アッサラーム夜想曲

第4部:天球儀の指輪 - 38 -

 テラスからベッドに移動しても、貪り合うような口づけは続いた。キスの合間に、手は夜着の中へ忍び入り素肌を這う。

「っ、は……ん……っ」

 身体に熱が灯りゆくのを感じながら、ふと明日も軍議があるな、と少し冷静に思う。
 いつものように抱かれては、明日ジュリの顔を見られないかもしれない……。

「ジュリ……」

「ん……?」

「明日も軍議……ん……っ」

 下肢を押さえつけられながら、乳首を抓まれる。痛気持ちいい快楽が走り、言いかけた言葉は中途半端に切れた。
 前をはだけさせられ、露わになった乳首に吸いつかれる。

「待っ……」

 静止の声も虚しく甘噛みされた。背を仰け反らせると、今度は宥めるように舌先でつつかれる。快感に負けて喘がされてしまう。
 意地が悪い。さっきは無理にでも言わせようとしたくせに……。
 拒否の言葉を言わせまいと、巧みに快楽で責めてくる。そうと判っていても、拒み切れない。
 ジュリは先に脱いで全裸になると、光希の服にも手をかけてきた。観念したように腰を浮かして協力する。
 目が合った瞬間、軽く睨むと甘い眼差しに受け止められた。ジュリはずるい……。
 下着を下げられると、昂った中心がぶるんっと勢いよく飛び出した。
 そこを凝視されて、顔は熱くなる。つい隠すように股間に手を下ろすと、手首を取られて引き剥がされた。しかも濡れた切っ先に、綺麗な顔が落ちてゆく……。

「ジュリ……んぁっ!」

 ぱくりと咥えられて、熱い口内の中で亀頭を転がされた。屹立を扱かれながら、尖らせた舌で蜜口をつつかれる。
 あられもない嬌声がほとばしりそうになり、慌てて唇を噛みしめた。
 窄まりをそっとつつかれ、光希のぬめりを絡めた指先を、浅く潜らせてくる。いやらしく指を抽挿されながら、前を蕩かされると、声を堪えることは難しかった。
 あっけなく昇りつめて、殆ど叫ぶようにく。

「は、ん……っ、あ――っ!」

 肩で息をして、虚空を見つめていると、ごくり……と光希の吐きだしたものを嚥下する音が耳に届く。
 余韻に震えてる間も、蜜口をぢゅぅっと吸われて、最後の一滴まで啜り上げられる。

「あぁ……っ」

 背中は大きく弓なりにしなった。

「ん、可愛かった……」

 ジュリは力を失くした中心に、なおも舌を這わせている……。熱い舌と唇に包まれて扱かれるうちに、達したばかりの性器が弱々しく反応を見せ始めた。
 身体を繋げる前に、ジュリはいつも念入りに光希の準備をする。愛されている幸せを感じる反面、刺激を制御されて焦らされているとも感じる。
 欲望を素直に口にするのは苦手なので、代わりにジュリの柔らかな金髪を軽く引っ張る。
 熱を帯びた青い眼差し――
 ジュリは察したように上体を起こすと、昂りを見せつけるように扱き始めた。更に雄々しく猛らせると、光希の足首を高く持ち上る。
 視姦するような眼差しを意識して、尻の窄まりは自然とひくついた。長い指で解すように、そこを撫でる。
 香油を使って入り口を解すと、長い指を奥まで差し入れる。指を前後に動かしながら、前立腺を刺激して光希の身体を蕩けさせる。
 何本も指が出入りするようになると、熱い性器を後孔に押し当てる。ぬめりが窄まりを濡らし、ぐぐっと切っ先が挿入はいってくる――。

「あ、あ! あぅ……ん、は……っ」

 熱く逞しい猛りが、中を満たす――震える襞を、ぬめりを帯びた充溢じゅいつで開かれていく。奥を探られるのが怖くて、自然と身体は逃げようとしてしまう。

「あ……っ」

 腰を掴まれては引き戻された。
 ゆったりとした腰使いで、光希の様子を見ながら甘く擦り上げる。
 しなやかな筋肉のついた腕に触れると、青く光彩を放つ瞳に見下ろされる。熱に浮かされた顔が降りてきて、身体を繋げる合間に唇を塞がれた。

「……ん……っ」

 舌を絡め合いながら、身体が浮くほどに強く、突かれ、引き抜かれ、再び奥まで突き上げられる。
 抽挿のたびに、粘着な水音が弾けた。
 勃ちあがった性器に指をかけられ、亀頭を親指の腹で擦られた瞬間、またしても軽い絶頂を迎えた。
 肉襞がうごめきき、ジュリを締めつけてしまう。
 どくり、と中を貫いたジュリの熱が弾けた。
 最奥を穿たれて、光希も絶頂を駆け上がる。もはや何度目か分からぬ放熱に、全身を震わせて、薄い蜜を飛び散らせた。

「あっ……あ、あ――っ!」
「……ッ――!」

 断続的な吐精は長く続き、その度に強い快感に支配される。
 ジュリは余韻を楽しむように、光希の中に居座り続け、甘く腰を揺らし続ける……。
 朦朧としていると、ふっとジュリの微笑する気配がした。

「あ、ぅ……」

「光希……」

 中を抉られながら、全てを吐きだした性器を、つぅと撫でられた。びくんっと反射的に勃ちあがる。

「も……無理……」

 喋るのも億劫で、代わりに首を左右に振ってみせたが、ジュリには伝わらなかった……。