HALEGAIA
6章:悪魔トランス - 10 -
広々としたリビング。白木のテーブルの真ん中に置かれているカラフのなかの赤ワイン。大きな窓の向こうに、エメラルドグリーンの海が広がっている。
もう見慣れた、ミラの別荘だ。
「なんで?」
陽一は戸惑った顔でミラを見た。熱を灯した瞳に射すくめられて、ドキリとする。
「頑張ったご褒美をください」
「今かよ? まだ文化祭やってるのに」
出口を探すように視線を彷徨わせる陽一の頬を、ミラはするりと掌で撫でて目をあわせてきた。
「バンド演奏は終わりましたよ。もういいでしょう? 毎晩毎晩、健全にバンド練習ばかりして、本当に不健全でした。悪魔に我慢を強いるなんて酷い。陽一は極悪人だと思います」
「えぇ!? いや、だってラストスパートだったし」
狼狽える陽一に、ミラは妖艶な笑みを向けた。
「ねぇ、陽一。ご褒美をちょうだい?」
誘惑に搦め捕られて、陽一は黙りこむ。プレーヤーから高らかに流れる、ベートーヴェンの田園交響楽の調べが際立って聴こえた。
「……明日じゃだめ? 部活の後なら」
おずおずと、上目遣いにミラを見ると、強い視線が返された。
「だめ。この間“この埋め合わせはする”って約束しましたよね。今、埋めてください。僕も陽一に埋めるから♡」
お姫様抱っこで運ばれそうになり、陽一は慌ててミラの頭に手を伸ばした。ぽんぽんと艶々の黒髪を撫でる。
「ミラ、えらい! よく頑張りました! やるときは、やる子。やればできる子!!」
ミラは歩みを止めてじっと陽一を見つめた。
「……そうだよ、陽一のために頑張ったんだ。だからご褒美がほしい。陽一は? 僕が欲しくないの?」
熱情のこもった声と視線に、心臓がドクンと鳴った。
腕のなかで硬直している陽一を、ミラはすたすたと寝室まで運び、ベッドのうえに丁寧におろした。靴を脱がせて、自分も脱ぎ捨て、当然のように乗りあげてくる。
「陽一がほしい」
ミラの雰囲気がかわった。
焔のようなオーラが彼を包みこむ。獲物を見るような、強い眼差しに陽一は怯んだ。腕を伸ばして、硬い胸を押し返そうとしたが、弱弱しい抵抗でしかなく、美しい顔がゆっくり近づいてくる。肌からたちのぼる微熱を感じた瞬間、くちびるが重なった。感触を楽しむように表面をこすりあわせ、押し当て、軽く引っ張るように優しく吸われると、ぞくっとするような官能が躰の芯を貫いた。
「ん、ふぅ……っ」
じゅっとくちびるを吸ってから、ミラは少し顔を引いた。恐る恐る目をあわせると、菫色の瞳は、蜂蜜をとかしたみたいに甘く煌めいていた。
「好きだよ」
愛しさ、くすっぐたいような、嬉しいという気持ちがこみあげて、陽一はくちびるがむずむずするのを感じた。彼の真心に応えてあげたかった。
「……俺も好き」
嬉しそうに、幸せそうに、ミラは笑った。愛おしげに陽一の頬を撫で、ちゅっとかわいいキスをする。少し顔を離して、ふたたび迫ってくる。その前に、陽一はミラのくちびるに指を押し当てた。
「……友達じゃくて、恋愛の好き、だから」
念を押すと、ミラはくすぐったそうに笑った。ちゅっと人差し指にキスをして、
「かわいいなぁ、もう……僕も宇宙で一番、骨と肉体と魂まで、永劫に愛していますよ、陽一」
重すぎる悪魔の愛の告白に、陽一は頸からうえが燃えるように熱くなった。病んでいるといっても過言ではないのに、嬉しい!! という迸るような歓喜を感じてしまうのだから重症だ。
「っ、じゃ……その……つ、きあう?」
緊張して声が震えた。視線は泳ぐし、心臓は破裂しそうなほど動悸している。想われていると知っていても、告白とはこれほど勇気がいるものなのかと慄 いていると、ぎゅっと抱きしめられた。
「ああ、もぉかわいいっ! つきあう、陽一とつきあいます。もう絶対に離さない。陽一の全部がほしい……っ」
激情に駆られたみたいにミラは陽一のくちびるを奪い、何度もキスをしながら陽一の制服、ネクタイを緩めてシャツを脱がせた。ベルトにかけられた手を、陽一は焦って掴んだ。
「待って、シャワー」
「待たない」
菫色の瞳は爛と光り、頭部には二本の雄々しい角が突きでて、悪魔の片鱗が顕れている。
抗いようのない力で乱暴にベルトをはずされ、あっという間に下着ごと制服を脱がされた。
「あっ!」
思わず躰を丸めようとすると、両腕をシーツに縫い留められた。
「待って! 汗かいてるから!!」
「いい匂い……」
ミラは妖艶な視線で陽一をベッドに縛りつけた。緊張を煽るように、ゆっくりとした動作でジャケットを脱いでネクタイをゆるめると、シャツを脱いで、美しい上半身を顕にする。ベルトを緩めてスラックスを脱ぐと、硬く屹立した性器が灰色のボクサーパンツを押しあげ、先端を濡らしている様が見てとれた。
知らず、陽一の喉が鳴る。
ミラは艶めかしい仕草で下着を脱ぐと、見せつけるように勃起を手で掴み、何度か扱いてみせた。
「はぁ、すっごく興奮する……早く陽一に挿れたい。気持ちいいところをいっぱい突いてあげる。とろとろにしてあげるからね」
そういって陽一の頸筋に顔をうずめると、べろぉっと舐めあげた。びくびくと震える陽一の反応を愉しむように、柔らかいところを食んで、吸いついてくる。
「ん……はぁっ」
くちびるに触れられたところが燃えるように熱い。時折強く吸われると、甘美な痛みが腰にまで響いた。鎖骨にいくつも啄むようなキスをおとして、ゆっくり顔をさげていき……胸の尖りへと近づいていく。
期待と緊張と羞恥と、いろんな気持ちが綯交ぜになって、陽一は顔を横に倒した。見ていられない――乳首を優しく指で摘まれた瞬間、喉を仰け反らせた。
「んっ、ぁ、あぁ」
片方を指でこよられながら、もう片方をくちに含んで舐 られる。熱く濡れた舌に愛撫されて、中心がぐっと昂るのを感じた。ミラも硬く濡れた下半身を押しつけてくる。のしかかる男の重み、官能の匂いに、頭がくらくらする。
「美味しい。陽一の乳首、かわいい……ん……ずっと舐めていたい……ミルクがでるまで」
「でねぇよっ……ふぁっ、ン!」
じゅっと吸われて、陽一は胸を差しだすように仰け反った。舐めまわされ、美味しいといわれながら何度も吸いあげられると、ほんとうに授乳しているような気がしてくる。少し怖くなって、ミラの腕を掴んで力をこめるが、ミラはやめようとしない。乳首からくちを離したと思ったら、もう片方の乳首をくちに含んだ。
「っ、ミラ、あんま吸うなよ……っ」
「んー? ……美味しいね、陽一。ん……かわいいよ、陽一の乳首。はぁ……ちゅ……ずっと舐めたかった。いつも、汗を光らせながら、ン、シャツを押しあげる乳首が煽情的すぎて、衝動を堪えるのが大変だった」
ミラは恍惚とした表情で、身もだえる陽一を押さえつけながら、ちゅぱちゅぱっと乳首をしゃぶる。
――彼の視線に気づいていた。部活やジョギングしているとき、布をわずかに押しあげる乳首に、舐めるような視線を感じるようになってから、そこが敏感になってしまった。色の薄いTシャツは着るのをやめたが、熱視線は変わらなかった。居心地が悪いと思う反面、欲望の対象にされていることを強く意識させられて、躰が熱くなることに苦慮していた。
陽一だって健全な男子高校生だ。性欲くらいある。ミラに、触れたいと思う。胸に両掌を這わせると、そうしやすいように、ミラは少し身を起こした。
引き締まった肢体。無駄な脂肪はいっさいない、鍛えぬかれた、完璧な肢体。しっとりと筋肉をまとい、胎は引き締まり横に筋が入っている。
男の肌に欲望など抱いた試しがないが、ミラに限っては別だった。天鵞絨 のように滑らかな肌に桜色の乳首が固く際立っている。そこを舐めてみたいと思っていると、ミラは陽一を抱き起して、対面座位の姿勢をとった。
「キスをして」
欲に翳 った菫色の瞳に命じられ、陽一はぞくぞくとした快感が腰に響くのを感じた。夢中でキスをしながら、白い素肌からたちのぼる熱と香りに、頭がくらくらする。痛いほどミラを意識している。これが初めての経験ではないのに、童貞に戻ったみたいに心臓がバクバクしている。
「ん、んっ」
息を喘がせると、ほんの少し休憩させてくれるが、すぐにまたくちびるを奪われる。舌をまさぐり、自信と征服欲に満ちたキスが惜しみなく与えられる。いつまでも終わらないので、次第に頭がぼうっとしてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
ようやく解放されたとき、陽一は肩を上下させながら、荒い呼吸を繰り返していた。
ミラも頬を薔薇色に染めて、額に汗を滲ませている。荒々しく己のくちびるを手でぬぐうと、陽一を押し倒し、ギラギラした捕食者のような目で眺めおろした。濡れたくちびる、愛撫されて尖っている乳首、赤く染まった肌……それから昂りに視線をとめた。陽一が身動ぐ前に、膝に手をかけて強引に割り開いた。
「あぁ、美味しそう……陽一の精液、ひさしぶり」
ミラは恍惚と呟いた。陽一は羞恥に襲われたが、キスの余韻でぐったりとしている。吐息が、そこに触れるのを、期待と緊張と、僅かな恐れを抱きながら、ただじっと待っていた。
ミラは愛おしげに亀頭にちゅっとキスをして、濡れた蜜口をごくそっと、優しく吸った。
「ぁん……」
えもいわれぬ悦楽に、思考が蕩けていく――
甘く濡れた声を聴きながら、ミラはゆっくり、焦らすように、屹立に舌を這わせた。うえからしたへ、したからうえへねっとりと舐めあげ、舐めおろし……睾丸を優しく揉みしだく。
「っ、ヤバ、イくっ」
いくらなんでも早いと思うが、こらえられそうにない。腰を引かせようとするが、逆に腰を引き寄せられ、がっちり固定された。
「ミラッ、でちゃう!」
ミラは絶対に放さないとばかりに陽一の性器をすっぽり飲みこみ、烈しく顔を前後させた。じゅぷじゅぷっと濡れた水音が響く。喉奥で絞られて、陽一は弾かれたように顎を仰け反らせた。
「ぁあッ! ン~~――ッ……」
どくっどくっと脈打つたびに、熱いくちのなかに放った。ミラは喉を鳴らして飲みこむと、ゆっくりと頬をすぼめて蜜口を吸いあげた。精管の残滓までも吸いあげて、最後にちゅっとキスをする。
「はぁ……美味しかったぁ。久しぶりの陽一の精液、とっても濃くて、童貞に生まれ変わったみたい夢中になっちゃった。ごちそうさまでした」
ミラは頬を薔薇色に上気させて、うっとりした顔で睾丸をふにふにともて遊びながら、陽一に笑みかけた。
「……ぅん」
ツッコミどころ満載で、どう反応すればいいか判らない。気持ち良かったといえば喜ぶのかもしれないが、なにもいわなくても、ミラは幸せそうだ。
「今度は陽一の番。たっぷり飲ませてあげるからね」
尻を撫でられると、陽一は、ぼんやりしていた思考が少し冷えるのを感じた。不埒な腕を掴んで身を起こそうとするが、肩を押さえつけられて動けない。
「……綺麗にしないと」
少し困ったように申しでると、ミラはふっと微笑した。
「僕に任せて。綺麗にしてあげる」
おずおずと、陽一はされるがまま、あられもなく脚を割り開いた。尻が少し浮かびあがる。ミラの白くて長い指が蕾に触れると、ふわっと熱くなった。何度も経験してきた、繋がるための隘路 を清浄にしてくれる熱だ。下腹部がすっきりとして、それでいて蕩けていく感覚がする。
「ん……ありがと」
「どういたしまして」
ミラはさらに尻をもちあげると、顔をそこに埋めた。
「ミラッ」
陽一は咄嗟に頭を押し返そうとするが、ミラは強い意思をもって、夢中でそこを舐めまわした。じゅるじゅるっと音をたてて後孔を舐めまわし、吸いついて、舌をもぐらせてきた。
「んぁッ! 待っ……んんっ、ミラ! 汚いからっ」
「ふ、ン、今綺麗にしたよ、いい匂い、んっ、美味しい、陽一の味がする……っ」
「ミラ~~ッ」
さすがに陽一も真っ赤になって抵抗する。けれども巧みに押さえこまれて、孔を吸われまくる。太腿のやわらかな内側にも吸いつかれ、甘噛みされて、揺れる睾丸もしゃぶられた。
「はぁんっ! やぁ、も、やめっ……ミラ、みらぁ」
声に泣きが入り混じっても、ミラの暴走は止まらなかった。ぴくぴくと震える性器を舐めあげ、亀頭にじゅっと吸いついて、わずかに滲む蜜を啜りあげる。小鳥が啄むようなキスを屹立に落としながら、ふっくらとした会陰までおりていき……ふたたび後孔を舌で責めた。
「嗚呼、美味し……陽一のかわいい孔、最高、エモい、すごく美味しい……っ」
そんなところに情緒的 は感じない。
「ふうぅ~っ……も、いいだろぉ、ちんこ溶ける……っ」
すでに下半身はぐずぐずになっている。持ちあげられた脚が疲れてきたし、腹筋にも腕にも力が入らない。
「陽一、まだ飛ばないで」
ミラはようやく陽一の窮状を察し、顔をあげた。べたべたになった口元を乱暴に手でぬぐうと、陽一の膝裏に腕をいれ、欲望に滾る勃起を、とろとろに蕩けた蕾に押しあてた。
「挿れてあげる」
悪魔のほほえみだ。ぐっと腰が押しだされ、一気に貫かれた。
「あぁッ!!」
陽一は仰け反った。一瞬の躰の強張り。重たく熱い疼きが全身にゆっくり浸透していき……力を抜いた。こらえきれないほどの悦びを感じる。
ミラはじっと動かず、満足そうに陽一の様子を見ていた。やがて陽一の躰から余計な力が抜けていくのを待ってから、ゆったりとした抽挿を始めた。腰を掴み、たん、たん、と律動を刻む。
「ぁ、あ、あ、あッ、ン、んァッ」
情欲に蕩けきった喘ぎ声を止められない。
「かわいい、陽一。好き……っ」
ミラは頬を上気させ、陽一のあえぐ胸、つんと尖った乳首を親指で倒した。
「ひぅっ」
身もだえる陽一の胸に顔をふせ、熱いくちびるで乳首を挟みこんだ。片方を指先でこよりながら、もう片方を舐めまわし、甘噛みする。舌で乳首を弾いて、焦らすように円を描いては、くちに含んで吸いあげる。
あまりの快楽に、陽一が痙攣を起こしたように身じろぐと、ミラは腰を力強く押しだし、ぐじゅうっと後孔を串刺しにした。
「ぁあッン! 深いぃ……ンンッ……」
ミラは震える陽一の頬を両手ではさみこみ、吐息ごとくちびるを奪った。
舌を搦めながら、艶めかしい腰の動きで貫かれる。陽一は、全身が液状になって溶けていくような錯覚がした。糸を引いてくちびるが離れると、ミラの肩に顔をうめて、彼の腰の動きにあわせて、誘われるように腰を動かした。
「はぁ、はぁ、はぁ、ぁ、あ、んっ」
内なる炎が掻きたてられ、媚肉 がうねる。固い熱塊に突きあげられるたびに、秘孔が喘ぐ。濡れた音に誘われるように大胆になって、自ら足をあげ、ミラの尻と腿にからませた。
応じられるとミラも夢中になって、破城槌 のように烈しく突きはじめると、意図したよりも力がこもってしまったが、陽一もミラの腰の動きにあわせて腰を振った。
バサッと翼の拡がる音が聴こえた。
本能のままに羽搏 く音が、ミラの興奮を伝えてくる。
薔薇を煮詰めたような、むせかえるような官能の匂い。
覆いかぶさる翼に瞼の奥が暗くなって、陽一の興奮はいや増した。痙攣して躰を浮かせ、熱い肢体にしがみついた。
「あ、ンッ、ミラッ、も、やぁッ」
陽一はもう限界だった。涼しい部屋で、全身ぐっしょり濡れている。突きあげられるたびに躰が撥ねて、もがいて逃げようとしても、圧倒的な膂力 に押さえつけられた。重い律動にベッドが悲鳴をあげている。
「ぁんっ、はぁ、ん、んぁあっ」
嬌声を止められない。涙も溢れて、声は掠れている。ミラは宥めるようにキスをしたり、情欲に濡れた深いキスをしながら陽一を求め、容赦なく鳴かせた。
「あ、ぃ、イくッ、イくからぁっ……!」
陽一は涙声で叫んだ。イきすぎて辛かった。シーツを掴んで絶頂に耐えようとするが、ミラは陽一の尻を鷲掴み、烈しく貫いた。じゅぷッじゅぷッと淫靡な水音が大きくなる。
「あああッ」
頭のなかが白熱し、腰の奥が熱く溶けた。
制御できないほどに膨れあがった快楽が爆発し、熱い液体が躰の奥に注ぎこまれる。白熱した思考のなか、首筋にちくんとした痛みが疾り、牙が食いこむのを感じた。
「ひぅッ、あ、あ~~――ッ……」
悪魔のような恍惚 。
えもいわれぬ絶望的なまでに強烈な悦楽に襲われ、思考と視界が、プツンッと弾け飛んだ。
もう見慣れた、ミラの別荘だ。
「なんで?」
陽一は戸惑った顔でミラを見た。熱を灯した瞳に射すくめられて、ドキリとする。
「頑張ったご褒美をください」
「今かよ? まだ文化祭やってるのに」
出口を探すように視線を彷徨わせる陽一の頬を、ミラはするりと掌で撫でて目をあわせてきた。
「バンド演奏は終わりましたよ。もういいでしょう? 毎晩毎晩、健全にバンド練習ばかりして、本当に不健全でした。悪魔に我慢を強いるなんて酷い。陽一は極悪人だと思います」
「えぇ!? いや、だってラストスパートだったし」
狼狽える陽一に、ミラは妖艶な笑みを向けた。
「ねぇ、陽一。ご褒美をちょうだい?」
誘惑に搦め捕られて、陽一は黙りこむ。プレーヤーから高らかに流れる、ベートーヴェンの田園交響楽の調べが際立って聴こえた。
「……明日じゃだめ? 部活の後なら」
おずおずと、上目遣いにミラを見ると、強い視線が返された。
「だめ。この間“この埋め合わせはする”って約束しましたよね。今、埋めてください。僕も陽一に埋めるから♡」
お姫様抱っこで運ばれそうになり、陽一は慌ててミラの頭に手を伸ばした。ぽんぽんと艶々の黒髪を撫でる。
「ミラ、えらい! よく頑張りました! やるときは、やる子。やればできる子!!」
ミラは歩みを止めてじっと陽一を見つめた。
「……そうだよ、陽一のために頑張ったんだ。だからご褒美がほしい。陽一は? 僕が欲しくないの?」
熱情のこもった声と視線に、心臓がドクンと鳴った。
腕のなかで硬直している陽一を、ミラはすたすたと寝室まで運び、ベッドのうえに丁寧におろした。靴を脱がせて、自分も脱ぎ捨て、当然のように乗りあげてくる。
「陽一がほしい」
ミラの雰囲気がかわった。
焔のようなオーラが彼を包みこむ。獲物を見るような、強い眼差しに陽一は怯んだ。腕を伸ばして、硬い胸を押し返そうとしたが、弱弱しい抵抗でしかなく、美しい顔がゆっくり近づいてくる。肌からたちのぼる微熱を感じた瞬間、くちびるが重なった。感触を楽しむように表面をこすりあわせ、押し当て、軽く引っ張るように優しく吸われると、ぞくっとするような官能が躰の芯を貫いた。
「ん、ふぅ……っ」
じゅっとくちびるを吸ってから、ミラは少し顔を引いた。恐る恐る目をあわせると、菫色の瞳は、蜂蜜をとかしたみたいに甘く煌めいていた。
「好きだよ」
愛しさ、くすっぐたいような、嬉しいという気持ちがこみあげて、陽一はくちびるがむずむずするのを感じた。彼の真心に応えてあげたかった。
「……俺も好き」
嬉しそうに、幸せそうに、ミラは笑った。愛おしげに陽一の頬を撫で、ちゅっとかわいいキスをする。少し顔を離して、ふたたび迫ってくる。その前に、陽一はミラのくちびるに指を押し当てた。
「……友達じゃくて、恋愛の好き、だから」
念を押すと、ミラはくすぐったそうに笑った。ちゅっと人差し指にキスをして、
「かわいいなぁ、もう……僕も宇宙で一番、骨と肉体と魂まで、永劫に愛していますよ、陽一」
重すぎる悪魔の愛の告白に、陽一は頸からうえが燃えるように熱くなった。病んでいるといっても過言ではないのに、嬉しい!! という迸るような歓喜を感じてしまうのだから重症だ。
「っ、じゃ……その……つ、きあう?」
緊張して声が震えた。視線は泳ぐし、心臓は破裂しそうなほど動悸している。想われていると知っていても、告白とはこれほど勇気がいるものなのかと
「ああ、もぉかわいいっ! つきあう、陽一とつきあいます。もう絶対に離さない。陽一の全部がほしい……っ」
激情に駆られたみたいにミラは陽一のくちびるを奪い、何度もキスをしながら陽一の制服、ネクタイを緩めてシャツを脱がせた。ベルトにかけられた手を、陽一は焦って掴んだ。
「待って、シャワー」
「待たない」
菫色の瞳は爛と光り、頭部には二本の雄々しい角が突きでて、悪魔の片鱗が顕れている。
抗いようのない力で乱暴にベルトをはずされ、あっという間に下着ごと制服を脱がされた。
「あっ!」
思わず躰を丸めようとすると、両腕をシーツに縫い留められた。
「待って! 汗かいてるから!!」
「いい匂い……」
ミラは妖艶な視線で陽一をベッドに縛りつけた。緊張を煽るように、ゆっくりとした動作でジャケットを脱いでネクタイをゆるめると、シャツを脱いで、美しい上半身を顕にする。ベルトを緩めてスラックスを脱ぐと、硬く屹立した性器が灰色のボクサーパンツを押しあげ、先端を濡らしている様が見てとれた。
知らず、陽一の喉が鳴る。
ミラは艶めかしい仕草で下着を脱ぐと、見せつけるように勃起を手で掴み、何度か扱いてみせた。
「はぁ、すっごく興奮する……早く陽一に挿れたい。気持ちいいところをいっぱい突いてあげる。とろとろにしてあげるからね」
そういって陽一の頸筋に顔をうずめると、べろぉっと舐めあげた。びくびくと震える陽一の反応を愉しむように、柔らかいところを食んで、吸いついてくる。
「ん……はぁっ」
くちびるに触れられたところが燃えるように熱い。時折強く吸われると、甘美な痛みが腰にまで響いた。鎖骨にいくつも啄むようなキスをおとして、ゆっくり顔をさげていき……胸の尖りへと近づいていく。
期待と緊張と羞恥と、いろんな気持ちが綯交ぜになって、陽一は顔を横に倒した。見ていられない――乳首を優しく指で摘まれた瞬間、喉を仰け反らせた。
「んっ、ぁ、あぁ」
片方を指でこよられながら、もう片方をくちに含んで
「美味しい。陽一の乳首、かわいい……ん……ずっと舐めていたい……ミルクがでるまで」
「でねぇよっ……ふぁっ、ン!」
じゅっと吸われて、陽一は胸を差しだすように仰け反った。舐めまわされ、美味しいといわれながら何度も吸いあげられると、ほんとうに授乳しているような気がしてくる。少し怖くなって、ミラの腕を掴んで力をこめるが、ミラはやめようとしない。乳首からくちを離したと思ったら、もう片方の乳首をくちに含んだ。
「っ、ミラ、あんま吸うなよ……っ」
「んー? ……美味しいね、陽一。ん……かわいいよ、陽一の乳首。はぁ……ちゅ……ずっと舐めたかった。いつも、汗を光らせながら、ン、シャツを押しあげる乳首が煽情的すぎて、衝動を堪えるのが大変だった」
ミラは恍惚とした表情で、身もだえる陽一を押さえつけながら、ちゅぱちゅぱっと乳首をしゃぶる。
――彼の視線に気づいていた。部活やジョギングしているとき、布をわずかに押しあげる乳首に、舐めるような視線を感じるようになってから、そこが敏感になってしまった。色の薄いTシャツは着るのをやめたが、熱視線は変わらなかった。居心地が悪いと思う反面、欲望の対象にされていることを強く意識させられて、躰が熱くなることに苦慮していた。
陽一だって健全な男子高校生だ。性欲くらいある。ミラに、触れたいと思う。胸に両掌を這わせると、そうしやすいように、ミラは少し身を起こした。
引き締まった肢体。無駄な脂肪はいっさいない、鍛えぬかれた、完璧な肢体。しっとりと筋肉をまとい、胎は引き締まり横に筋が入っている。
男の肌に欲望など抱いた試しがないが、ミラに限っては別だった。
「キスをして」
欲に
「ん、んっ」
息を喘がせると、ほんの少し休憩させてくれるが、すぐにまたくちびるを奪われる。舌をまさぐり、自信と征服欲に満ちたキスが惜しみなく与えられる。いつまでも終わらないので、次第に頭がぼうっとしてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
ようやく解放されたとき、陽一は肩を上下させながら、荒い呼吸を繰り返していた。
ミラも頬を薔薇色に染めて、額に汗を滲ませている。荒々しく己のくちびるを手でぬぐうと、陽一を押し倒し、ギラギラした捕食者のような目で眺めおろした。濡れたくちびる、愛撫されて尖っている乳首、赤く染まった肌……それから昂りに視線をとめた。陽一が身動ぐ前に、膝に手をかけて強引に割り開いた。
「あぁ、美味しそう……陽一の精液、ひさしぶり」
ミラは恍惚と呟いた。陽一は羞恥に襲われたが、キスの余韻でぐったりとしている。吐息が、そこに触れるのを、期待と緊張と、僅かな恐れを抱きながら、ただじっと待っていた。
ミラは愛おしげに亀頭にちゅっとキスをして、濡れた蜜口をごくそっと、優しく吸った。
「ぁん……」
えもいわれぬ悦楽に、思考が蕩けていく――
甘く濡れた声を聴きながら、ミラはゆっくり、焦らすように、屹立に舌を這わせた。うえからしたへ、したからうえへねっとりと舐めあげ、舐めおろし……睾丸を優しく揉みしだく。
「っ、ヤバ、イくっ」
いくらなんでも早いと思うが、こらえられそうにない。腰を引かせようとするが、逆に腰を引き寄せられ、がっちり固定された。
「ミラッ、でちゃう!」
ミラは絶対に放さないとばかりに陽一の性器をすっぽり飲みこみ、烈しく顔を前後させた。じゅぷじゅぷっと濡れた水音が響く。喉奥で絞られて、陽一は弾かれたように顎を仰け反らせた。
「ぁあッ! ン~~――ッ……」
どくっどくっと脈打つたびに、熱いくちのなかに放った。ミラは喉を鳴らして飲みこむと、ゆっくりと頬をすぼめて蜜口を吸いあげた。精管の残滓までも吸いあげて、最後にちゅっとキスをする。
「はぁ……美味しかったぁ。久しぶりの陽一の精液、とっても濃くて、童貞に生まれ変わったみたい夢中になっちゃった。ごちそうさまでした」
ミラは頬を薔薇色に上気させて、うっとりした顔で睾丸をふにふにともて遊びながら、陽一に笑みかけた。
「……ぅん」
ツッコミどころ満載で、どう反応すればいいか判らない。気持ち良かったといえば喜ぶのかもしれないが、なにもいわなくても、ミラは幸せそうだ。
「今度は陽一の番。たっぷり飲ませてあげるからね」
尻を撫でられると、陽一は、ぼんやりしていた思考が少し冷えるのを感じた。不埒な腕を掴んで身を起こそうとするが、肩を押さえつけられて動けない。
「……綺麗にしないと」
少し困ったように申しでると、ミラはふっと微笑した。
「僕に任せて。綺麗にしてあげる」
おずおずと、陽一はされるがまま、あられもなく脚を割り開いた。尻が少し浮かびあがる。ミラの白くて長い指が蕾に触れると、ふわっと熱くなった。何度も経験してきた、繋がるための
「ん……ありがと」
「どういたしまして」
ミラはさらに尻をもちあげると、顔をそこに埋めた。
「ミラッ」
陽一は咄嗟に頭を押し返そうとするが、ミラは強い意思をもって、夢中でそこを舐めまわした。じゅるじゅるっと音をたてて後孔を舐めまわし、吸いついて、舌をもぐらせてきた。
「んぁッ! 待っ……んんっ、ミラ! 汚いからっ」
「ふ、ン、今綺麗にしたよ、いい匂い、んっ、美味しい、陽一の味がする……っ」
「ミラ~~ッ」
さすがに陽一も真っ赤になって抵抗する。けれども巧みに押さえこまれて、孔を吸われまくる。太腿のやわらかな内側にも吸いつかれ、甘噛みされて、揺れる睾丸もしゃぶられた。
「はぁんっ! やぁ、も、やめっ……ミラ、みらぁ」
声に泣きが入り混じっても、ミラの暴走は止まらなかった。ぴくぴくと震える性器を舐めあげ、亀頭にじゅっと吸いついて、わずかに滲む蜜を啜りあげる。小鳥が啄むようなキスを屹立に落としながら、ふっくらとした会陰までおりていき……ふたたび後孔を舌で責めた。
「嗚呼、美味し……陽一のかわいい孔、最高、エモい、すごく美味しい……っ」
そんなところに
「ふうぅ~っ……も、いいだろぉ、ちんこ溶ける……っ」
すでに下半身はぐずぐずになっている。持ちあげられた脚が疲れてきたし、腹筋にも腕にも力が入らない。
「陽一、まだ飛ばないで」
ミラはようやく陽一の窮状を察し、顔をあげた。べたべたになった口元を乱暴に手でぬぐうと、陽一の膝裏に腕をいれ、欲望に滾る勃起を、とろとろに蕩けた蕾に押しあてた。
「挿れてあげる」
悪魔のほほえみだ。ぐっと腰が押しだされ、一気に貫かれた。
「あぁッ!!」
陽一は仰け反った。一瞬の躰の強張り。重たく熱い疼きが全身にゆっくり浸透していき……力を抜いた。こらえきれないほどの悦びを感じる。
ミラはじっと動かず、満足そうに陽一の様子を見ていた。やがて陽一の躰から余計な力が抜けていくのを待ってから、ゆったりとした抽挿を始めた。腰を掴み、たん、たん、と律動を刻む。
「ぁ、あ、あ、あッ、ン、んァッ」
情欲に蕩けきった喘ぎ声を止められない。
「かわいい、陽一。好き……っ」
ミラは頬を上気させ、陽一のあえぐ胸、つんと尖った乳首を親指で倒した。
「ひぅっ」
身もだえる陽一の胸に顔をふせ、熱いくちびるで乳首を挟みこんだ。片方を指先でこよりながら、もう片方を舐めまわし、甘噛みする。舌で乳首を弾いて、焦らすように円を描いては、くちに含んで吸いあげる。
あまりの快楽に、陽一が痙攣を起こしたように身じろぐと、ミラは腰を力強く押しだし、ぐじゅうっと後孔を串刺しにした。
「ぁあッン! 深いぃ……ンンッ……」
ミラは震える陽一の頬を両手ではさみこみ、吐息ごとくちびるを奪った。
舌を搦めながら、艶めかしい腰の動きで貫かれる。陽一は、全身が液状になって溶けていくような錯覚がした。糸を引いてくちびるが離れると、ミラの肩に顔をうめて、彼の腰の動きにあわせて、誘われるように腰を動かした。
「はぁ、はぁ、はぁ、ぁ、あ、んっ」
内なる炎が掻きたてられ、
応じられるとミラも夢中になって、
バサッと翼の拡がる音が聴こえた。
本能のままに
薔薇を煮詰めたような、むせかえるような官能の匂い。
覆いかぶさる翼に瞼の奥が暗くなって、陽一の興奮はいや増した。痙攣して躰を浮かせ、熱い肢体にしがみついた。
「あ、ンッ、ミラッ、も、やぁッ」
陽一はもう限界だった。涼しい部屋で、全身ぐっしょり濡れている。突きあげられるたびに躰が撥ねて、もがいて逃げようとしても、圧倒的な
「ぁんっ、はぁ、ん、んぁあっ」
嬌声を止められない。涙も溢れて、声は掠れている。ミラは宥めるようにキスをしたり、情欲に濡れた深いキスをしながら陽一を求め、容赦なく鳴かせた。
「あ、ぃ、イくッ、イくからぁっ……!」
陽一は涙声で叫んだ。イきすぎて辛かった。シーツを掴んで絶頂に耐えようとするが、ミラは陽一の尻を鷲掴み、烈しく貫いた。じゅぷッじゅぷッと淫靡な水音が大きくなる。
「あああッ」
頭のなかが白熱し、腰の奥が熱く溶けた。
制御できないほどに膨れあがった快楽が爆発し、熱い液体が躰の奥に注ぎこまれる。白熱した思考のなか、首筋にちくんとした痛みが疾り、牙が食いこむのを感じた。
「ひぅッ、あ、あ~~――ッ……」
悪魔のような
えもいわれぬ絶望的なまでに強烈な悦楽に襲われ、思考と視界が、プツンッと弾け飛んだ。