アッサラーム夜想曲

織りなす記憶の紡ぎ歌 - 13 -

 肉づきのよい胸元に顔を寄せたジュリアスは、そっと唇を落とした。啄むようなキスを落としながら顔をさげていき、先端にふぅっと息を吹きかけた。
「っ」
 危うく迸りかけた嬌声を、光希はなんとか堪えた。ジュリアスの上品な唇が、光希の肌に触れて、優しく愛撫していることが信じられない。見ていられずに目を瞑った瞬間、先端をそっと口に含まれた。
「あんっ」
 あられもない声が口から飛びだした瞬間、ばっと口を手で押さえた。とてつもない羞恥に見舞われる。男なのに、胸を弄られただけなのに、そんなところで感じるなど考えたこともなかったのに、たった今の刺激だけで昇り詰めてしまいそうだなんて信じられない。
「酒を飲んだせいか、いつもより赤く染まっている……どこもかしこも、美味しそうですよ」
 おずおずと光希が視線をあわせると、目前に甘く整った美貌があって、心臓が壊れるかと思った。満足そうな笑みを浮かべたジュリアスは、再び顔をさげて、触れるだけの優しいキスを胸に落とした。繰り返される優しいキスに油断していると、唇でそっと乳首を挟まれた。
「ん……っ」
 舌先で先端をねぶられ、軽く引っ張られながら、ちろちろと舌先でくすぐられると、甘い疼痛とうつうは、腰にまで達した。
「んぁッ……ふぅ……ッ」
 先端をちゅうっと吸われて、背筋に電流が走った。そのまま甘く噛まれると、ぴんと伸ばした足の指先がきゅっと丸まってしまう。
(どうしよう、どうしよう、乳首だけでイきそう……ッ)
 混乱している光希を見て、ジュリアスは、噛みしめている光希の唇を長い指でなぞった。唇の輪郭を優しく愛撫し、そっと口内へ指を潜らせる。
「大丈夫、怖くありませんから……指を吸ってみて」
 導かれるがまま、光希はおずおずと舌で指に触れてみた。
「ん……」
「そう。いい子」
 褒められたような気がして、光希は勇気をだしてみた。忍び入ってきた指に、そっと舌を絡ませてみる。正解、というように口腔の柔らかい部分を指でくすぐられ、嬉しいと感じたものの、すぐに羞恥に見舞われた。濡れた音が立ち、途方もなく、いやらしいことをされている気分にる。酒よりもずっと濃密な、淫蕩いんとうな空気に酔ってしまいそうだ。
「光希は口のなかも、敏感ですよね……」
 耳朶に囁かれて光希は全身が燃えあがったように感じた。言葉は判らなくても、愛撫するような声の響きに頭がくらくらする。零れそうになる唾液を呑みこむと、自然となかをまさぐる指を吸いあげてしまう。そっとジュリアスを見ると、欲に翳った瞳に射すくめられた。
「堪らないな……」
 舌を弄ばれながら、情事を連想させるように上下に抜き差しされて、光希は抗議の視線を送った。指に歯を立てると、ジュリアスは愉しげな笑みを零した。
「かわいい……いとけない貴方に、口淫をさせているようだ」
 口腔を悪戯されながら乳首を指で弾かれて、光希はびくんと跳ねた。
「んぅっ!」
 反射的に身をよじろうとしたが、下肢を強く押しつけられて逃げられない。布越しに猛った熱を感じて、思わずジュリアスを見た。欲の滲んだ青い瞳に、全身がぞくっと震えた。
「光希……」
 ジュリアスは硬直している光希の頬をするりと撫であげ、腕を撫でおろし……ゆっくり顔をさげていった。
 乳首を柔らかく吸われて、光希は背をしならせた。唾液を纏って濡れた指に乳首を弄られながら、もう片方を熱い舌で舐られる。
「あぁっ」
 下半身の昂りがもどかしい――無意識に内股を擦りあわせる光希に気がついて、ジュリアスは顔をあげた。そのまま上気した顔をじっっと見おろし、悩ましげに息を吐いた。
「はぁ……やっぱり欲しい……いい?」
 ねだられていることは判ったが、光希は何もいえなかった。自分もそうして欲しいと望みつつ、頷いたが最後、未知の世界にどこまでも落ちていってしまいそうな気がした。
 無言にこめられた戸惑いを察しながら、ジュリアスは光希のふくよかな腹を撫でた。請うように、優しく、味わうように触れながら、ゆっくりと下肢に手をもぐらせた。
「“待って”」
 光希は咄嗟に腕を突きだしたが、ジュリアスは止まらなかった。今度は後ろへ逃げようとしたが、下着の奥までも潜りこんだ指先に先端を撫でられてしまう。
「ちょっ……」
 焦る光希を舐めるように見下ろしながら、ジュリアスは蠱惑的にほほえんだ。
「……濡れていますね」
 美しく優艶だが、危険を孕んだ笑みだ。逃げなくては――理性が囁くが、魅了されてしまって動けない。見惚れている間に、手際よく服を脱がされてしまった。
「ジュリッ」
 体に腕を巻きつける光希に、ジュリアスは手を伸ばした。
「触れますよ?」
「“だめだって”」
 触れてくる腕を掴むが、びくともしない。腹を打つほど反り返った屹立を、大きな掌に包まれてしまう。
「んんっ」
 くちゅりと濡れた音が立ち、光希は期待と怯えが胸に拡がっていくのを感じた。引き締まった肩に手を置いたものの、押し退ける力が湧いてこない。
 抵抗が弱まったのを感じ、ジュリアスは本格的に手淫を始めた。中心を上下に扱きながら、もう片方の手でやわやわと蜜袋を揉みこむ。
「いやぁ、あ、ぁッ」
 あまりの快感に、光希は大きく目を瞠った。淫靡に指がなぞりあげる度に、腰が跳ねあがる。先走りの蜜を飛ばしながら、背を弓なりにして喘いだ。
「久しぶりだから、溢れてきますね……たくさん、良くしてあげる」
 赤く腫れた性器に、ジュリアスは息を吹きかけた。慄いた光希はそこを隠すように手を伸ばしたが、それよりも早く口に含まれた。
「ちょッ!?」
 性器を舐められている――あまりの光景に、光希は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。