金色の睫毛から、滴がぽたりと落ちる。
 青い双眸は喩えようもなく美しい。こんなに間近で見つめても、ジュリの肌は陶器のように滑らかで、染みは一つもない。

「ん……っ」

 見惚れていると、唐突に唇を塞がれた。かき抱くように腕を回されて、口づけはたちまち深くなる。
 息をつく間もない、性急なキス。
 舌をからめ捕られ、痛いくらいに吸われる。怒りをぶつけるように、口腔こうこうを激しくなぶられた。

「ふ……ごめっ、ん……っ!」

 言葉を紡ごうとしても、すぐに塞がれる。簡単に謝るな――そういわれた気がした。
 音が立つほど、荒々しくむさぼられる。
 瞼を上げると、熱を帯びた眼差しに射抜かれた。ドクンッと鼓動が跳ねる。なんて眼で見つめるのだろう。

「……っ、んっ、ふっ」

 ジュリアスは唇を離すと、腫れた光希の唇をぺろりと舐めた。流れるように顎の先にキスをして、そのまま首筋から鎖骨へと唇で辿る。
 火を灯されて、身体は次第に目覚めていく。熱の溜まった中心は、グンと芯を帯びた。
 光希の腹にも、熱いたかぶりが触れる。ジュリアスの、熱だ。き出しの先端に手を伸ばすと、力強く脈打つ。
 艶めいた呻き声を上げると、ジュリアスは光希の背に腕を回して、乳首に舌を這わせた。

「あぁっ」

 強く吸い上げられ、甘い刺激に腰が揺らめく。
 逃げようともがくと、かき抱く腕の力は増々強くなった。鋼のように固い腕に捕らわれて、胸のあちこちを吸われる。

「あ、あっ、んん……っ!」

 左右の乳首を交互に舌でねぶられ、空いた片方を指先で絶えず転がされる。
 時間をかけて愛された。息も絶え絶えに喘いでいると、濡れた先端に吐息を吹きかけられる。
 面白いくらいに身体が跳ねた。
 背をしならせて喘ぐと、更に追い詰めるように、細かく指先で弾かれる。
 静かな浴室に、いつ終わるかも判らぬ、欲に溶けた声と濡れた音が反響こだました。

「……っ……のぼせちゃうよ……」

 窮状を訴えると、ジュリアスはようやく顔を上げた。水桶に麻布まふを突っ込んだかと思えば、頬に押し当てられる。
 冷たくて気持ちいい……布を手で押さえ、眼を閉じていると、尻臀しりたぶを両手で広げられた。驚いた拍子に、手から布が滑り落ちる。

「ジュリ!」

 おののいて上擦った声が出た。
 のぼせそうだし、身体の節々が痛い。こんな固いタイルの上で最後までしたら、きっと倒れてしまう。
 尻のすぼまりに指が這う。石鹸で滑りを良くした指が、撫でるように行き来する。つぷりと指先が挿入されると、泣きたくなった。

「ここじゃ嫌だ……」

「すぐ終わらせる」

 しない、という選択肢はないらしい。ジュリアスは胡坐を掻いて、その上に光希を跨らせた。
 胸に抱き寄せ、あやすように首筋や肩に口づける。光希の様子を見ながら、慎重に指で奥を探る。指の根元まで埋まると、ゆっくりと抜き差しを始めた。

「……っ、んん、あぅ」

 指を引き抜きながら、感じやすい内壁をこすられると、突き抜けるような快感に襲われた。
 鼓動の音が耳の奥で弾けて聞こえる。これ以上は、本当にのぼせてしまう……

「ジュリ、早く……」

 もういっそ、早く終わらせてしまおう。半ば自棄やけになって請うと、ジュリアスは一瞬動きを止めた。
 宥めるように背中を撫でられる。敏感になっている身体は、それすら甘い刺激となる。
 しなる背中をきつく抱きしめられて、尖った胸の先端を再び強く吸われた。

「んぅっ!」

 今ならきっと、勃起した前を軽く擦られるだけで、ってしまう。快楽に呑まれて、前に手をやろうとしたら阻まれた。
 お互い、肩で息をしながら見つめ合う。
 上気した頬。青い双眸には、ほとばしるような熱……きっと光希も、似たような顔をしている。噛みつくように唇を奪われた。

「んっ! はぁ……ん、あっ」

 観念して首に両腕を回すと、ジュリアスは空いた腕で背中を撫で上げ、そのまま尻の合間に指を潜らせた。
 巧みに孔をこじ開け、経路を作るように指を抜き差しする。
 三本の指が出入りするようになると、光希の腰を持ち上げて、双丘の狭間に熱い塊をあてがった。
 この瞬間は、何度経験しても緊張する。
 強張る身体を解すように、ジュリアスは小刻みに肌に口づける。
 入ってくる――
 圧迫感に呻き、逃げようとする身体を押さえつけられる。慎重に光希の身体を沈めてゆく。

「ほら……入った。動くよ」

 耳元で密やかに囁くと、光希の返事も待たずに、ゆっくりと身体を揺らし始めた。

「はぁ……んっ!」

 ジュリアスは背中を支えながら、透明な飛沫ひまつを散らす光希の屹立に触れる。裏筋を撫でられるだけで、達してしまいそうだ。
 震える光希を見て、ジュリアスはふっと笑みを零す。
 ようやく見せてくれた柔らかい眼差しに、胸はぎゅうっと締めつけられた。

(ジュリ……)

 大切な名前を吐息にのせて囁くと、突き上げは早くなる。結合部からひっきりなしに、欲望の擦り合う水音が立つ。
 瞼をきつく閉じて顔を逸らしていると、頬を撫でられて名を呼ばれた。

「光希。私を見て」

 甘い声に、身体は更に熱くなる。全力疾走をしたかのよう。なかなか眼を開けられずにいると、瞼を舌で舐め上げられた。誘われるように眼を開けると……燃えるような青い双眸に射抜かれる。

「ぅあっ!」

 ズンッと奥まで貫かれて、意識が飛ぶ――視界に星が舞う。緩急をつけた抽挿に揺すられながら、奪うように唇を塞がれた。

「――っん、ふぅ、あぁッ」

 内壁を激しく穿うがたれながら、ジュリアスの引き締まった腹に勃ち上がった屹立が擦れて、抗い難い悦楽をもたらした。

「……っ、ああ――っ!」

 耐え切れずに、こぷりと吐精しても、ジュリアスは律動を止めない。唇が離れた途端に、嬌声が上がった。

「――ッ、……ック」

 ジュリアスは青い双眸で光希を眺めた後、自ら熱を加速させて、光希の中に欲望を吐き出した。

「光希……」

 もう指の一本すら、自力で動かせない……
 人形のように動けなくなった光希を、ジュリアスは甲斐甲斐しく世話してくれた。汗を掻いた身体を再び洗い流し、抱きかかえて浴室から運び出すと、身体を拭いて着替えさせてくれる。
 限界だ……
 意識が戻った時には、寝台の上だった。額に触れるだけのキスが落ちる。

「ジュリ……?」

 顔の傍で、シィー、と囁かれる。瞼を閉じ途端、吸い込まれるように深い眠りへ落ちていった。