昴は、家に帰ってシャワーを浴びた後、少し迷った末に、今日の試合のリプレイを回した。
 試合で疲れているし、反省は明日にして今夜は休もうと思っていたが、眼を瞑ったところで、試合のことを考えてしまう気がする。
 自分のプレイを見直していると、いろいろと気づくことが多い。あの時こうすればよかった、と幾つも反省箇所が見つかる。

「……はぁ」

 自分のプレイのダメさに、落ち込まされる。
 三回見直したところで、飲み物を取りにリビングにいくと、連はローソファーでテレビを見ていた。今日の試合を見ていたらしい。

「一緒に見る?」

 テレビに視線を注ぐ昴に向かって、連は優しく声をかけた。

「……うん」

 ぎこちない空気はまだ多少残っているが、試合の意見交換をしたくて、昴は連の隣に腰を下ろした。

「……TDSはとにかくローテーションが早いよね。いつでも、相手の判断の一歩先をいく感じ」

 他の試合を見ていた時から思っていたことだ。実際に戦ってみて、その実感は増々強くなった。

「序盤のローテーションが速いね。アサシンは育成ファームよりゾーンの奇襲に集中するから、こっちがPower Spike(試合中に最も火力を出せる時間帯)を迎える前に有利をとられる」

「うん。序盤からガンガン攻めてくるよね。奇襲対策は万全を期したつもりだったんだけどなぁ……」

 Team Deadly Shotのスピードに負けないよう、序盤からPower Spikeを迎えられるディオスをPickしたのだが、速さで負けて、最後まで有利を取れずに負けてしまった。

「そもそも、同じ土俵で戦ったことが間違いだったのかもしれない」

「どういうこと?」

「無理に序盤で競わなくていい。メタに拘らず、得意なファーム型ディオスをPcikして、序盤さえ凌げば、後半は敵のアサシンが機能しなくなる。Power Spikeを迎える俺達の方が有利だ」

「そうだけど、あの猛攻を三十分も凌ぐのかよ」

「序盤は自陣に乗り込まれなければ御の字、とにかく衝突を避けて、下がり気味でプレイする」

「ふーむ……」

 確かに、アリかもしれない。昴が最大パフォーマンスを出せる戦略は限られている。短い期間に付け焼刃な対策を練るより、得意なディオスと戦術で応用を利かせた方が強いかもしれない。
 考えこんでいると、頬を撫でられた。連を見て、瞬時に顔が熱くなった。

「よせよ」

 視線を逸らしてソファーから立ち上がろうとする前に、腕をとられた。仰ぐように、強い視線に射抜かれて、昴は動くことができなくなった。

「……キスしてもいい?」

「ッ」

 BLISの話をしていたのに、何を考えていたのか、思考が吹き飛んだ。端正な顔がゆっくり近づいてくる。
 そっと唇が重なり、深くはないが、温度を分け合うように唇をしっとりと合わせた。
 長くも短くもないキスが終わり、顔を離しても、連は昴の頬を愛おしそうに撫でた。

「……あのさ、前から思ってたけど、連は心配しすぎだよ。だって、俺だよ? 俺ごときに、ルカやアレックスが本気で迫るわけないじゃん?」

「そういう問題じゃない。遊びだろうがなんだろうが、昴が迫られている状況が嫌なんだよ」

「いつも連は飄々としてるから、ちょっと表情が表に出るだけで、おっ! って周りはなるんだよ。今度、俺がいじられてたら、無視してみろよ。あいつら、きっとすぐにやめるぜ」

「だから、昴がいじられるのが嫌なんだよ。なんで判らないの」

「いや……だって、じゃれてるだけじゃん」

 困惑気味に昴がいうと、連は怖い顔をした。

「へぇ、じゃれてるだけ? 抱きしめられて、キスされているのに?」

「さすがにもうキスはされないよ。や、髪にはされたけど……まぁ、ちょっと絡んでくるだけ」

「ちょっとねぇ」

 連の眼が据わった。あ、と思った瞬間には、ソファーに押し倒されていた。

「連……」

 頬を優しく撫でられ、唇の輪郭を親指が象るようになぞりあげる。
 甘い仕草に、心臓がドキドキし始めた。連の切れ長の瞳には、情欲がきざしている。
 頭を優しく撫でて、愛おしそうに指で髪を梳くと、そっと唇を落とした。なぜか、荒々しいキスより、穏やかで慈しむような仕草の方が恥ずかしく感じる。

「……どう? 抱きしめて、髪にキスをしただけだよ」

 真っ赤になっている昴を見下ろして、連は淡々と答えた。

「お前なぁ!」

 いろんな感情がい交ぜになり、震える昴の頬を、連は両手で包み込んだ。言葉を紡ぐ前に、ぴたりと唇が重なる。

「んぅッ」

 甘く口づけられて、言葉を封じられる。強く舌をすり合わせられて、思考がぼやけた。
 身体に火がつき始め、夢中で連にしがみついていると、愛おしそうに髪を撫でられた。
 連の手が昴のシャツの中にもぐりこみ、掌で直に触れてきた。身体の芯がぞくっとふるえる。掌は腹から少しずつ上へ這いあがっていき、指先が突起をかすめた。

「あっ」

 反応する昴の媚態を眺めながら、連は指の腹で、しこった乳首を押し潰した。

「んあ、ぁッ」

 腰がびくんと跳ねて、思わず手を振り払おうとしたら、ソファーに縫い止められた。覆いかぶさるように、唇を奪われる。

「ッ」

 口腔こうこうを貪られながら、身体のそちこちを愛撫される。特に敏感に反応してしまう乳首は、何度も指でこすられ、摘まれた。

「昴……」

 烈しい口づけの後に、顔を離した連は、昴の濡れた唇を指でぬぐった。
 強い眼差しから逃げられない。
 涼し気な瞳は欲に濡れて、蒸気した昴の顔を映している。強く求められて、昴は答える代わりに、連の首の後ろに腕を回した。軽く引き寄せると、連は顔を伏せて、昴の瞼、鼻、顎の先に啄むようなキスを繰り返した。優しい唇は、少しずつへ下へと降りていく。
 首筋、鎖骨に触れて、ゆっくり胸へと降りていき……甘い刺激を期待して、乳首に息がかかっただけで昴の全身は切なく震えた。

「あぁっ」

 膨らんだ乳首をやんわりと唇で挟まれ、ちゅくちゅく、と吸われる。わざと濡れた音を立てながら、連は執拗に昴の胸を舐めた。

「いいよ、連……もぅッ」

 愛撫をやめさせようと肩を押すと、尖った先端を甘噛みされた。

「あッ」

「……かわいい、昴。顔も胸も真っ赤になってる」

「――ッ」

 恥ずかしくて、連の顔をまともに見ることできない。顔を背けると、連は再び昴に覆い被さった。色づいた乳首に吸いついて、ひとしきり昴を啼かせた後、啄むように肌を吸いながら、腹の下へと顔を下げていく。ハーフパンツをずらして、下着の上から膨らんだ性器に口づけた。

「っ」

 強烈な快感に、昴は息を呑んだ。連はボクサーパンツの膨らみを優しく撫でると、亀頭を探し当てて、先っちょを指でひっかいた。

「はぅっ!」

 一際甲高い声が出て、昴はパッと口を手で押さえた。連はほほえむと、昴の額にかわいい音を立てて口づけた。

「いいよ、我慢しなくて……感じてくれて嬉しい」

 悪戯に乳首を指で転がしてから、連は下着を少しだけずらして、昴の屹立を外へ出した。

「……とろとろ」

「う、違っ」

 手で前を隠そうとすると、指ごと屹立を舐められた。

「れ、連ッ」

「……手をどけて」

 上目遣いに命令されて、昴の下肢に熱がたぎった。理性と欲望がせめぎ合い、そろそろと手を避けると、連は本格的に口淫を始めた。

「あぁッ!!」

 熱い粘膜に自身を包まれて、昴は烈しく身悶えた。連の口淫は巧みで、少しでも気を抜けば、あっという間に達してしまいそうだ。

「うぁ……あつぃ……ッ」

 気持ちよさすぎて、何度も腰が跳ねる。快感を止められない。
 淫猥な音が部屋に満ちる。与えられる悦楽に溺れているうちに、下着もハーフパンツも脱がされていた。
 抗う間もなく、両足を割り広げられ、陰嚢いんのうを舌で転がすようにしゃぶられた。

「あンッ、や、あぁッ!」

 後蕾こうらいを指で弄られながら、蜜袋を吸われ、腹につくほど反り返った屹立を、根本から鈴口まで丁寧に舐められる。

「うぁ、連ッ」

 絶え間なく与えられる快楽に、昴は怯えの滲んだ声を上げた。連は身体を起こすと、安心させるように昴の頬を撫でた。

「大丈夫、ちゃんと準備するから。力を抜いて」

「ん……」

 いわれた通りに、昴は身体から力を抜いた。連は念入りに昴の身体を溶かしていく。身体中に舌で触れながら、後孔を指で抜き挿しする。

「ん、んぁ……ッ……あん……きもち、いい……」

 く寸前まで昇りつめ、昴は真っ赤な顔で悶えた。あと少し――というところで、限界を知ってか、連は身体を起こした。
 なんで? と昴が視線で問うと、雄の顔をした連は、仰向けた昴の両足を掴み、大きく割り開いた。昴の背中にクッションを挟み、双丘をもちあげる。

「ッ!?」

 まんぐり返しのような態勢をさせられ、昴は狼狽えた。
 股間を手で隠すが、連は気にせず、双丘の柔肉を割り開き、あわいに端正な顔をうずめる。

「連っ」

 指でたっぷりほぐされた後孔こうこうは、連の舌を難なく受け入れ、きゅうと締めつけた。微笑する気配に、昴の全身が朱く染まる。

「や、あんっ! あっ、あっ、あぁッ」

 舌で前後に抜き挿しされて、昴の下肢はぐずぐずに溶けていった。指と舌でたっぷり蕩かされた頃、連はようやく顔を上げた。

「挿れるよ」

 膝裏に腕をいれて、ぐぐっと連の熱い身体が迫る。熱塊が隘路を押し開くように、少しずつ柔肉に沈んでいく。

「ゆっくりして……」

 消え入りそうな声で昴が請うと、連は優しく昴を揺さぶった。

「大丈夫。酷くしないから……力を抜ける?」

「ん……」

 剛直を食まされ、昴は苦しげに呻きながら、身体を弛緩させた。
 連はすぐに動かず、昴が落ち着くのを待っている。息が整うのを見て、波間をたゆたうような抽挿を繰り返した。

「は……気持ちいい……昴の中、すごくイイよ」

 少し掠れた声に、昴の下腹がきゅんと疼いた。楔をしめつけてしまい、連が艶めいた吐息を零す。
 昴の顔の左右に腕をついて、熱の灯った瞳で昴を見下ろす。顔を背けると、連は顔を伏せて、痼った乳首に舌を絡めた。いやらしくしゃぶりながら、極限まで引き抜いた楔を打ち込む。

「んぁッ! んッ」

 繰り返し優しく突かれ、昴は背をしならせ、強烈な射精感に震えた。

「うぁ……いく、いく、いっちゃ……ッ」

 飽くことなく肉を貪る連に、昴は窮状を訴えた。

「いく? いいよ……俺の、口の中に出して」

 楔を引き抜き、身体をずらした連は、昴の性器を口に含んだ。

「っ!?」

 放熱を堪えようとするが、連は追い打ちをかけるように口を窄めて、鈴口を強く吸引した。

「ちょッ、あぁ――ッ!」

 どくどく、吐き出された熱の奔流を、連は一滴も零すまいと吸い上げた。喉を鳴らして嚥下すると、亀頭の割れ目を舌で抉り、もっと、と強請るように突いてくる。

「う……ぁん……も、出ないって……」

 汗で湿った、連の前髪に指を通すと、連は欲情しきった瞳で昴を射抜いた。
 均整のとれた身体を起こすと、濡れた唇を手の甲でぬぐい、力の入らない昴の身体をうつ伏せにした。

「腰をあげて」

 いわれるがまま、昴は腰を高くあげた。覆い被さった連は、後ろから昴を貫いた。

「あぁッ」

 休む間もなく貪られて、昴はがくがくと身体を痙攣させた。手足に力が入らない。

「昴……」

 後ろから昴の耳を食んだ連に、耳元で小さく名を呼ばれて、下腹が切なく疼いた。
 後腔こうくうを満たす楔をしめつけてしまい、連は艶めいた声を漏らした。
 その声を聞いただけで、昴は達した。精を噴き上げて震える性器を、連が更に手で扱いてくる。

「うぁッ、ふ、あぁぁ……く……ッ」

 途方もない愉悦が、全身を駆け抜けていった。連も、昴の最奥で弾けた。細かく腰を震わせた後、ずるっ、と昴の中から出ていく。
 昴はぐったりとソファーの上で弛緩した。指一本を動かすのも億劫に感じる。連は労わるように、昴の汗ばんだ背中に、何度もキスを落とした。

「なぁ……信じてくれよ。こんなことするの連だけだし、他の誰にも靡いたりしないから」

 掠れた声で昴がいうと、連は汗ばんだ昴の背を撫でながら、首筋に唇を落とした。

「……傍にいて、好きっていってもらえて、それで十分だったのに……俺はどんどん欲深くなっていくな」

「嫉妬してくれて、ちょっと嬉しい気もするけど、連が傷ついたり、嫌な思いをするのは嫌なんだ……俺は、連が思っているよりも、もっとずっと連のことが好きだよ」

 顔を傾けて、寝そべったまま連を見つめると、珍しく連は照れたように手で口を覆った。
 これだけ濃厚に交わっておきながら、妙に初々しい姿だ。穏やかな気持ちで昴はほほえんだ。