BLIS - Battle Line In Stars -

episode.4:BLIS JL - 40 -


 決勝戦を終えてすぐ、Hell Fireはステージの上でヒーロー・インタビューを受けた。

「G-men選手、Penta Killおめでとうございます! お気持ちを聞かせてください」

 美人な女性アナウンサーにマイクを向けられて、昴は赤くなりつつ、マイクに顔を寄せた。

「嬉しいです! 自分でも、イケるとは思ってなくて……プレイしている時は、とにかく夢中でした」

「ありがとうございます。素晴らしいプレイでしたね! そしてAsh選手、G-men選手を護りながらフロントラインで大活躍でした。今のお気持ちを教えてください」

 マイクを向けられて、ルカは万人を魅了するであろう笑みを浮かべた。

「はい。リーグを通して、僕とG-menの間には、いいシナジーが生まれました。最後のPenta Killも、G-menならきっとやれるって信じていました」

 ルカが天使のような笑顔で答えると、観客席から、黄色い悲鳴が沸き起こった。ルカが手を振ると歓声は更に大きくなる。思わず半笑いになる昴の横腹を、ルカは肘で突いた。

「ありがとうございます! 観客席からも、熱い、熱い声援が聞こえてきます! Double Face選手は司令塔として、今、どんなお気持ちですか?」

 連は、チーム全員の顔を眺めてから、胸を張って会場に視線を向けた。

「最高の気分です! リーグ中にチームのトラブルもありましたが、一週を乗り越えるごとに、結束は固くなっていきました。Team Deadly Shotという強敵に勝てたのは、チームの皆と、支えてくださったファンの皆様のおかげです。ありがとうございました!」

 会場は、割れんばかりの拍手喝采に包まれた。少し引くのを待ってから、アナウンサーは再びマイクを連に向けた。

「ありがとうございます。日本代表に選ばれましたが、世界大会への意気込みをお聞かせください」

「トーナメントで闘ってきた全プレイヤーが、世界への切符を欲していました。彼等の為に、いけるところまで上を目指していくことが、僕達にできる恩返しになると思っています」

 連がよく通る声で告げると、会場は大歓声に包まれた。
 世界――ほんの数か月前は想像もしていなかった展開に、手が、足が、ふるえそうになる。
 だが、連のいう通りだ。
 一つでも上を目指すことが、トーナメントで闘ってきた全てのプレイヤーに対して、そして応援してくれるファンへの恩返しになる。
 チーム全員が同じ気持ちで手を繋ぎ、天に向かって翳した。
 拍手は鳴りやまない。
 カメラマンの指示に従い、五人で顔を見合せてから肩を組んだ。
 栄光の記念撮影だ。連が誇らしげに、優勝トロフィーを掲げた瞬間、眩いほどのフラッシュが焚かれた。
 会場に割れんばかりの拍手喝采、祝福のエールが響き渡った。
 金銀の紙吹雪が、きらきらと天井から降ってくる。眩い光の洪水を眺めながら、昴はチームと一緒に満面の笑顔を浮かべた。
 きっと、この日のことを生涯忘れないだろう。
 控室に戻った後も、興奮は冷めやらず、全員が浮足立っていた。

「やったね。皆、本当にお疲れさま」

 和也が労うと、他のメンバーも次々に喜びを口にした。もうお祭り気分だ。

「どうしたの、昴?」

 放心したように椅子にへたり込む昴を見て、ルカは不思議そうに訊ねた。

「いや、優勝したなんて、まだ信じられなくて……実は夢だったりして」

「夢じゃないよ! Penta Killしたじゃない!」

「我ながらミラクルだ」

「あはは」

「……俺、嬉しいよ。このメンバーで勝てたことが、本当に嬉しいよ」

 涙ぐむ昴を見て、全員が優しく表情を綻ばせた。連が肩を抱き寄せる。ルカやアレックス、和也も手を伸ばして、昴の頭を撫でた。

「誰が欠けても、優勝はなかった。Hell Fireに昴が入って、チームは完成したんだ」

「昴は最高のACEだよ!」

 ルカの言葉に、ぽろっと涙が零れた。それを見て、精緻に整った顔に苦笑が浮かぶ。俯く昴の頭を、ルカは優しく撫でた。最初はあんなに苦手だったのに、ルカとも判り合うことができた。UNDERゾーンを強力にプッシュできたのは、ルカの強サポートのおかげだ。

「ありがとう。皆のおかげだ。連のインタビューもかっこ良かったよ。あー、ついに世界かぁッ!!」

 気持ちを込めて昴がいうと、連は笑った。力強く頷く。

「全員が実感していると思うけど、Summer Seasonを通して、俺達は強くなった。もっと上にいける。世界大会予選は、世界への通過点。現実的なハードルに変わったんだ」

 昴は背筋が慄えるのを感じた。
 ここまで全速力で駆け抜けてきた。アマチュアからプロに転向し、憧れのチームで、最高のメンバーと日本を制した。
 世界に、手が届く。
 韓国、台湾、オーストラリア――アジア圏の強豪がひしめく世界大会予選IWCI――International Wild Card Invitational――がトルコで開催される。

「勝とう」

 連の言葉に、全員が頷いた。

「戦国、侍の国、和の国ニッポン。喧嘩上等、よろしく下剋上! 世界大会予選で大判狂わせかましてやろう」

 ルカが不敵に笑う。

「ここまできたら、世界に挑戦したい。いってて、ビビるけどさ」

 昴が引け腰でいうと、全員が小さく笑った。
 ゲーミングハウスに帰った後も、お祭りは続いた。昴とルカがBLISのプレイ動画配信をすると、大勢のファンが集まってくれた。
 タイムラインは、おめでとう! の雨あられだ。
 配信を終えて、テンションが少し落ち着いてからは、リーグを振り返って、ハイライト等を語り始めた。
 酒が回り、ルカとアレックスが昴に絡み始めると、連は苛立ったように二人を引きはがした。

「おい、離れろよ」

「連もまざろうよー」

 アレックスが悪のりをして、連の手を引いた。ソファーに倒れ込む連にのしかかり、反撃をくらっている。

「ぐふっ」

 隣に座っている昴にも衝撃が伝わり、手に持っていたグラスからジュースが飛び散った。

「おい! 俺を挟むなよ」

 昴が抗議すると、連はルカとアレックスに睨みを利かせた。二人がわざとらしく両手を上げて、降参のポーズをとる。

「君達って、見ていて飽きないよ」

 和也がのんびりいうと、連も降参のポーズをとり、そこで天を突くような爆笑に変わった。
 安眠妨害されたマネージャがやってくるまで、馬鹿騒ぎは続いた。
 Hell Fireが奇跡的な0-2からの逆転勝利を決めたことは、ネットでも話題になった。
 リーグを全勝している格上チーム、Team Deadly Shotを相手に、二ゲームを先取された危機的状況から、強靭な精神力で流れを引き寄せ、怒涛の三連勝で一気に押し切ったのだ。
 ドラマティックな展開に、世界からもBLIS JLへの賞賛のコメントが多数寄せられた。
 もう、日本をBLISを始めたばかりの弱小国とはいわせない。
 彼等の快進撃は、これから始まる世界大会予選でも大いに注目されている。

 九月。

 アジア大会、世界大会予選の舞台となるトルコにHell Fireは上陸した。
 緊張しているのは昴だけで、他のメンバーはリラックスしている。いつでもどこでもマイペースだ。
 オープニング・セレモニーが始まる前に、滋養剤を飲む昴を見て、アレックスは笑った。

「サラリーマンかよ」

「うぅ……緊張してきた」

 胃を押さえる昴の肩を、アレックスがそっと抱き寄せる。顔を上げると、不機嫌そうな連がこちらを見ていた。

「何してる? いくぞ」

「イエッサー」

 アレックスが敬礼をすると、ルカも真似をした。
 昴もよろよろと扉に向かって歩いていくと、部屋を出る前に、今度は連に肩を抱き寄せられた。一瞬、ぎゅっと強く抱いてから離れる。

「平気?」

「……おう」

 照れくさげに昴が返事すると、連は驚くほど優しい笑みを浮かべた。

「はいはい、いくよー」

 先に廊下に出たルカが、ぱんぱんと手を鳴らして注意を引く。
 苦笑しつつ、昴は緊張が緩和されたことに感謝をした。
 廊下を進む五人を、いってらっしゃい、とマネージャやサポートスタッフが見送る。
 会場に続く扉が開いた途端に、眩い光に包まれた。
 五人でステージに向かって歩いていく。世界大会の本戦を懸けた、新たな挑戦に向かって――




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