メル・アン・エディール - 無限海の海賊 -

17章:極光蚕白の涙 - 9 -

 それから、ティカはヴィヴィアンに教えてもらいながら、入念に後ろの準備をした。
 先ず、少し苦みのある薬湯を飲んで腸を空にし、浴室にいき、石鹸と湯で綺麗にすすいでから、甘い匂いのする香油をもみこまれた。
 始終恥ずかしくて、涙も溢れたし、何度か本気で逃げようとしたが、その度にヴィヴィアンに宥められた。
 試練を乗り越えたと思ったのも束の間、今度は寝台の上で全裸になり、四つん這いの姿勢で、後孔を弄られている。
「こんなのやだっ……もうそんなことしないで」
 上体をひねり、ティカは涙目に訴えた。ヴィヴィアンは欲に翳った瞳で、意味深長にほほえみ、
「絶対に痛い思いをさせたくないんだ……ほら、柔らかくなってきた」
「あんっ」
 ぐぷっと蕾にもぐりこんだ指は、たやすく奥まで侵入し、ティカを刺激した。指が抜けていく衝撃でまた、全身が震えた。
「おいで」
 ヴィヴィアンはティカを仰向けに組み敷くと、しっとりと唇を重ねた。おずおず開いた唇の隙間に、舌をすべりこませる。
「んぅ……っ」
 お互いを確かめあうようなキス。恐怖と緊張は和らいだが、全身が心臓になったかのようにドキドキしている。
「……指は何本入っている?」
 キスの合間にヴィヴィアンが訊ねた。ティカは、何をいわれたのかよく判らなかったが、悪戯な指が敏感な内壁を刺激すると、朱くなり、
「……二本?」
 ヴィヴィアンは微笑した。
「そう……」
 ヴィヴィアンの舌が再びゆっくりと、情事をほのめかすようにティカの口のなかに入りこんできて、ティカの体温は急上昇した。
「あ、んっ……ふ、あぁ……んっ」
 水音が立つキスに頭がくらくらする。彼の手が胸を探り始めると、身体はさざなみのように震えた。親指で乳首を愛撫され、小さな突起がそそりたつ。
「やだ……」
 ティカが胸の前に腕を交差すると、ヴィヴィアンはその手を掴んではがした。
「あっ!」
「隠さないで、見せてごらん」
 そっと囁いて、汗ばんだ首筋の曲線を唇でしたへと辿り、さらにおりていき……薄い胸に口づけた。
「ふ、うぅ……んっ……あんっ」
 硬くなった乳首を唇で挟まれ、ティカは両手の指をヴィヴィアンの後ろ髪にからめた。
「舐めちゃ、だめ」
 そういいながら、行為をせがむように、頭を胸のなかに抱えこむ。後ろを弄られながら、唇と指で乳首を愛され、ティカはびくびくと腰を跳ねさせた。
「んぁっ……」
 後ろを優しく拡げながら、ヴィヴィアンは顔をあげると、ティカの瞳を覗きこんで囁いた。
「キスしてくれる?」
 ティカの心臓は、破裂しそうなほど音をたてて鳴っていた。熱に浮かされたまま、彼がしてくれたように、想いをこめて唇を重ねた。
「ん……」
 舌をそっと差し入れると、優しく迎えいれられ、絡め捕られた。なんて心地いいのだろう……キスをしながら、指の動きにあわせて腰が自然と揺らめいてしまう。
「そのまま……」
 ヴィヴィアンはキスをほどくと、顔をさげていき、ティカの両足を割り開いた。ごまかしようがないほど角度をもった昂りに、顔を近づけ、舌を伸ばす。
「んぅっ……ああっ……ヴィー……っ」
 屹立をねっとりと舐めあげられ、えもいわれぬ悦楽に身体を貫かれた。
「……痛くない?」
 会陰えいんを指でこすられながら、内壁を指で押され、ティカは鋭く息をのんだ。危うく極めてしまうところだった。
「あ、ん……あぅっ……だめ、でちゃ……っ」
「指は何本入っている?」
「に……二本?」
 ヴィヴィアンはうっそり微笑を洩らすと、三本だよ、と囁いた。次の瞬間、雫の浮いた切っ先を熱い粘膜に覆われ、
「あぁっ!」
 ティカはのけ反った。隠微な音と共に、形の良い唇が押し広げられ、ティカのものが出入りしている。何度も、何度も……見ているだけで頭がおかしくなりそうだ。
「やぁ、んっ! ……でちゃ、離して!」
 また、ヴィヴィアンに飲まれてしまう。恥ずかしいのに、やめてほしいのに、彼は離そうとしない。
「あ、あんっ、ああぁっ……ヴィー! でちゃう~っ……!」
 絶頂の瞬間に抗おうとしたが、じゅっ強く吸われると、ひとたまりもなかった。ぶるっと腰が震えて、堰を切ったように熱い精液が迸った。
「ぁっ、あ、あ、んん~っ……」
 全身を痙攣させながら、ヴィヴィアンの口のなかで涯ててしまった。
 羞恥の極みで、ティカはヴィヴィアンの胸にすがりついた。力強い腕に抱きしめられ、引き寄せられた腰にいきりたったものが触れる。
「ッ!」
 反射的に腰を引かせようとすると、宥めるように背中を撫でられた。
「ティカ……」
 ヴィヴィアンは片手を腰から大腿へとすべらせ、両脚のつけねを指でなぞった。
「あ……っ」
 大腿に手をかけられ、ティカは目を見開いた。青い瞳に射抜かれる。彼の股間からそそりたつ性器を目にして、おののいた。見ていられず、顔をシーツに押しつけるが、頬を撫でられ、瞼を閉じそうになるのを必死に我慢した。どうにか目をあわせると、
「大丈夫だから……」
 ヴィヴィアンは止めていた手をまた動かし、優しく、だが容赦なく尻のあわいに指を押しこんだ。
「ひぁんっ」
 ヴィヴィアンはティカの尻をつかみ、身体を反らした。ゆるやかに腰を動かして隘路に侵入し、脈打つ楔を、慎重に沈めていく。
「ん、んっ」
 ティカも苦しそうだ。背を反らし、逆手でぎゅっとシーツを握りしめている。ヴィヴィアンが胸に手をすべらせると、掌のしたで乱れ打つ心臓の鼓動が感じられた。
「……ティカ、力を抜ける?」
 ティカは健気に頷いたが、まだ強張っている。ヴィヴィアンは慎重に、一突きごとに、暖かな肉胴を進んでいったが、やがて阻まれた。
「……ティカ、もう少し」
 ティカは腰をもぞもぞさせたが、きつさに変わりはない。さらに奥へ侵入するために、ティカの腰をもちあげると、ヴィヴィアンは腰を引いて入り口あたりまで戻った。不安そうに見あげてくるティカの額に、唇を落とす。
「あと少しだよ。奥まではいったら、気持ちいいところをたくさん突いてあげるから……」
 唇を重ねたまま囁き、身動きできないように押さえこんでから、奥まで押し入った。小さな悲鳴をあげたが、ティカは逃げようとはしなかった。
「は、ふぁっ」
「……入ったよ。よく頑張ったね」
 汗で張り付いた黒髪を優しくすきながら、ヴィヴィアンはティカを見下ろした。うっすら開いた唇に指をさしいれ、舌をくすぐる。
「ん……」
 口腔を指でかき回しながら、緩やかに突きあげる。ティカの声が甘くとろけてくると、速度をあげて腰をぶつけた。
「あ、あ、あんっ、ん、あぅっ……」
 ティカの身体を征服するヴィヴィアンは、このうえなく煽情的で美しい獣のようだった。優しいのに荒々しくて、ティカは自分が、荒波に翻弄される小さな小舟になったように感じられた。同時に、守られているとも感じる。絶対的な庇護のもとで、大切に愛されている。
 屹立を掌に包まれ、上下にしごかれるとティカの背は弓なりにしなった。
「いっちゃ……手、離してっ!」
 手を離させようとするが、ヴィヴィアンはやめなかった。餓えたような瞳でティカを見つめながら、手の動きを速める。
「あああぁっ!」
 蜜口からびゅくっと白濁が噴きあがると、ヴィヴィアンは優しくこすりあげ、腹に散った飛沫を指でのばした。
「……ちゃんといけたね。いい子だ」
 荒い呼吸を繰り返すティカを、とろけそうな瞳で見つめている。かと思えば、体を伏せて顔を下腹部に近づけた。
「……や」
 思わず頭を押さえたが、彼は構わずにティカの腹に散った精液を舐めあげ、そのまま性器を口に含んだ。
「あぁんっ! またっ……ヴィ、だめっ、汚い」
「ん……汚くないよ。ティカの味がする」
「ふぇっ」
「俺で気持ちよくなってくれた証拠だろ? だから……全部舐めたいんだ」
「でもっ……や、ぁ」
 ティカは見悶えた。淫靡で粘着な水音が、あらぬところから聞こえてくる。絶頂を終えたばかりなのに、甘美な刺激に再び昂ってしまいそうだった。
「だめぇっ……!」
 極めたのに、ぐぐっと緩く勃ちあがっていく。ヴィヴィアンは口を離してティカをみおろすと、再び両足を掴んで大きく割り開いた。
「あっ!」
 反射的に逃げようとするティカの身体を引きずり戻し、隘路に昂ぶったものを押しあてた。熱と緊張をはらんだ視線が交じわる。
「挿れるよ」
 宣言のあとに、容量のあるものがティカのなかに挿入はいってきた。
「ああぁぁっ!!」
 自分とは思えぬ高い声が迸る。ティカはシーツにしがみついて見悶えた。恥ずかしいが、うねる熱に翻弄されて、自分では制御不能だった。
 さっきよりも激しく、腰のぶつかる音がする。奥を穿たれて、感じる一点を亀頭がかすめると、ティカはびくんと跳ねた。
「ふあぁんっ!」
 ヴィヴィアンはきらりと瞳を輝かせ、そこを集中して突きあげた。
「ここ?」
「だめっ、ヴィー!」
「……良さそうだね」
「あぁ、んっ! そこ、だめっ……や! あ! んぁっ! ……ん、あっ、あんっ!」
 突かれれるたびに、ティカは声をあげた。自分でも聞いたことのない声だった。訳も判らず涙が溢れるが、ヴィヴィアンはやめてくれない。それどころか、いっそう激しく突きあげた。
「やぁっ、ヴィ、やめてっ……も、もう……んぁっ、無理ぃ!」
 ヴィヴィアンは体を倒すと、ティカの唇を塞いだ。優しいキスを繰り返しながら、ゆるやかに突きあげる。ティカは夢中で首に両腕を回し、しがみついた。
 ぐんっと体がもちあがり、ヴィヴィアンの膝をまたいで座るような恰好になった。
「な、なに」
 おののくティカをヴィヴィアンはぎゅっと抱きしめ、
「大丈夫、首に手を回して……そう、捕まっていて」
 尻を掴んで割り開き、下からティカを突きあげた。その衝撃に、ティカの視界に星が散った。
「あぁッ! あっ、あぅっ、んっ、あっ!」
 おかしくなりそうだった。屹立がぶるぶる震えて、絶頂の波が近づいてくる。さっき達したばかりだというのに。
 乳首を弄られながら突きあげられた瞬間、ティカはのけ反った。
「ああぁッ」
 光が炸裂して、白や朱金の火花が散り、世界が燃えあがる。開いた胸に唇が落ちて、尖った先端をきつく吸われた。
「あぁ、だめ、ああん、や、ぁ、いっちゃ、ぁ……っ……ん」
 もはや白濁はなく、透明な飛沫が僅かに飛び散っただけだが、壮絶だった。
「……ん、上手にいけたね」
 ヴィヴィアンはうれしそうに笑うと、おもむろに腰を揺らめかせた。
「……え?」
 困惑するティカを見つめて、微苦笑を浮かべた。
「ごめん、これで最後にするから」
 そういってティカを押し倒し、十字に交わるようにして、ティカの片足を高くもちあげた。
「もう、やだぁ……っ」
 ついに泣き始めるティカにキスをしながら、ヴィヴィアンは困ったように笑った。
「ああ、泣かないで……ごめん、もう少しだけつきあってくれる?」
「ふぅぅ……っ」
 ティカが頷くと、ヴィヴィアンはほほえんだ。ほっとしたのも就かぬ間、すぐに揺さぶられて、またしても何も考えられなくなった。
「や、ああ、ん、ん! あんっ」
 隘路を深く、強く突きあげられ、ひっきりなしにあえぎ声が口からこぼれる。止めたいけれど方法が判らない。熱くてたまらない。
 ヴィヴィアンは強く腰を打ちつけ、最奥に熱い飛沫がかけられた。
 それが何であるか、ティカにも判った。ヴィヴィアンもなかで涯てたのだ。彼に征服されたのだとはっきり判り、ティカは味わったことのない充足感を覚えた。
 ぐすぐすと泣いているティカを見つめて、ヴィヴィアンは少し心配そうな顔で、頬を撫でた。
「……痛い?」
 ティカはかぶりを振った。青い瞳をのぞきこみ、おずおずとほほえんだ。
「嬉しいんです、やっと、結ばれたから……」
 ヴィヴィアンは双眸に狂おしい光を浮かべて、身を倒し、ティカをぎゅっと抱きしめた。
「俺も嬉しいよ。ありがとう、ティカ……愛している」