HALEGAIA
2章:
陽一は椅子に座り、真面目な顔で思案していた。
人にはいえぬ、下半身事情について。
ここのところ、誰かさんのせいで、欲求不満が高められているのだ。悪魔の誘惑、蕩けるようなキスと吸血のせいで、困った事態に陥っている。
(……最近、抜いてなかったしなぁ)
健全な男子高校生なのだから、発散するのは自然なことなのだが……鳥籠で自涜 に耽 るのは、少々抵抗を感じる。最中に奴 が現れないとも限らないし……
そんなわけで、椅子に座って悶々としていたのだが、吐きだすことに決めた。そういう気分なのだ。
紗を引いて湯をだすと、いい感じに音が紛れる。服を脱いで浴槽の縁に腰かけ、目を閉じてリラックスし、自分の息子を手で扱いていると……脳裡にミラの顔が思い浮かんだ。
「え?」
思わず、目を開けてしまった。
よりによって、なぜ、ミラのことを思い浮かべたのだろう?
気の迷いだといい聞かせて、再び目を閉じるが……ミラの余映が消えない。形の良い唇……触れられた感触を思いだしながら、指を滑らせると、興奮がいや増した。湯の音。心臓の音。熱が、迸る。
「陽一」
いよいよ幻聴まできこえる。陽一はうっすらと目を開け……ぎょっと目を見開いた。
浴槽の傍にミラが立っている。彼は凝 と陽一を、足を開いて、屹立を手で掴んでいるあられもない姿を、熱の籠った目で見ていた。
陽一は慌てて手で股間を隠したが、いまさらどんな弁明も不可能だ。
気まずげに押し黙る陽一の傍に、
「いい匂い……」
そういって、ミラはゆっくりした動作で屈みこんだ。覗きこむように見つめられ、陽一はごくりと唾を呑みこんだ。
「食餌 にさせてください」
「は?」
困惑を顔に浮かべる陽一に、ミラは妖しく笑みかけた。
と、浴槽やシャワースタンドが消えて、豪奢なベッドが唐突に現れた。
「わぁっ」
腕を引かれて、くるりと躰を反転させられた。背中がミラの胸にあたる。彼は後ろから不埒な手を伸ばし、内腿を撫であげた。
「うわっ、何すんだ馬鹿」
焦って、股間をまさぐる腕を掴むが、ミラは少しも怯まない。片手は胸をまさぐり、小さな突起を指で掻く。
「ッ、やめろ! マジでやめろ!」
「気持ちいいい?」
「冗談、やめろって……ミラッ!」
ごまかしようのないほど勃ちあがった屹立を、ミラは輪にした指で巧みに扱いてくる。
「うわぁっ、触んな! ……んっ」
こんなこと、いけないのに……そう思っているはずなのに、耳元で媚薬のように息を吹きかけられると、脳髄まで痺れた。
「気持ちいい?」
耳元で囁かれると、ふわふわする。
「……うん」
陽一は、夢見るような声で返事をしていた。掌を優しく頬に押し当てられ、振り向かされる。そっと唇が重なり、ミラの舌が入ってくると、悦びのため息を吐いた。苺のような甘い果物と、ミラの交じりあった、素晴らしく蠱惑的な味がして、脳髄が痺れる。
「ん……」
キスをしながら肌を愛撫され、あまりの心地良さに陽一は喘いだ。押し倒されても抵抗せず、彼の肩をそっと掴んだだけだった。
「かわいい、陽一……」
甘く囁いて、ミラは唇をふさいだ。表面を優しく刺激しながら、とじた唇を舌で突いて、その先を求める。ほころんだ隙間から舌を挿しいれ、引っこんでいる舌を搦め捕り、すすりあげた。
「あ、ふぅ」
甘く貪られながら、股間を膝で刺激すれ、陽一は息も絶え絶えに呻いた。
「ぁ、ん……っ」
ようやくキスが解かれたと思ったら、彼の唇が耳朶に触れた。思わずため息を吐いて首を傾けた。柔らかく耳を食まれ、舌を挿しいれられると、躰の中心をぞくぞくとした快感が這いあがってきた。
「ふぁ……っ」
烈しく興奮して、感じいった声が漏れてしまう。ミラは耳から顎へと唇を滑らせ、首筋を啄みながら降りていき……鎖骨のくぼびにくちびるを押し当てた。さらに顔をさげていき、感じやすく硬くなった乳首を口に含んだ。
「んぁっ……あ、やぁ……」
焼けつくような熱さと、嬲るような舌の動きに翻弄されて、陽一は喘ぎながらミラの頭を掴んだ。そっと吸われて歯をたてられると、下腹部がどくんと脈打った。柔らかく吸われながら、彼の手が胸からしたへと滑り落ちていくのを感じていた。
感じやすい性感帯を撫であげられ、陽一は腰を引かせたが、拒もうという意志はなかった。みずから足を開いて、もっと欲しいとねだる。
「……気持ちいい?」
ミラは耳元で囁きながら、優しく陽一自身を握り、蜜を絞るように扱いた。
「ふぁっ、ひぅ……あ、あ、」
まるで小動物を愛玩するような指技に、陽一は喘がされた。自分でする手淫とはまるで違う、信じられないほど巧みな指遣いに、しとどに濡れた。
熱病に罹 ったようにぼうっとしていたが、彼の頭が股間にあると気づくと、ぎょっとなった。
「嘘っ」
焦って逃げようとするが、強い力で腰をおさえつけられてしまう。
「ミラ? まさか舐めない、よな……?」
怯えたように問いかけると、ミラは、美貌にうっとりしたような笑みを浮かべ、吐精して濡れた陰茎に顔を寄せた。
「ひぁっ、やめろ!」
髪を掴んで引き剥がそうとするば、ミラは躊躇なく顔を寄せて、陰茎に舌を伸ばした。柔らかな尻たぶを手で鷲掴み、尻の丸さを愉しむように卑猥に揉みしだきながら、陰茎に舌を伸ばした。
「あふぅっ! ちょっ……んぁっ……あぁ……んっ」
陽一は弱弱しい声で啼いた。先端から腰が、さらに全身が、甘い蜜となってとろけていくように感じられた。
長い指が、尻たぶの割れ目に食い込み、いいようのない焦燥に駆られた。
とんでもない事態なのに、ミラの口内で股間は昂り、はち切れんばかりに膨らんでいる。そこから伝わってくる悦楽に、脳髄がとろけてしまいそうだった。
ミラは陽一の両足を抱えこんだ。立て膝の姿勢に足をもちあげ、両足を大きく割り開いた。そうして顔をうずめて、大胆に舌を這わせた。
「あぁッ!」
陽一は内腿をひくつかせ、無意識に力をこめてミラの顔を手挟んだ。熱い咥内に包まれ、陰茎に舌が絡んできた。鈴口を舌に嬲られ、粘度を増していく。
「あっ……んぅ、やっ……ぁん」
熱い。
ミラにしゃぶられて、股間がかつてないほど熱 りたっている。舌鼓を打つような、舌打ちのような、淫靡な水音が、ミラの唇から発せられた。あらゆる五感を淫らに責め立てられ、陽一を昂ぶらせる。とろりとしたものが内側から溢れて、孔という孔からこぼれていくような幻覚に囚われた。
「んぁっ……だめ、だってぇっ……汚いっ」
口では拒みながら、背中を弓なりにして、強烈な愛撫に応えるように腰を振るわせる。
「汚くありませんよ、すごく美味しい……僕の糧 です」
吸われ、舐められて、陽一の理性は崩壊寸前だった。高められた快感がはじけて、二度三度と躰が痙攣し、精が迸った。
「あぁ、嘘……と、とまんな……ぃ」
今までだしたことがないほど大量の精だ。その全てを、ミラは頬をすぼめるようにして吸いあげ、さらに吐精を促すように、舌を埋めこむようにして穴を突いてくる。
「ん……我慢しないで……もっとだせるでしょう……?」
陶然とミラが囁く。
いつ終わるとも判らぬ、淫靡な水音が鳥籠の天蓋に反響している。陽一の混乱は極まり、容赦のない愛撫から逃げようとすると同時に、局部をいっそう押しつけようとしていた。
「あぁっ――」
あれほどの量を吐きだしたというのに、高められた快楽が再び爆発した。目の奥で白い光が炸裂し、頭のなかが真っ白になる。悦楽の奔流に烈しく身を震わせ、怒張したものが、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっと精液を噴いていた。
「……んぅっ……ぁ……あぁ……ん……っ」
陽一は、みっともないくらい甘い声をだしていた。
ミラは精液をせがむように陰茎を舐め、しゃぶり、舌を這わせている。
「あ、んぅっ……も、でないっ……離してぇっ」
悲鳴をあげかけた時、ミラは身を引いた。
快楽の波が引いていき、陽一はおずおずと視線を向けた。魔性の瞳と遭い、ぎくりと強張る。艶めいた美貌は、欲情した雄の顔をしていた。
行為をやめたのではなく、次の段階 に進むために、ミラは態勢を変えようとしているのだ。
怖い。
犯される――未知への恐怖が膨れあがり、喉が締めつけられるような気がした。
「ふうぅっ……もう無理、やめて……お願い……っ」
恥も外聞もなく、子供みたいに涙まじりの懇願だった。
「“お願い”ですか?」
「うん……」
陽一が弱々しく頷くと、ミラは仕方がなさそうに躰を起こした。
「……仕方がありませんねぇ」
どうやら、ミラの気が変わったらしい。安堵したのも束の間、躰をひっくり返され、閉じた大腿の間に、陽一の吐精したものを塗りたくられた。
「なにっ?」
「挿れる楽しみは、また今度にとっておきます……でも、」
ミラは陽一の腰を掴み、大腿の合間に灼熱の塊をねじこんできた。
「ふぁっ!? やめろって……はぅっ!」
止める間もなく、ミラは、陽一の太腿を使って抽挿 を始めた。
熱くて長大なものが股間を貫き、ずしりとした睾丸が尻にあたる艶めかしい衝撃と共に、淫らな音をたてる。
「だめぇ、やぁっ!」
陽一はせっぱつまった声をあげた。身をよじろうにも、腰を押さえつけられ、逃げられない。
何度も、何度も、何度も、打ちつけられてしまう。自分とは思えぬ甘い喘ぎ声、腰のぶつかる音が脳天に響く。
熱い飛沫が尻から背中にかかった時、ようやく彼が果てたのだと判った。
これでようやく終わり……僅かに安堵したものの、あられもない下半身に、あまりにも淫らな行為に耽ってしまったことに、陽一はショックを受けていた。
「陽一? ……泣かないでください」
ミラは宥めるように優しくいったが、陽一は顔をあげられなかった。瘧 にかかったように身を戦慄 かせながら、唇を噛み締めている。
「そんなに噛み締めたら、唇に傷がつきますよ……陽一、もうしませんから……」
優しいリズムで背中を叩かれていると、陽一は、気だるい疲労に負けて、重い瞼が閉じがちになる。深々と息を吸い、ゆっくり吐きだした。そのまま……ふっと糸が切れたように躰を傾けた。
「おっと」
ミラは陽一を抱き留め、意識のない顔を覗きこんだ。
やりすぎた。
途中で気づいていたのに、なぜ、ここまで夢中で貪ってしまったのだろう?
涙に濡れた頬を指でぬぐってやりながら、ミラは、奇妙な潮が魂に満ちるのを感じていた。
陽一を精魂尽きるほど吐精させ、快感を与えたことに、その精を貪り、独占していることに、この腕のなかで彼が眠っていることに……満足している。とても。
深い充足感を味わいながら、汗と体液に塗れた陽一を清めてやった。そうした配慮をしていることにもまた、新鮮な気持ちと満足とを味わう。
鳥籠の配置を元に戻し、陽一を半二階の寝台に横たえると、ミラも隣に寝転んだ。
ただ並んで横になる行為を不思議に思うが、立ち去る気になれない。何をするでもなく、寝顔を見守ってしまう……奇妙な思いに捕らわれたまま、ミラはしばらくそうしていた。
人にはいえぬ、下半身事情について。
ここのところ、誰かさんのせいで、欲求不満が高められているのだ。悪魔の誘惑、蕩けるようなキスと吸血のせいで、困った事態に陥っている。
(……最近、抜いてなかったしなぁ)
健全な男子高校生なのだから、発散するのは自然なことなのだが……鳥籠で
そんなわけで、椅子に座って悶々としていたのだが、吐きだすことに決めた。そういう気分なのだ。
紗を引いて湯をだすと、いい感じに音が紛れる。服を脱いで浴槽の縁に腰かけ、目を閉じてリラックスし、自分の息子を手で扱いていると……脳裡にミラの顔が思い浮かんだ。
「え?」
思わず、目を開けてしまった。
よりによって、なぜ、ミラのことを思い浮かべたのだろう?
気の迷いだといい聞かせて、再び目を閉じるが……ミラの余映が消えない。形の良い唇……触れられた感触を思いだしながら、指を滑らせると、興奮がいや増した。湯の音。心臓の音。熱が、迸る。
「陽一」
いよいよ幻聴まできこえる。陽一はうっすらと目を開け……ぎょっと目を見開いた。
浴槽の傍にミラが立っている。彼は
陽一は慌てて手で股間を隠したが、いまさらどんな弁明も不可能だ。
気まずげに押し黙る陽一の傍に、
「いい匂い……」
そういって、ミラはゆっくりした動作で屈みこんだ。覗きこむように見つめられ、陽一はごくりと唾を呑みこんだ。
「
「は?」
困惑を顔に浮かべる陽一に、ミラは妖しく笑みかけた。
と、浴槽やシャワースタンドが消えて、豪奢なベッドが唐突に現れた。
「わぁっ」
腕を引かれて、くるりと躰を反転させられた。背中がミラの胸にあたる。彼は後ろから不埒な手を伸ばし、内腿を撫であげた。
「うわっ、何すんだ馬鹿」
焦って、股間をまさぐる腕を掴むが、ミラは少しも怯まない。片手は胸をまさぐり、小さな突起を指で掻く。
「ッ、やめろ! マジでやめろ!」
「気持ちいいい?」
「冗談、やめろって……ミラッ!」
ごまかしようのないほど勃ちあがった屹立を、ミラは輪にした指で巧みに扱いてくる。
「うわぁっ、触んな! ……んっ」
こんなこと、いけないのに……そう思っているはずなのに、耳元で媚薬のように息を吹きかけられると、脳髄まで痺れた。
「気持ちいい?」
耳元で囁かれると、ふわふわする。
「……うん」
陽一は、夢見るような声で返事をしていた。掌を優しく頬に押し当てられ、振り向かされる。そっと唇が重なり、ミラの舌が入ってくると、悦びのため息を吐いた。苺のような甘い果物と、ミラの交じりあった、素晴らしく蠱惑的な味がして、脳髄が痺れる。
「ん……」
キスをしながら肌を愛撫され、あまりの心地良さに陽一は喘いだ。押し倒されても抵抗せず、彼の肩をそっと掴んだだけだった。
「かわいい、陽一……」
甘く囁いて、ミラは唇をふさいだ。表面を優しく刺激しながら、とじた唇を舌で突いて、その先を求める。ほころんだ隙間から舌を挿しいれ、引っこんでいる舌を搦め捕り、すすりあげた。
「あ、ふぅ」
甘く貪られながら、股間を膝で刺激すれ、陽一は息も絶え絶えに呻いた。
「ぁ、ん……っ」
ようやくキスが解かれたと思ったら、彼の唇が耳朶に触れた。思わずため息を吐いて首を傾けた。柔らかく耳を食まれ、舌を挿しいれられると、躰の中心をぞくぞくとした快感が這いあがってきた。
「ふぁ……っ」
烈しく興奮して、感じいった声が漏れてしまう。ミラは耳から顎へと唇を滑らせ、首筋を啄みながら降りていき……鎖骨のくぼびにくちびるを押し当てた。さらに顔をさげていき、感じやすく硬くなった乳首を口に含んだ。
「んぁっ……あ、やぁ……」
焼けつくような熱さと、嬲るような舌の動きに翻弄されて、陽一は喘ぎながらミラの頭を掴んだ。そっと吸われて歯をたてられると、下腹部がどくんと脈打った。柔らかく吸われながら、彼の手が胸からしたへと滑り落ちていくのを感じていた。
感じやすい性感帯を撫であげられ、陽一は腰を引かせたが、拒もうという意志はなかった。みずから足を開いて、もっと欲しいとねだる。
「……気持ちいい?」
ミラは耳元で囁きながら、優しく陽一自身を握り、蜜を絞るように扱いた。
「ふぁっ、ひぅ……あ、あ、」
まるで小動物を愛玩するような指技に、陽一は喘がされた。自分でする手淫とはまるで違う、信じられないほど巧みな指遣いに、しとどに濡れた。
熱病に
「嘘っ」
焦って逃げようとするが、強い力で腰をおさえつけられてしまう。
「ミラ? まさか舐めない、よな……?」
怯えたように問いかけると、ミラは、美貌にうっとりしたような笑みを浮かべ、吐精して濡れた陰茎に顔を寄せた。
「ひぁっ、やめろ!」
髪を掴んで引き剥がそうとするば、ミラは躊躇なく顔を寄せて、陰茎に舌を伸ばした。柔らかな尻たぶを手で鷲掴み、尻の丸さを愉しむように卑猥に揉みしだきながら、陰茎に舌を伸ばした。
「あふぅっ! ちょっ……んぁっ……あぁ……んっ」
陽一は弱弱しい声で啼いた。先端から腰が、さらに全身が、甘い蜜となってとろけていくように感じられた。
長い指が、尻たぶの割れ目に食い込み、いいようのない焦燥に駆られた。
とんでもない事態なのに、ミラの口内で股間は昂り、はち切れんばかりに膨らんでいる。そこから伝わってくる悦楽に、脳髄がとろけてしまいそうだった。
ミラは陽一の両足を抱えこんだ。立て膝の姿勢に足をもちあげ、両足を大きく割り開いた。そうして顔をうずめて、大胆に舌を這わせた。
「あぁッ!」
陽一は内腿をひくつかせ、無意識に力をこめてミラの顔を手挟んだ。熱い咥内に包まれ、陰茎に舌が絡んできた。鈴口を舌に嬲られ、粘度を増していく。
「あっ……んぅ、やっ……ぁん」
熱い。
ミラにしゃぶられて、股間がかつてないほど
「んぁっ……だめ、だってぇっ……汚いっ」
口では拒みながら、背中を弓なりにして、強烈な愛撫に応えるように腰を振るわせる。
「汚くありませんよ、すごく美味しい……僕の
吸われ、舐められて、陽一の理性は崩壊寸前だった。高められた快感がはじけて、二度三度と躰が痙攣し、精が迸った。
「あぁ、嘘……と、とまんな……ぃ」
今までだしたことがないほど大量の精だ。その全てを、ミラは頬をすぼめるようにして吸いあげ、さらに吐精を促すように、舌を埋めこむようにして穴を突いてくる。
「ん……我慢しないで……もっとだせるでしょう……?」
陶然とミラが囁く。
いつ終わるとも判らぬ、淫靡な水音が鳥籠の天蓋に反響している。陽一の混乱は極まり、容赦のない愛撫から逃げようとすると同時に、局部をいっそう押しつけようとしていた。
「あぁっ――」
あれほどの量を吐きだしたというのに、高められた快楽が再び爆発した。目の奥で白い光が炸裂し、頭のなかが真っ白になる。悦楽の奔流に烈しく身を震わせ、怒張したものが、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっと精液を噴いていた。
「……んぅっ……ぁ……あぁ……ん……っ」
陽一は、みっともないくらい甘い声をだしていた。
ミラは精液をせがむように陰茎を舐め、しゃぶり、舌を這わせている。
「あ、んぅっ……も、でないっ……離してぇっ」
悲鳴をあげかけた時、ミラは身を引いた。
快楽の波が引いていき、陽一はおずおずと視線を向けた。魔性の瞳と遭い、ぎくりと強張る。艶めいた美貌は、欲情した雄の顔をしていた。
行為をやめたのではなく、次の
怖い。
犯される――未知への恐怖が膨れあがり、喉が締めつけられるような気がした。
「ふうぅっ……もう無理、やめて……お願い……っ」
恥も外聞もなく、子供みたいに涙まじりの懇願だった。
「“お願い”ですか?」
「うん……」
陽一が弱々しく頷くと、ミラは仕方がなさそうに躰を起こした。
「……仕方がありませんねぇ」
どうやら、ミラの気が変わったらしい。安堵したのも束の間、躰をひっくり返され、閉じた大腿の間に、陽一の吐精したものを塗りたくられた。
「なにっ?」
「挿れる楽しみは、また今度にとっておきます……でも、」
ミラは陽一の腰を掴み、大腿の合間に灼熱の塊をねじこんできた。
「ふぁっ!? やめろって……はぅっ!」
止める間もなく、ミラは、陽一の太腿を使って
熱くて長大なものが股間を貫き、ずしりとした睾丸が尻にあたる艶めかしい衝撃と共に、淫らな音をたてる。
「だめぇ、やぁっ!」
陽一はせっぱつまった声をあげた。身をよじろうにも、腰を押さえつけられ、逃げられない。
何度も、何度も、何度も、打ちつけられてしまう。自分とは思えぬ甘い喘ぎ声、腰のぶつかる音が脳天に響く。
熱い飛沫が尻から背中にかかった時、ようやく彼が果てたのだと判った。
これでようやく終わり……僅かに安堵したものの、あられもない下半身に、あまりにも淫らな行為に耽ってしまったことに、陽一はショックを受けていた。
「陽一? ……泣かないでください」
ミラは宥めるように優しくいったが、陽一は顔をあげられなかった。
「そんなに噛み締めたら、唇に傷がつきますよ……陽一、もうしませんから……」
優しいリズムで背中を叩かれていると、陽一は、気だるい疲労に負けて、重い瞼が閉じがちになる。深々と息を吸い、ゆっくり吐きだした。そのまま……ふっと糸が切れたように躰を傾けた。
「おっと」
ミラは陽一を抱き留め、意識のない顔を覗きこんだ。
やりすぎた。
途中で気づいていたのに、なぜ、ここまで夢中で貪ってしまったのだろう?
涙に濡れた頬を指でぬぐってやりながら、ミラは、奇妙な潮が魂に満ちるのを感じていた。
陽一を精魂尽きるほど吐精させ、快感を与えたことに、その精を貪り、独占していることに、この腕のなかで彼が眠っていることに……満足している。とても。
深い充足感を味わいながら、汗と体液に塗れた陽一を清めてやった。そうした配慮をしていることにもまた、新鮮な気持ちと満足とを味わう。
鳥籠の配置を元に戻し、陽一を半二階の寝台に横たえると、ミラも隣に寝転んだ。
ただ並んで横になる行為を不思議に思うが、立ち去る気になれない。何をするでもなく、寝顔を見守ってしまう……奇妙な思いに捕らわれたまま、ミラはしばらくそうしていた。