メル・アン・エディール - 無限海の海賊 -

13章:十五歳の恋人 - 6 -

 濡れた指が、挿入はいってくる。
 入り口を押し開くように、皺を丁寧に伸ばされ、くすぐられる。

「やだっ」

「ティカ」

 撫でるように触れていた指先が、不意に明確な意図を持って蕾を押し込んだ。

「ヴィー!」

 混乱と共に叫ぶと、宥めるように内壁を撫で上げられた。吐精したばかりなのに、うなじを強く吸われ、中心がどくりと脈打つ。まされた指先を、無意識に締めつけてしまう。

「そそられる眺めだな……」

 思わずといった様子で、ヴィヴィアンは囁いた。ティカの震えに気付きながらも、指を抜けずにいる。

「やだ……い、挿れないで」

「判ってる。もう少しだけ……」

 そういいながら、指は情事を連想させるように前後に蠢いた。

「……ッ、抜いてっ」

 必死に懇願すると、ヴィヴィアンはふと真剣な表情でティカを見下ろした。抜けるどころか、指は更に奥へ潜りこむ。

「あ、ぁッ!?」

 蕾を解すように蠢き、内壁をくすぐる。前立腺を刺激され、ティカの身体は弓なりにしなった。

「や、ぁ……っ!」

 こらえきれぬ嬌声が、喉の奥からほとばしった。逃げようとする身体を、上から押さえつけられる。

「あ、あっ、んぅっ」

「指だけど、ちゃんと挿入はいってるよ……気持ちいい?」

 後孔を指に、甘く淫らに犯されながら、耳朶に囁かれた。ティカは羞恥のあまり、瞳を瞑る。
 横から覆いかぶさる身体を、跳ね除けようとすると、余計に抱きすくめられた。強い力で肩を掴まれ、ベッドの中央に身体を引き戻される。

「やだっ」

「ティカ」

 暴れる身体をものともせず、ヴィヴィアンは後ろを指で弄りながら、つんと上向いた乳首を口に含んだ。

「ん――ッ! 離してっ」

「これも、なかなか……挿れてるみたいだ」

 悲鳴に近い拒絶を叫んでも、彼は動きを止めない。どこか楽しそうに、熱のこもった口調で囁く。
 ぐちゅんと濡れた音を発たせて、後孔を指で抜き差ししながら、変わらぬ執着で乳首を愛する。
 強引に火を灯された身体が、心とは裏腹にどこまでも蕩けていく。
 尻から聞こえる淫靡な水音に、訳も判らず涙が溢れた。嗚咽を噛みしめると、ようやく指が抜かれた。
 これでお終いかと思いきや、身体を仰向けにされて、熱の灯った青い瞳に射抜かれた。欲情しきった視線に、身体に震えが走る。

「んぅっ」

 唇を塞がれた途端に、息もつけぬ深いキスが始まった。唇を食まれ、頬の内側を慰撫するように舐めあげられる。

「あっ……ぅ、ヴィ」

 いつまで続くのか……冷めやらぬ彼の熱が、恐い。もう離して欲しい。
 けれど、深いキスから解放されても、ヴィヴィアンの唇は小刻みにティカの肌を啄み、顎の先から鎖骨へと下りていく。

「やだ」

 何度も弄られ、愛された乳首に再び吐息がかかり、ティカは身体を捻ろうとした。押えつけられたまま、熱い舌に舐めあげられる。

「んっ……あ、あっ」

 甘噛みされて、音を立ててしゃぶられた。つんとしこったそこを、指の腹で撫でられ、抓まれてしまう。淫らで丁寧な愛撫に、シーツを掻く爪先が、きゅっと丸まる。
 足を押し広げられ、ティカは弱り切った身体で抵抗した。膝を閉じようとすれば、強引に割られた。

「やだぁっ!」

「こんなに反応しているのに? ほら……舐めてあげる」

「や、め……ッ」

 悲鳴を上げると同時に、緩く勃ちあがった中心を口に含まれた。熱い口内の中で、丸い亀頭をめちゃくちゃにされる。
 淫らで、強すぎる吸引に翻弄されて、ティカの中心につぷりと滴が盛り上がる。ヴィヴィアンは尖らせた舌で、細い蛇口を執拗に突いた。やがて、喉の奥まで深く吸い上げる。

「あ、んっ、も、やだ……っ!」

 痙攣する身体を必死に堪えながら、ティカはすすり泣いた。
 咥えられた性器が熱い。遂に根元まで挿入された指は、淫らな水音を立てて、抽挿を繰り返す。
 嗚咽を噛み殺すティカに気付いて、ヴィヴィアンは宥めるように額に口づけた。

「ごめん、最後にするから」

「……も、出ちゃうっ」

「いいよ」

「ヴィーッ!」

 艶やかな真珠の髪に指を潜らせ、必死に押しやろうとしても、ヴィヴィアンは変わらずに吸引を続けた。

「だ、駄目っ」

「出して」

 淫らに中を指で抉られながら、舌で性器をあやされる。身体はどこまでも蕩けてゆき、やがて、昇りつめることしか考えられなくなった。

「ふ……っ、あ、あ――っ」

 殆ど何も出なかったが、薄い吐精を熱い口内の中で遂げた。嚥下する音を、耳の片隅に聞きながら、ティカは羞恥を堪えて歯を食いしばった。

「ティカ?」

「やだって!」

「うん」

「言ったのに……っ」

「ごめん、苛めたいわけじゃないんだけど……ついつい」

 真っ赤になってぐずるティカを見下ろし、ヴィヴィアンは微苦笑を浮かべた。

「こんな、子供みたいに泣きたくな……僕、おかしい?」

「いいや? 少しもおかしくない。かわいいし、煽られる……もう一度する?」

 少しも悪びれのないヴィヴィアンを見て、ティカは不服そうに背を向けた。後ろから、くつくつと忍び笑いが聞こえる。

「ごめんね。ティカの傍にいると、俺は、海狸香かいりこうのように惑わされてしまうんだ……」

 意味は判らないが、判ったところで了承できない気がする。沈黙で応えると、ヴィヴィアンは宥めるように背中にキスを落とした。

「もうしないから……身体を綺麗にしよう」

 不承不承に身体を起こすと、ヴィヴィアンと二人でシャワーを浴びた。汗を流してベッドに戻ると、乱れた寝具を整える。
 寝支度が整い、無言でティカが横になると、すかさず伸ばされた腕に抱き寄せられた。
 腹を立てていても、優しく寝つかされると、心地よさが勝ってしまう。

「お休み、ティカ」

「お休みなさい……」

 額にお休みのキスが落ちる頃には、不機嫌を忘れて、あどけない顔で寝に入るティカであった。