわいに擦りつけてくる。
「こっちが無理だっつーの……諦めろ」
「無理ぃッ! れんのだけは無理っ!」
「こんだけ濡れてりゃ入るだろ」
 レオは広海の腰をさらに引き寄せ、ぐっと腰を押しだしてくる。
「レオ! こんなことしたらもう、友達じゃいられなくなっちゃうよ!」
 レオはフッと微笑すると、
「もうとっくに、おホモ達じゃん。気にすんな」
「気にするわぁぁ――ッ」
 広海にしては威勢よく叫んだが、熱塊を後孔に押し当てられると、ひゅっと息を飲んだ。
「お願い、やめて」
「力抜け」
「無理ぃ……っ」
 レオは躰を倒すと、広海に覆いかぶさり、唇を塞いだ。舌を挿しいれ、優しく搦ませる。
「ん、ふぅっ……あぁ……っ」
 唇を甘く貪りながら、秘めた隘路あいろに、慎重にゆっくり、灼熱の肉塊をねじこんでいく。
 ほどけた唇から銀糸が垂れて、潤んだ目で広海がレオを見つめると、ぱちゅんっと腰のぶつかる音がした。
「んぁッ」
「おら、挿入はいったぞ」
 レオは満足そうに笑った。
 絶対に無理だと思ったが、蕩けきった尻は、剛直を奥までみしめていた。
「ひ……っ」
 逃げようとする躰を、レオは両手で掴んで容赦なくベッドの中央に戻す。広海の頬をひと無でしてから、緩やかな腰遣いで揺さぶり始めた。
「ひぁ……っ……んぁッ」
 充溢をんだ媚肉がうねり、とろりと蜜が溢れでる。
 腰のぶつかる音は烈しさを増して、たちまち結合部は波飛沫のように白く泡立ち、ぱっちゅん、ぱっちゅん、信じられないほど淫靡な粘着音を響かせた。
「も、無理ぃ……っ」
 すすり泣く広海を、美しい捕喰者はじっっと見おろしている。
 金緑にかがやく虹彩の強さに、思わず顔をそむけると、頬を掴まれた。
「こっち見ろよ」
 恐る恐る目をあわせた途端に、容赦のない律動が始まった。
「んぁッ!!」
 狂おしいほど突きあげられる。
 躰の深いところを灼熱の焔に撹拌かくはんされ、舐めあげ、舐めおろし、獣のように犯される快楽けらくに翻弄された。
「あぅッ、ぁ、んぁっ! 赦して……んんっ」
 窮地を訴える唇を、強引に塞がれた。
 悲鳴も、吐息も、喘ぎも唇に飲みこまれて、突きあげられながら、躰は燃えるように熱くなって、蜂蜜のように蕩けた。
「っ、ひぁッ」
 敏感なしこりを淫らに擦りあげられ、広海は大きく仰け反った。開いた胸にレオは顔を伏せて、尖った先端をぢゅうっと吸いあげる。
「んぁッ! あ、あぁ~……っ」
 全ての思考が消去されたように、視界が真っ白に燃えあがった。
 おびただしい量の精液が噴きあがり、白くて丸い脂肪質な腹に飛び散る。達した衝撃できつくみ締めてしまい、レオが呻いた。
「っ、すっげ……締めつけんな……っ」
 熱塊がぶるりと震えて、最奥に熱い飛沫をぶちまかれる。媚肉が孕んで、広海の全身は妖しく波打った。
 はぁはぁと息を喘がせ、全身に汗と蜜を滴らせ、悦楽の余韻に浸る。
 そのまましばらく無力でいたが、尻に埋められた楔が、硬度を保ったままであることに意識が向いた。許しを請うように見つめると、
「もぉ抜いて……んぁッ!」
 とろとろと蜜をこぼす性器を、そっと握られた。
「……もっかい、シよ?」
 美しい捕喰者が囁く。そんな。広海は力なく首を振った。
「ぁ……無理だよ、も……ぅん……っ」
 じゅぷっぬぷっ……水音をたたせながら、上に下に扱かれ、揺さぶられ、熱の冷めやらぬ金緑の眸に痴態を見られながら、殆ど透明のたぎる精を涙のように散らした。