BLIS JLG(BLIS日本リーグ)開始まであと一週間。
 金曜日の夕方、遂に対戦カードが発表された。先日撮った写真もネットに公開されている。
 昴と連がゲーミングハウスを訪ねると、全員がプレイルームに集まっていた。トーナメント表を眺めて、意見を交わしている。
 闘うチームは全部で六チーム。
 開幕戦は五月二十九日。
 会場は目黒に新設された、都内最大級のイベント会場、Hevens GGGだ。

「どのチームに脅威を感じる?」

 昴は連に訊ねた。

「Team Deadly Shot。あそこは、選手の入れ替えと強化合宿に成功している。xiaoは優秀のミッドレーナーだ」

 TDSは去年のSummer Matchを制した優勝チームで、今シーズンにおける優勝候補だ。
 xiaoはデンマーク出身のプロ選手である。EUサーバのRanked SoloQueで、スターゲート・ランクを二つねじ込んできた化物で、世界最高峰のミッドレーナーとして超有名だ。
 動画配信者としても大人気で、彼がBLIS動画を配信すると、視聴者数は十万人を越える。twitchのdonateだけで月に数千万円を稼ぐトップ・プレイヤーである。
 そんな超スター・プレイヤーを、TDSは高額な契約金と引き換えにチームに引き入れた。

「今のTDSはJLGの最強チームだよ」

 連の言葉に、俺もそう思う、とアレックスも頷いた。

「僕はInner Infinity Impactかな」

 答えたのはルカだ。
 3Iは一昨年の第二シーズンの優勝チームで、去年もGrand Champion Ship(国内決勝戦)でTDSと大接戦を繰り広げている。
 メンバーは前年とほぼ同じ構成で、相互理解度において他チームを圧倒している。

「昴は?」

「俺はGalaxy Eye!」

 ルカの質問に昴は即答した。

「あぁ、Blakerが入ったところ?」

「そう。Challenger Series(入れ替え戦)で二部リーグから勝ち抜いてきたチームだよ。ACEの椎名さんはもちろん、アサシンのtorinは中国のプロチームから引き抜かれてきた凄腕だ。要注意だよ」

「ACE対決か」

 ルカが不適に笑うと、昴もニヤッと笑った。

「負けないよ。和さんは?」

 昴が声をかけると、対戦カードを眺めていた和也は顔をあげた。

「そうだな、個人的にはStylish Logic Styleに注目しているよ。あとは、俺もGalaxy Eyeを応援している」

 Stylish Logic StyleはLucky Fiveと合併して、両チームのいいとこどりで再構成されたチームだ。

「昴も和也も、Galaxy Eyeを推すんだね。正直、ボロ負けすると思うけど」

 二部で優勝しても、一部で通用するとは限らない。リーグ初出場のチームが、先達の洗礼を受けるのはJLGの通過儀礼といわれている。

「まぁ、全敗もありえるだろうね。でも、素直でいいチームなんだ。ファンは増えると思うよ」

「椎名さんは強いよ。リーグ経験はないけど、強敵になるかも」

 昴が反論すると、和也は優しくほほえんだ。

「若手チームの台頭は大歓迎だよ。リーグを盛り上げてくれるからね」

 そういって笑う和也は、本人がいうように、選手をするより、育てる方が向いているのかもしれない。

「真面目な話、俺達の脅威はやっぱり、Team Deadly ShotとInner Infinity Impactかな」

 ルカがまとめると、全員が頷いた。

「その二チームには接戦を強いられる分、それ以外の試合は勝ち星をあげておきたいね」

 アレックスの言葉に昴が大きく頷くと、ルカに軽く後頭部をはたかれた。

「そこは、全試合勝つ! くらいの意気込みを見せてよ。マッチアップインタビューを受けたら、全員ぶち殺す! っていってね」

「俺はどんなキャラなの……」

 げんなりしながら昴がいうと、アレックスと和也が笑って、連も小さく笑った。