ジュリの視線は唇や首筋を辿り、静かに熱を灯してゆく。
 端正な顔が降りてきて、額や頬に口づける。耳朶を食まれて、びくりと身体が跳ねた。

「ん……っ」

 耳穴にまで舌を潜らせるから、思わず顔を振って逃げる。顔の前で交差させた腕を、あっさり引き剥がされた。
 ふと一途な眼差しで、掴んだ光希の手を見やる。何かと思えば、手首の内側に赤い線が走っていた。花を触った時、痛めたのかもしれない……。

「痛くないよ……」

 一応言ってみるが、ジュリは慰めるように、そこに唇で触れた。手首に執着をみせて、労わるように傷を舐める。

「光希……」

 想いを込めた、切なくなるような囁き……。
 手首から肘の内側までを、軽くついばむようにして唇を落としてゆく。
 夜着を捲られて、肉づきの良い胸の膨らみを揉みしだかれた。

「あ、ぅ……んっ……」

 乳首を抓まれ、指の腹で擦られた途端に中心が疼く。咄嗟に振り上げた腕を掴まれ、寝台に縫いとめられる。
 空いた胸に顔を沈めると、乳首を唇で挟み舌でねぶる。電気が流れたみたいに、ジュリの下で何度も身体は跳ねた。
 血流が巡り、中心は芯を帯びる。組み敷かれた下肢に、熱い猛りがこすれる。光希だけじゃない、ジュリも……。
 乳首を吸われながら、長い指に濡れ始めた屹立を、つぅと撫で上げられた。

「あ、ん……っ」

 腰が甘く疼いて、高く、あられもない声が口をついて、ジュリの形のいい唇から、ふっと艶めいた微笑が洩れる。
 腰紐に手をかけられ、協力するように腰を浮かすと、下着まで一遍に脱がされた。上も脱がされ、光希だけ裸に剥かれる。
 袖を軽く引っ張っると、ジュリは膝立ちになり、男らしい仕草で上を脱ぎ捨てた。躊躇いなく下も脱ぐと、見事な肢体を惜しげもなく晒す。
 窓から射す星明かりを浴びて、淡い褐色の肌は煌めいて見える。
 綺麗……。
 ジュリに見慣れる日なんて、永遠にこないのかもしれない。
 今でも、ふとした瞬間に見惚れてしまう。
 しなやかな筋肉に覆われた天鵞絨びろうどの肌に誘われて、ゆっくり身体を起こした。
 割れた腹筋に手を這わせて感触を楽しんでいると、肩をとん、と押されて再び倒される。背中がついた途端に、胸の膨らみを激しく吸われた。

「っ、んっ……あ……っ!」

 胸や腹をあちこち吸われながら、唇はどんどん下がってゆく。濡れた屹立の先端にちゅっとキスされる。そのまま、滲み出す滴ごと音を立てて啜られた。

「あ……ぁ……ああ……っ!」

 えもいわれぬ悦楽。根元から先端までねっとり舐めあげられ、軽くきかけた。
 陶然としている間に、足を大きく押し広げられる。
 空気に触れてひくつく窄まりに、ぬめりを絡めとった指先をつぷりと差し入れられる。
 亀頭を熱い口内に含まれながら、後ろを優しく指で弄られる。抜き差しされる度に、ぐぷんっと抽挿音が弾けた。

「や……ぁ、ん……っ!」

 前と後ろを同時に責められ、悦楽を駆け上がる。
 けれど、真っ白に意識を飛ばす直前で、ジュリはぴたりと手を止めた。光希の身体を後から抱え直すと、両腿を押し開いて猛る剛直を宛てがう。
 緊張に強張る身体のあちこちに、優しいキスが落ちる。
 ジュリの剛直を呑み込むのは時間がかかる……息を吐きながら下肢を弛緩させて、ゆっくり沈めてゆく。

「大丈夫……ほら入った……」

 ジュリは満足そうに囁くと、圧迫感と充足感に喘ぐ身体を背後から抱きしめた。乳首を指先で転がしながら、やんわり突き上げる。

「んっ……あ……っ!」

「気持ちいいよ……」

 耳朶を食まれ、吐息を吹き込むように囁かれると、下肢に力が入りジュリを締めつけてしまう。
 ゆったりとした擦り上げは、次第に激しい抽挿へと変わってゆく。突き上げられる度に、光希の反り返った性器は何度も腹を打ち、熱い滴を飛び散らせた。

「あ、あ、あ――っ!」

 終わらない律動に揺られながら、気が遠のくような絶頂を迎えた。
 吐精を続ける間もジュリは止まらない。快楽は引き延ばされて、思考は焼き切れそうになる。
 ようやく引き抜かれたと思ったら、身体を仰向けに倒され、白濁に濡れた性器を口内に含まれた。

「――っ!? ジュリッ! やめ……っ」

 振り払おうと暴れても、ジュリは下肢を押さえつけて離さない。音を立てて蜜口を啜りあげた。
 二度目の絶頂がきて、背中は弓なりにしなる。一滴残らず吸い尽くされる。
 もう、言葉も出ない……。
 ぼんやり見上げていると、ジュリは身体を起こして唇の端についた白濁を舐めとった。光希の足を拡げて、柔らかくなった窄まりに、未だ衰えぬ剛直を宛がう。
 哀願するように力なく首を振ると、欲に濡れた青い双眸で甘く微笑む。

「あと一回だけ……ね?」

 優しく挿入を果たすと、ゆったりと腰を使い始める。
 緩やかな抽挿の合間に、身体を倒して唇を塞ぐ。舌を絡め、吸われるうちに、疲れた体に熱が灯り、時間はかかったが次第に昂った。
 するりと腰を撫でられ、ぐぐっと中心が反応する。
 甘く穿たれながら、屹立を握りしめられると、身体は勝手に快感を拾って蕩ける。

「あっ、あぁ……っ!」
「――ハ……ッ」

 逃げる腰を掴まれて、何度も引き戻される。最後は背が浮き上がるほどに強く、最奥まで突き上げられた。
 三度目の放熱を遂げながら、中を熱い飛沫で満たされていく――。

「愛している、私の花嫁ロザイン……」

 ジュリは、喘ぐ光希の唇に触れるだけのキスをする。優しい愛の言葉を聞きながら、意識を手放した……。