BLIS - Battle Line In Stars -
episode.3:TEAM - 9 -
BLIS JLG(BLIS日本リーグ)開始まであと一週間。
金曜日の夕方、遂に対戦カードが発表された。先日撮った写真もネットに公開されている。
昴と連がゲーミングハウスを訪ねると、全員がプレイルームに集まっていた。トーナメント表を眺めて、意見を交わしている。
闘うチームは全部で六チーム。
開幕戦は五月二十九日。
会場は目黒に新設された、都内最大級のイベント会場、Hevens GGGだ。
「どのチームに脅威を感じる?」
昴は連に訊ねた。
「Team Deadly Shot。あそこは、選手の入れ替えと強化合宿に成功している。xiaoは優秀のミッドレーナーだ」
TDSは去年のSummer Matchを制した優勝チームで、今シーズンにおける優勝候補だ。
xiaoはデンマーク出身のプロ選手である。EUサーバのRanked SoloQueで、スターゲート・ランクを二つねじ込んできた化物で、世界最高峰のミッドレーナーとして超有名だ。
動画配信者としても大人気で、彼がBLIS動画を配信すると、視聴者数は十万人を越える。twitchのdonateだけで月に数千万円を稼ぐトップ・プレイヤーである。
そんな超スター・プレイヤーを、TDSは高額な契約金と引き換えにチームに引き入れた。
「今のTDSはJLGの最強チームだよ」
連の言葉に、俺もそう思う、とアレックスも頷いた。
「僕はInner Infinity Impactかな」
答えたのはルカだ。
3Iは一昨年の第二シーズンの優勝チームで、去年もGrand Champion Ship(国内決勝戦)でTDSと大接戦を繰り広げている。
メンバーは前年とほぼ同じ構成で、相互理解度において他チームを圧倒している。
「昴は?」
「俺はGalaxy Eye!」
ルカの質問に昴は即答した。
「あぁ、Blakerが入ったところ?」
「そう。Challenger Series(入れ替え戦)で二部リーグから勝ち抜いてきたチームだよ。ACEの椎名さんはもちろん、アサシンのtorinは中国のプロチームから引き抜かれてきた凄腕だ。要注意だよ」
「ACE対決か」
ルカが不適に笑うと、昴もニヤッと笑った。
「負けないよ。和さんは?」
昴が声をかけると、対戦カードを眺めていた和也は顔をあげた。
「そうだな、個人的にはStylish Logic Styleに注目しているよ。あとは、俺もGalaxy Eyeを応援している」
Stylish Logic StyleはLucky Fiveと合併して、両チームのいいとこどりで再構成されたチームだ。
「昴も和也も、Galaxy Eyeを推すんだね。正直、ボロ負けすると思うけど」
二部で優勝しても、一部で通用するとは限らない。リーグ初出場のチームが、先達の洗礼を受けるのはJLGの通過儀礼といわれている。
「まぁ、全敗もありえるだろうね。でも、素直でいいチームなんだ。ファンは増えると思うよ」
「椎名さんは強いよ。リーグ経験はないけど、強敵になるかも」
昴が反論すると、和也は優しくほほえんだ。
「若手チームの台頭は大歓迎だよ。リーグを盛り上げてくれるからね」
そういって笑う和也は、本人がいうように、選手をするより、育てる方が向いているのかもしれない。
「真面目な話、俺達の脅威はやっぱり、Team Deadly ShotとInner Infinity Impactかな」
ルカがまとめると、全員が頷いた。
「その二チームには接戦を強いられる分、それ以外の試合は勝ち星をあげておきたいね」
アレックスの言葉に昴が大きく頷くと、ルカに軽く後頭部をはたかれた。
「そこは、全試合勝つ! くらいの意気込みを見せてよ。マッチアップインタビューを受けたら、全員ぶち殺す! っていってね」
「俺はどんなキャラなの……」
げんなりしながら昴がいうと、アレックスと和也が笑って、連も小さく笑った。