とある星の旧歴史。
地下世界に
棲む
疫癘の妖魔は、境界の門を開き、
現世を支配しようと目論んだ。
しかし、妖精王ユトが命を懸けて封じこめた。
最悪の
禍が噴きあがらぬよう、その土地に遙かなる塔を築き、魔を
祓う黄金、
宇宙樹、原始の妖精王の聖遺物により、厳重に結界を敷いた。
時は流れ――
いつしか塔は、
黄金塔と呼ばれるようになった。
そこには、目も眩むような旧世界の金銀財宝が眠っているという噂が、
波濤万里を越えて、広く人口に
膾炙したのである。
塔には、世にも高価な黄金、極めて貴重な動植物、妖精王の聖遺物、
智者の石、秘密の呪文を記した
魔法書、世界の■■といった、数々の伝説の秘宝が眠っているのだと……
噂を耳にした、大勢の冒険者、聖物泥棒、魔術師、啓明・秘密結社が
黄金塔に挑んだ。
だが、生還した者は一人もいない。
侵入は誰でも可能だが、入ったが最期、二度とでられない。
無数の罠、暗黒怪異、
魑魅魍魎が彼等の行く手を阻むのだ。
そして、
時間。
黄金塔で正気を保つことは難しい。彷徨うほどに精神を蝕まれ、やがて永劫に囚われてしまう。
闖入者たちの欲望、恐怖、絶望、魂の
喘鳴を
糧に、
黄金塔は妖気を孕み続けた。
悪しき力は日増しに強まり、既に
黄金塔の周囲に影響を及ぼし始めている。
青とした樹々は枯れ、生き物は死に絶え、腐敗し、川は淀んでいく……
憂慮した妖精の長たちは、
黄金塔の外から結界を敷いて、これ以上の侵入と侵食を拒んだが、もはや手遅れだった。
このままでは、
黄金塔の封印は破られてしまう。そうなれば、最悪の
禍が
現世に噴きだすだろう。
誰かが、
黄金塔に入り、囚われた魂を解放しない限り――