アッサラーム夜想曲

聖域の贄 - 20 -

 過ぎていく時間を、光希は無為に過ごしていた。
 邸に閉じこもっているばかりで、することがない。アーナトラのことが気がかりで、何も手につかないのだ。
 苦い既視感。凝縮された忍従の日々が、引き波のように蘇ってくる。ユニヴァースの公開懲罰は本当に辛かった。
 時が経ち、心底忘れてしまいたいという忌まわしさは薄れているが、辛かった、という思いの残滓ざんしは今でも心に沈殿している。恐らく、生涯消えることはないだろう。
 同じ過ちは繰り返したくないのに、この国では裁判が厳しいうえに、光希が関わることになると、厳罰がくだされる可能性がある。悪い方へ考えだすと、気が滅入って、暗い自己催眠に陥ってしまう。
 だが、光希が悩んだところで、事態が好転するわけでもない。
 私室兼工房で燭台制作でもしようかと考えたが、机のまえに座っても、結局手を動かす気になれなかった。
 諦めて私室に戻ったものの、読みさしの本に手をのばす気にもなれない。
 無聊ぶりょうであり、ただ待っているだけ。
 微風に揺れる沙幕をぼんやり見ていると、ふと花籠に入っていた手紙のことが脳裏を過ぎった。

“お慕いしています”

 名前は書いていなかった。応えるつもりもないし、恐らくもう言葉をかわす機会もないだろう。
 けれども、こんなふうに思いだして、煩悶はんもんしている。
 ジュリアスに隠し事をしているような後ろめたさを覚える一方で、ここのところ下降気味だった自尊心を、多少なりとも慰められたことは事実だった。
 最近は自信喪失になりがちだったこともあり、こんな自分でも想いを寄せてくれる人がいるのだと感謝の念を覚えるのかもしれない……
 思考はもつれたまま時間が流れ、やがて陽が暮れた。
 深夜、二日ぶりにジュリアスがクロッカス邸に帰ってくると、光希は待ち構えていたように彼に質問を浴びせかけた。
「お帰りなさい。裁判はどう? アーナトラさんの嫌疑は晴れそう?」
 ジュリスは深々と溜息をついた。
 彼がひどく疲れた顔をしていることに、光希はようやく気がついた。謝罪しようとしたが、次の言葉に驚かされた。
「裁判は延期になりました」
「えっ、どうして?」
「再開する前に、工房と裁判所を祓い清めるためです。のみに関しては、精密鑑識の結果待ちです」
 奇妙な表情を浮かべる光希に、ジュリアスは顛末をかいつまんで説明した。
 裁判中に邪気を感じたジュリアスは、一時閉会して、サリヴァンに裁判所の清めを依頼した。
 要求に応じて、サリヴァンは神殿祈祷師シャトーマニと共に清めの儀式を行おうとしたが、祭壇に亀裂が走るのを見、強力な祓魔儀式に切り替えた。門扉に木屑による結界を敷き、現在は立ち入り禁止になっている。
 工房の方とあわせると、全工程終了に十日ほどかかる見込みだという。
「……それまでずっと、アーナトラさんは勾留されなければいけないの?」
 光希は深刻な表情で訊ねた。
「そうなります。外出はできませんが、丁重に遇されていますよ」
「工房も営業停止なんだよね」
「はい」
「工房の人たちは、生活できているのかな?」
「生活補償が適用されます。今は風評被害にさらされていますが、裁判が終われば改善されるでしょう」
「……時間がかかるね」
「今だけです」
「ねぇ、やっぱりアーナトラさんに会わせて。公式には無理でも、せめて僕個人として謝罪させて」
 ジュリアスはたしなめるように首を振った。
「彼の容疑が晴れるまでは、あわせることはできません」
「容疑なんて存在しないよ。誤解があるはずなんだ。僕はそれを証明できるかもしれない」
「どのように?」
 怯みつつ、光希は虚勢をはる顔つきを見せた。
「工房に連れていって、あの時嫌な感じがしたんだ。もう一度いけば何か視えるかもしれない」
「心配しなくても、我々が調べていますよ」
「でも」
蓋然性がいぜんせいの仮説より、あの場で光希が倒れたという事実を考えてみてください。まだ祓い清められていない工房に、貴方を連れていけるわけがないでしょう。邪気の正体も判らないのに、安易に外へでるなど――」
 ジュリアスの苦言を、光希は頭を強く振って止めてしまう。
「なら一緒にいこうよ! 正体不明の危険に向きあっているのは、ジュリも同じじゃないか!」
 光希は手を伸ばして、ジュリアスの二の腕を掴んだ。顎を反らせるようにしてひたと見つめる。
 不安に濡れた黒曜石のような瞳を、ジュリアスは冷静に見つめ返した。
「私を信用できませんか」
 光希はむっとして青い瞳を見つめ返した。強固な意思と意思とが衝突する。
「そんなこといってないよ。ふたりなら、視えるものがあるかもしれないといっているんだ」
 声が低く、尖ってくるが抑えられない。
「すみませんが、光希を連れていくことはできません。何が起きても私なら対処可能ですが、光希がいたら、貴方を守らなくてはならなくなる」
 淡々と答えるジュリアスを、光希は苛立たしげに睨みつけた。
 いい返せないことが悔しい。競竜杯の時も、ジュリアスひとりなら、光希をかばって怪我を負うことはなかった。戦闘において光希は役に立てない。それは事実だ。けれども今度は、多少なりとも可能性があるのに……
 ジュリアスは落ち着いた様子でいたが、空気が険悪になるのを感じて、光希の心を汲み取ろうとするように眸を覗きこんだ。
「すみません、いいかたがよくありませんでした。私はただ、貴方を危険な目にあわせたくないのです」
「……判ってる」
 光希はざわめきそうになる心を必死に抑えつけた。彼は本当に理性的だ。光希がどんなに頑なな態度をとっても、思い遣りと気高さを損なうことはないのだから。
「もう少し辛抱してください。必ずアーナトラを無罪放免にしてみせます」
「うん……困らせてごめん……」
 光希は頷いた。花が萎れるようにその頸を垂れ、でも、と続ける。
「僕が原因で、アーナトラさんに迷惑をかけていると思うと辛くて……それは判って」
 弱々しくいった。
 打ちひしがれている姿を見て、絶対に譲らないという態度でいたジュリアスも、視線を幾分和らげた。
「もう少し時間をください。私もアーナトラに害意があったとは思っていませんよ」
 光希は黙ったまま、頸をうなずかせる。
 ふと沈黙が流れると、ジュリアスは手を伸ばしてきた。肩に置かれた手が引き寄せようとするのを、光希は四肢に力をこめて拒んだ。
「……もう寝ようか」
 背を向けて寝室へいこうとすると、ジュリアスは後ろから光希を抱きしめた。
「抱かせて」
 耳元で囁かれて、背筋がぞくっとする。頬に吐息が触れるのを感じながら、光希は顔を背けた。
「ごめん、寝不足で……寝てもいいかな?」
 先日も同じ理由で拒んだことを、光希はいった後に思いだした。第一、八面六臂はちめんろっぴの活躍をしているジュリアスと違って、懶惰らんだに過ごしている光希が寝不足など口にして良いものではない。
 ジュリアスも奇妙に感じたようで、じっと探るような目で見てきた。
「……何か気になることでも?」
「違うよ。肌があまり綺麗じゃないから、見られたくなくて……」
 上目遣いにいうと、ジュリアスは光希のつむじにくちづけた。
「光希はいつでも綺麗ですよ。発疹はそれほど目立ちませんよ」
 優しい声で囁く。
「でも……」
「いいでしょう? 先日も我慢しましたよ」
「……」
「今夜は抱かせて」
 穏やかだが反駁はんばくを赦さぬ響きがあった。
「……そんな気分じゃない」
 思ったよりも低い声がでてしまい、しまったと光希は焦る。おずおずと顔色をうかがうと、ジュリアスの表情から柔らかさが消えていた。
「……では、いつそんな気分になるのですか?」
 ふたりの間に不安が張り詰める。
「発疹に、気分ですか。次はどんな理由で、私を避けるのでしょうね」
「……そんないいかた、しなくても」
 光希は唇を尖らせた。
「光希がほしい。すぐそこに寝室があって、ふたりきりなのに、触れられないなんて耐えられません」
「う……」
 なら寝室を分けようか?
 憎まれ口が脳裡に浮かぶが、火に油を注ぐだけだと理性が押し止める。
「理由を教えてください。私を拒む本当の理由は何なのですか?」
「指摘の通り、発疹に気分だよ。僕はそういうのに左右されやすいんだ。責めないで」
「責めているのではありません。正当な要求です。少しは私を見てほしい――貴方はいつだって誰かのために心を痛めている。貴方を案じる私の気持には気づかずに」
 ジュリアスは押し殺したような声でいった。
 神経にさわった光希は、上目遣いに睨みつけた。迫力を増した青い瞳が見つめ返してくる。
「ジュリだって――」
 いい返そうとして、唇を噛む。気圧されまいとするが、熱を帯びた視線が唇に注がれると心が乱れた。
「……嫌だ、喧嘩したくない」
 慰めるように腕をさすられ、光希はおずおずと顔をあげた。
「私もです。貴方とはいつも笑っていたい」
 光希は物憂げにほほえむ。
「そうだね……ごめん」
「いいんです、私もいいすぎました」
 形の良い指で頬を撫でられると、肩から力が抜け落ちた。
「無理にはしません。触れるだけでいい、本当です。疲れさせないから……愛させて。触れたい……」
 光希が黙りこむと、ジュリアスは苦しげな表情を浮かべた。
「私に触れられるのは、そんなにも厭ですか?」
「……」
 ジュリアスは光希に両腕をまわして、首筋に顔をうずめた。暖かな息が頸にかかり、光希は息を呑んだ。
「ジュリ、やめよう」
「もう何日も光希に触れていない。発疹が治るまで待ってほしいというなら、最後まではしません。でも少しくらい、私の渇きを癒してくれてもいいと思いませんか」
 押し殺した声で囁いた。
 どう答えるべきなのだろう。迷っている間に、ジュリアスは光希をさっと抱きあげて、寝室に向かって歩きだした。
「え、ジュリ……」
 戸惑った声で光希がいっても、ジュリアスは歩みを止めない。寝台に光希をおろすと同時に、神妙なる力で寝室の照明がふっと落ちる。
「ねぇ、待って……」
 自分でも頼りげない声だと光希は思った。
 薄暗い視界のなか、上着を脱いで、タイをはずし、軍靴ぐんかや腰帯、剣と装備をはずしたジュリアスが乗りあげてくる。
「……待ちましたよ、十分」
 薄闇のなかで、青い瞳が光彩を放っている。
 気圧された光希は、本能的に尻で後ずさりをした。けれども足首を掴まれ、寝台の中央に引き戻されてしまう。
「ぁ……っ」
 身構える光希に覆いかぶさり、少し冷たい掌が頬を撫でる。首筋にくちびるが触れて、そっと吸われると、びくっと躰が跳ねた。
「お願い、待って」
 たくましい肩を両手で掴んで押しのけようとするが、邪魔だといわんばかりに手首を寝台に押さえつけられた。
「だめ、ジュリ……んっ」
 強く唇を押しつけられて、拒絶の言葉を奪われる。強引に舌がはいってきて、逃げ惑う舌を搦め捕られた。柔らかい口腔を刺激されて、唾液を舐めとられて、濡れた水音が寝室に響いて、強制的に火を灯されていく。
「んぅ……っ」
 明確に拒むことも受け入れることもできずにいると、彼は襟の紐をほどいて、顕になった鎖骨に唇で触れた。そっと吸われた瞬間、光希は我に返った。
「ジュリ! やめよう? 無理にしないって、でも、途中で止めるの大変だよ、きっと」
 しどろもどろに告げると、ジュリアスは動きを止めた。
「それでもいい。触れられないより、よっぽどいい。少しでも光希がほしい。最後までしないと約束します。だから……」
 ジュリアスは光希の脚の間に屈みこむと、上目遣いで光希を見つめた。
「腰を浮かせて」
 光希が返事を躊躇っていると、ジュリアスは大腿の内側に手を添えた。布のうえから指で愛撫する。
「だめだって」
 不埒な手を掴むが、止まってくれない。
「触れたい」
「んっ……だめだって……っ」
「お願いします、光希……」
 熱を帯びた青い瞳に懇願されて、光希は眉をさげた。胸のあたりの衣を掴んだまま、弱々しく視線を伏せる。
「……挿れない?」
「約束します」
「……上は脱ぎたくない」
「それも判りました。でも、下着は脱がさせて」
 観念して腰を浮かすと、腰紐をほどかれ、絹の下着を脱がされ、するすると足首から抜き去られた。
 股間が外気に触れて、ひどく頼りげない気持ちになる。顔をそむけていても、顕になった性器に熱い視線を感じる。
「んっ……」
 形のよい長い指が触れて、思わずびくっとなる。口では拒んでいても、久しぶりの刺激に、縮んでいた股間は早くも反応し始めていた。
 ジュリアスは傍机の引き出しをあけて、彼が光希に贈った木蓮もくれんの香油をとりだすと、瓶の蓋をあけて両手に垂らして伸ばした。
 香油をまとった掌に、きざしている性器をそっと握りこまれた。
「ぁ……」
 甘美な心地よさに、吐息がこぼれ落ちる。
 優しく愛撫されるうちに、ゆるゆると勃ちあがってきて、先端に雫がにじむのが判った。
 やがて固く張り切った苦痛のたけりを、ジュリアスは性器を両方の掌で包んで、先端に唇をつけた。割れ目をとても優しく舐めながら、睾丸を愛撫する。
「あ、あ……ンッ」
 口のなかに包まれて、光希はうめいた。うますぎる――蜂蜜を塗った液状の絹に包まれているみたいだ。
「あ、ふぅ……っ」
 亀頭のまわりを舐められると、たまらずに喉をのけぞらせた。
 身悶える光希の痴態を、ジュリアスは恍惚の表情で見つめている。光希の性感帯を知り尽くしている巧みな舌技だ。亀頭の下側を念入りに舐めて、焦らすように、竿の中腹まで舌でなめおろすと、そこから先には進まず、また亀頭へと戻ってくる。
「あ、あ、あっ……ん」
 光希は唇を噛み締めて、あえぎの声を抑えこもうとした。殆ど無意識に、金髪を掴む手に力が入ったが、ジュリアスは不平をこぼさなかった。
 こんな……淫らな行為をするつもりではなかったのに、快楽の虜に――ジュリアスの虜になって、快楽を堪能している。
「ジュリ、離して……判ったから、僕がするから……っ」
 光希は弱々しく懇願した。このままだと後ろに挿れられかねない。
 黄金こがね色の髪を揺らして、ジュリアスは肉食獣めいた笑みを浮かべた。
「それも魅力的な提案ですが、今夜は私に愛させて……呑ませてください」
 親指で円を描くように先端を愛撫されて、光希は髪を振り乱した。
 口淫は激しさを増して、ジュリアスの喉に陰茎の先端を繊細に締めつけられ、先端からにじむ蜜を吸われる。
「あぁッ、いっ……やぁ」
 原始的な衝動がこみあげて、腰が動いた。本能的に喉の奥まで突き、ジュリアスの呼吸を奪ってしまう。
 達する、ぎりぎりの淵で理性が勝り、光希は陰茎を抜いた。ジュリアスは抗議するように、興奮で燃えあがった目をした。
「はぁ、は、激しいよ、待って、ちょっと!」
 止める間もなく、再び喉奥まで銜えこまれた。
「ぁっ! ジュリ、離して!」
 光彩を帯びた青い眸は薄闇でも明るく耀き、もっと突いてくれとはっきり要求してくる。
 逃げ腰になっても、くちびるが貪欲に追いかけてくる。奥までは入れては引いて、吸引の衝撃で光希の腰が寝台に沈んでは跳ねる。乱暴にするつもりはないのに、顔を激しく前後されるせいで、激しく突きいれて、引いてを繰り返してしまう。
「あ、あ、あっ、ぅ、でちゃ……っ」
 奉仕されているはずなのに、身も心も激しく貪られているみたいだ。じゅ、じゅ、ぬぷっと淫靡な水音に鼓膜までも犯され、心臓は破裂しそうなほど鳴っている。
 もう耐えられない――潤んだ目で見おろすと、餓えたような目で見つめ返された。視線は雄弁だ。このままだして。呑ませて――誘ってくる。いや、明確な要求だ。
「あぁぁッ!!」
 脳が白くける。
 悦楽に貫かれて、甘美な口のなかに解き放った。
 一滴残らず、しぼりとられた。
 ジュリアスはゆっくりしぼんでいく竿を舐め、絶頂を迎えて過敏になった性器をなだめるように優しく吸った。片方の手で睾丸を包み、愛情をこめて愛撫しながら、精管の残滓を一滴残らず綺麗に舐め取った。
「はぁ、はぁ、はぁ……んっ」
 光希は荒い息をつきながら、ジュリアスの口から抜くことを、ようやく赦された。心臓は鼓動をうっていて、舐め溶かされた性器は、びくびくと震えている錯覚がした。
 ジュリアスは躰を起こすと、光希を見つめたまま自身を掴み、激しくしごき始めた。光希のあごを掴み、顔を上向かせて喉をさらさせた。視線の強さに、光希はただ息を呑む。
 目元を興奮に赤く染めて、艶めいた吐息をこぼすジュリアスは、滴るような色香で、脳髄がくらくらする思いだった。
「く……は、ぁ……っ」
 官能的にうめいて、ジュリアスが達する。
 あたたかな白濁が、白い頸から胸へとかけられた。指で伸ばし、雫がついた指を、光希のくちびるのなかへ押しこんだ。
「ん……」
 恍惚の表情で、光希は指先を舐める。
 心と躰を蕩けさせる媚薬だと思った。
 躰を繋げたわけではないのに、深いところで濃厚に交わったような余韻に浸されていた。
「ありがとう……」
 感謝のこもった声でジュリアスが囁く。光希も返事のかわりに、彼の胸に頬を押し当てた。
 心臓が、力強く鼓動をうっている。
 甘く丁寧に奉仕されたはずなのに、熱烈に貪られたような錯覚がしていた。自分は小動物で、美しく獰猛な飢渇きかつした捕食者に貪られたみたいに……
 約束した通り、ジュリアスはそれ以上は求めなかった。丁寧な手つきで光希の清拭せいしきを手伝い、寝支度を終えると並んで横になった。
 濃密な情事が嘘のように、穏やかな夜の静寂しじまが満ちる。
 しかし、自分で釘をさしておきながら、光希は、躰の奥処おくかの埋み火にしばらく苛まれた。落ち着かずに輾転てんてん反側している隣で、ジュリアスは静かに目を閉じていた。
 疲労困憊しているはずだ。もう眠ったのかもしれない。或いは気遣かわれているのかもしれない。或いは……つれない言動をした光希を、罰しているのかもしれないと思った。