超B(L)級 ゾンBL - 君が美味しそう…これって○○? -

2章:エナジー・ドリンク - 10 -

 目が醒めた時、隣にレオはいなかった。
 昨夜の情事が稲妻のように脳裡に閃いて、広海は両手に顔を沈めた。
「……はぁ~――……やっちまった……」
 これまでにも際どい行為はしてきたけれど、最後の一線だけは越えずにいたのに……一体、昨日だけで何回飛び越えてしまったのだろう?
 夕方から始めて、一回、二回……少し休憩してから、連続でまた二回? 三回?
 記憶があやふやで、よく覚えていない。最後の方は殆ど半睡状態で、着替えや、ぐちゃぐちゃになったベッドの後片付けなんかも、全部レオがしてくれたような気がする。
「……」
 躰を見下ろすと、寝間着にしている短パンとシャツ、なかに下着もちゃんと履いていた。ドロドロのセックスをしたはずだが、肌はすべすべしている。そういえば、抱っこされて、シャワーも一緒に浴びたような……
 たった一日の間に、告白や甘酸っぱいデートやらを全部すっ飛ばして、ゲイビ張りに濃厚な合体フルコースを経験してしまった。
「終わったな、俺……」
 がっくり項垂れたが、レオのことが気になり、ベッドをおりた。
 彼を探して寝室をでると、テーブルに置かれたメモに、走り書きのような文字でベースへいくと書いてあった。
 時間はとうに昼を過ぎており、曇天に覆われた街は時雨しぐれに濡れている。
 わざわざ憂鬱の天気のなか、でかけなくても良かったのに……そう思ったが、もしかしたら、彼も気まずかったのかもしれない。
 基本的に理性的で冷静沈着な人だ。昨夜の飛ばし気味のセックスは、彼にとっても不本意だったのだろうか。
(……後悔してんのかな)
 そう思った瞬間、胸に軋むような痛みが走った。
 しばらく沈んだ気持で突っ立っていたが、ふと尻の具合が心配になった。
 さんざん酷使されて、ひどい有様になっていないだろうか?
 急いで寝室に戻ると、下着を脱いで、全身鏡の前で四つん這いになった。
 恐る恐る、鏡に尻を向ける。
 情けない格好だが、自分の後孔がどうなっているのか、心配でたまらなかった。
(意外と大丈夫そう……?)
 大惨事になっているかと思いきや、そこは慎ましく窄まっていた。出血もしていないし、拡がってもいない。触れたところ、特に異変は感じられなかった。
(一体、あの液体はなんだったんだ? ……もうでてこないよな……?)
 無色透明の不定形状ゼリーで、柑橘の甘い匂いがした……正体不明の物体Xが、尻から溢れてきたのだ。あのような症状、見たことも聞いたこともない。
 今は落ち着いているが、いつまたあのような状態になるのか……想像するだけで、不安になる。
 医者に診てもらいたいが、精神的に無理かもしれない。恥ずかしくて、こんなこと、たとえ医者でも話せそうにない。
 自分はいよいよ、人間ではなくなってしまったのだろうか?
 得体の知れぬ疲労感と恐怖に翻弄されていると、鏡のなかで、レオと目が遭った。
「ただいま」
 彼は、このうえなく美しい微笑を浮かべながら、傍にやってきた。
「あのっ、これはそのっ」
 広海は慌てて起きあがり、顔面蒼白になって下着を履こうとしたが、その手を掴まれた。
「何してンの?」
「うぅ、聞かないでください……パンツ履かせて」
「教えてくれたら、手ぇ離してあげる」
 声は優しいが、にやにやと意地悪な笑みを浮かべている。この状況を面白がっていることは明らかだった。
「……尻がどうなっているのか、見てました」
「ふぅん? どうだった?」
 広海は憮然となった。
「別に、普通でした。もぅいいでしょ、離してくださいよぅ」
「確かめてやるよ」
「え?」
 レオは、広海の肩を掴んで鏡に向き合わせると、素早く膝上に広海をのせて、ふくらはぎを掴んで左右に割り開いた。
「ちょっ……やめてくださいっ!」
 広海は真っ赤になって怒鳴った。
「自分じゃよく見えないだろ? 手伝ってやるよ」
「いらねーっ」
 脚を振って暴れるが、レオは離そうとしない。宥めるようにこめかみにキスされただけで、躰に震えが走った。
 鏡に、丸出しの股間が映っている。昨夜の蕩けるような愛撫が蘇り、触れられてもいない股間が脈打ち、後孔がはしたなくひくついてしまう。
「ゃ……っ」
「かわいい、ロミ……」
 ちゅっちゅっと髪や瞼にキスの雨を受けながら、性急にシャツを脱がされ、大きくて骨ばった手に翻弄された。
 胸の膨らみを揉みしだかれ、はしたなく膨らんだ亀頭が喘ぎ、蜜をこぼす性器を上に下に扱かれながら、乳首を摘まれると、たまらずに嬌声が迸った。
「あ、あっ……んぁッ」
「ちゃんと見ろよ」
 顎を捕まれ、正面を向かされる。
 鏡のなかの淫らな光景に、広海は泣きそうになった。だらしのない顔をして、あさましく乳首を濡らして、性器を勃たせて、まるで得体の知れない化け物だ。
「やだぁ……っ」
 逃げようとする広海の髪にキスをしながら、レオは、尻のしたに指をもぐらせた。
「……こっちも濡れてる」
 耳元に囁かれて、広海の全身は燃えるように熱くなった。彼のいう通り、弁明のしようがないほど、感じてしまっている。
「お尻ぐしょぐしょだよ、ロミ……」
 ぎゅっと広海は目を瞑った。視覚を遮断しても、濡れた水音に聴覚を犯される。
「見ろよ、ほら」
 嫌だ。唸り声をあげて広海は暴れたが、レオに腕を掴まれた。
「ロミ、そんなに怖がるなよ。これはただの、分泌物だから。ほら、見てみ? その方が安心すっから」
 優しくいわれて、恐る恐る、広海は瞼を開けた。
 けれども目を開けた瞬間、死にたくなるほどの後悔に襲われた。
 尻から、甘い媚薬のような香りと、透明な淫蜜を溢れさせ、レオの指をしとどに濡らしてしまっている。
 あまりの卑猥さに、広海は、魂が抜けたようにぼんやりとなり、眉をしかめ、瞳を潤ませた。
「ふぅ……っ」
「泣くなよ、別におかしくないって……ほら、溢れてきた」
 レオはうっとりしたような声音で呟くと、潤んだ蕾にそっと指をもぐらせた。
「だめっ」
 焦って、股間をまさぐる腕を掴むが、レオは少しも動じない、
「ちゃんと見えた?」
 囁きながら、指を淫らに前後させる。潤んだ孔に指が出入りするたびに、じゅぷっぬぽっと聞くに耐えない水音が弾けた。
「もういい、判ったから! 離してっ」
 広海はレオの胸にすがりついて懇願した。
「ほんと? ちゃんと見た?」
「見ましたっ! 離してください!」
「いい匂い……」
 レオが喉を鳴らした。広海は目を見張り、鏡のなかからレオを見た。炯々けいけいと輝く捕喰者の目だ。
 喰われる――そう思った時には、抱きあげられ、乱暴にベッドの上に放られた。
「あっ!」
 スプリングのきいたベッドに躰が撥ねる。逃げる間もなく、うつぶせにされ、背中から伸し掛かかられた。
「やめて……っ」
 尻たぶを両の親指で割り開かれ、うねる蕾に、熱い吐息がかかった。振り向けば、レオは高い鼻梁を尻のあわいに埋めて、匂いを嗅ぎまくる。
「ひぃっ」
「お尻の滋養剤飲ませて」
「滋養剤じゃないぃ゛~~~っ」
 広海は涙声で訴えたが、レオは躊躇なく舌を伸ばした。
「じゃあ、エナジー・ドリンク? 飲ませて」
「違うぅっ」
「ン……ロミのエッチな淫液、美味しいよ」
「淫液いうなぁっ! ……あぁッ! あぁ……ん……っ」
 孔の奥にまで舌が挿入はいってきて、脳髄まで痺れた。強烈な悦楽に浸され、びゅるっ……びゅく、びゅく……はしたなく溢れる正体不明の物体Xを啜られてしまう。
「あぁッ! っ……あ゛ぁッ!!」
 広海は逃げようと必死に藻掻いた。どんなに暴れても振りほどけない。手足を振ってシーツの上を泳いでも、すぐに腰を掴んで引き戻される。
「ひッ……やだぁ、吸わないでぇ……っ」
 情けなくも涙まじりの懇願だった。
 弱々しく藻掻く広海を押さえつけて、レオは餓えた狼のごとく広海を貪っている。
「っ、はぁ……うまいよロミ……」
 焼けつくような熱さと、嬲るような舌の動きに翻弄されて、広海は喘ぎながらシーツをきつく掴んだ。
 さんざん吸われて、何もでなくなると、ようやくレオは顔をあげた。満足そうに唇を舐める仕草は、さながらミルクの最後の一滴を舐めとる猫のようだ。
 悪魔のような猫は、胸を喘がせる広海を優しく抱き起こし、自分の膝上に乗せた。
「……ロミ、ヘーキ?」
 ちゅっと唇にキスをされて、広海は敗北の目でレオを見つめた。
「へーきじゃなぃ……っ」
 ぽろっと涙がこぼれ落ちる。レオは赤くなった眦に、唇で触れた。優しい慰めの仕草だが、さんざん貪っておいて、今更である。
「なんで、こんなことするの……?」
「……腹減ったから」
「喰料なら、まだ」
「違う」
 レオはすぐに否定した。少し考えてから、唇を開いた。
「前にもいったけどさ……あの日から、俺たちはお互いを養えるように進化・・したんじゃねーかな」
「……養えるように?」
「うん。俺はもう、以前のようには空腹を感じないんだ。でもロミは欲しい……お前は信じられないんだろけど、俺はロミの唾液飲みたいし、おっぱいも精液も美味しく感じるよ。舐めると、驚くほど回復するっていうか……細胞が覚醒めていくのが自分でも判るんだ」
「なに、いってるの……」
「たぶん、この危機的状況に、順応しようとしているんだと思う。ロミはどう? 最近空腹を感じる?」
 広海は絶句した。
 確かに、喰欲は失せている。心理的な要因もあるとは思うが、躰が喰料によるエネルギーを必要としていないのだ。排泄の仕方も変わってしまった。
「……俺は喰べますよ、人間だし」
 まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
「嗜好品としては俺も好きだよ。珈琲とか、酒とかつまみとか。だけどもう、生命維持には不要なんだ。俺の生命線はロミだよ」
 奇妙に確信めいた口調だった。レオは、言葉に詰まる広海を見て、さらに続ける。
「俺はロミを喰う・・と、超人みたいになれる。ロミはできなくても、俺ができれば問題ねぇし……これって、いわゆる相利共生じゃねぇ?」
 そういいながら、レオの手があやしく動き始めた。頬やこめかみにちゅっ、ちゅっと啄むようなキスをしながら、膨らんだ胸を揉むようにして撫であげる。
「ぁ……待って」
「やだ? ……でも、溢れちゃってるし……飲ませて……ね?」
 胸のしこりを指にそっと摘まれて、広海はびくんっと震えた。レオはゆったりした仕草で顔をさげ、ふくよかな胸に唇をつけた。感じやすく硬くなった乳首を口に含み、そっと吸いあげる。
「んぁっ」
 迸る悦楽に、救済と破滅を感じる。思わずレオの頭を掴んだ。そっと吸われて歯をたてられると、股間が脈打った。
「あぁッ……変っ、俺、俺ぇ、おかしいって」
「ン……おかしくねぇよ、これでいいんだ」
 レオは唇を離し、広海の腰を抱きながら、唇にちゅっとキスをした。朱くなる広海を、金緑のひとみで愛おしそうに見つめながら、
「俺も変わったよ。目の色もだけど、今朝シャワー浴びたら、体毛がなくなってた」
「え……?」
 広海は戸惑いつつ、レオの艷やかな黒髪を見た。髪の毛ならふさふさしているが……と、無言の問いに答えるように、レオは立ちあがり、男らしく上を脱ぎ捨て、ジーパンも蹴るようにして脱ぎ捨てた。
「ほら」
 一瞬、しなやかな肉体美を誇示しているのかと思ったが、色っぽい首筋、鎖骨、割れた腹筋……雄々しく勃起している股間に視線をとめ、目を瞠った。
 陰毛が、綺麗さっぱり、なくなっていた。
「……脱毛?」
「ちげぇ、勝手に抜けた」
 レオは淡々といった。意味がわからず、広海は頸を傾げた。よく見れば、腕や脚の柔らかな体毛までもがない。元々薄い方だったが、今は絹のようななめらかさだ。髪以外の、全身の毛がなくなっていた。
「まぁ、驚くよな。俺もびびったし……涼しくていいっちゃいいんだけど」
 広海はなんとく、自分の手を見た。レオと違って、体毛がある。彼の変化は、広海にはあてはまらないようだ。それにしても、毛深さは人並みと思っていたが、無毛のレオに比べると、自分が毛むくじゃらになった気分だった。
 と、じっと見つめていた腕を、レオにとられた。はっと顔をあげると、迫力の増した獰猛な眸に射抜かれた。
「俺は、生きるためにロミが必要なんだ。だから、躊躇ったりしねぇよ」
 突然、レオは乱暴な仕草で広海を組み敷いた。
「レオっ」
 広海はレオの肩を掴んだが、レオは構わず、身を乗りだしてきた。
「んっ」
 頬を掴まれ、唇を奪われた。舌を搦めながら、レオは広海の肌に触れてきた。
 腕を使って抵抗を試みるが、巧みに押さえこまれてしまう。甘い責め苦に囚われ、熱病にかかったように朦朧となるが、脚首を持ちあげられた瞬間に少し冴えた。
「も、やりたくなぃ……」
 広海は金緑の目を見て、弱々しく頸を振った。レオはふーっと荒い息を吐きながら、腰を進めてきた。
「あぁんっ」
 一気に貫かれて嬌声が迸る。熱いくさびが根本まで沈みこみ、ゆっくり抜けていき、また挿入はいってくる。
「ぁっ……あぅ、あ、ん……っ」
 ぬぷぬぷと浅いところを抜き挿しされると、焦れったくて、もどかしくて、広海は頭を振って身悶えた。
 物足りない……おずおずと視線をあわせると、ぐぐっと腰が沈みこんだ。
「はぁ……気持ちいーよ、ロミ……っ」
 昨夜教えこまれたばかりの剛直をみしめ、蜜を搦めてしゃぶれば、全身が、甘い蜜となって蕩けていくように感じられた。
「ぁ……ふぁ……んっ」
 くには刺激が足りなくて、自分で慰めようと前に伸ばした手を、レオに掴まれた。
「……もうちょい、我慢して」
 広海は泣きそうになった。それなのに、レオは濡れた性器の根本を締めあげ、淫らな抽挿ちゅうそうで追い打ちをかける。
「レオっ、い、たいっ、はなしてっ」
「……イくとこ、見して」
 焦げつくような欲望の眼差しに、広海の全身にさざなみのように震えがはしった。
「無理っ、手ぇはなして……っ」
 深く穿たれ、荒々しい律動に、ベッドが悲鳴をあげている。
 熱くて長大なものが股間を貫き、ずしりとした睾丸が尻にあたる艶めかしい衝撃と共に、淫らな音をたてる。
 敏感なしこりを灼熱の肉棒に擦られて、広海の下半身は、どろどろに溶けていた。全身ぐずぐずに蕩かされて、全く力が入らない。
「あ、あっ、レオ、ゆっくり……もっと、優しくぅっ」
 涙声で懇願すると、レオの瞳が翳った。広海の黒髪を優しくかきあげながら、力強く突きあげた。
「あぁっん……や、あぁうぅぅ……ッ!」
 一突きごとに結合部が泡立ち、自分とは思えぬ甘い喘ぎ声、腰のぶつかる音が脳天に響く。解放を求めて、広海は背を弓になりした。
 さしだされた胸にレオは顔を伏せ、尖った乳首を口に含んだ。舌を搦めて、ぢゅぅっと溢れる蜜を美味そうに啜りあげる。
「――ぁッ……んぁ……あッ!」
 ぞくぞくっと震えがはしり抜け、広海はレオの引き締まった躰にしがみついた。
「ん、ロミ……ッ」
 レオは局部をいっそう押しつけ、荒々しく広海を揺さぶり始めた。限界が近いのだ。
「離してぇっ」
 広海は股間を掴む手を掴み、泣いて懇願した。戒められた陰茎は、朱く膨らんで、はらはらと涙をこぼしている。もう限界だった。動けぬようしっかりと押さえつけられたまま、灼熱の熱塊に激しく貫かれる。
「いッ、イっちゃ、も、だめ、あ、あぁぁ……ッ!!」
 歓喜。恍惚。悦楽。
 閃光がはしって広海を焔が包みこんだ。
 戒めがほどかれた瞬間、高められた快楽が爆発して、失神しかけた。
 全身を戦慄わななかせながら、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ……長く、断続的に精液を噴いていた。