「コーキ、少し腰をあげて」

 いわれるがまま腰を浮かすと、身体の下から素早く衣を引き抜かれた。光希だけ完全に裸になる。

「ジュリも……」

 遠慮がちにジュリアスの服に手をかけると、ジュリアスは身体を起こして、男らしい仕草で自ら脱ぎ捨てた。そして情熱的に覆いかぶさってくる。
 火傷しそうに熱い肌だ。触れ合ったところから熱が広がり、どちらからともなく腰を揺らめかせた。

「愛している、私の花嫁ロザイン

「ジュリ……んっ」

 性器を直に触れられて、反射的に身体が跳ねた。焦れったい指の動きで、緩やかに竿を撫で上げられる。

「気持ちいい……?」

 上気しているであろう光希の顔を見て、ジュリアスは満足そうに目を細めた。青い瞳の光彩が強まり、逆光で顔に陰翳を落としていても、仄かに輝いて見える。
 長い指に、性器を根元から扱かれながら、すっかり敏感になった乳首を摘まれた。

「だめッ! ジュリッ! んぅ……っ……」

 官能を煽られて、あられもない声が零れてしまう。もう、昇りつめることしか考えられない。

「あ、ンッ……! 手、離して……!」

 このままでは、ジュリアスの手を汚してしまう――離してもらいたくて身体を捻ろうとしたら、肩を強く押さえつけられた。
 戸惑い、見上げると、強い視線に身体が震えた。慄く光希を見つめたまま、綺麗な顔を下げて、濡れた性器に舌を這わせる。放熱を堰き止めるように、指を輪っかにして根元を締め上げた。

「あっ、あンッ、ジュリッ! あぁ……ッ、離してぇッ!」

 熱い舌での愛撫は、指でされるよりも、ずっと強烈だった。
 根元を握られたまま、口内で亀頭をめちゃくちゃにされる。あまりの快感に、声にならない。大海に浮かぶ小舟のように、いいように翻弄されてしまう。

「んぁッ、あ、あん、ふ……っ!」

 身体中を痙攣させて刺激をやり過ごしていると、ジュリアスは指の戒めを外して強く蜜口を吸い上げた。
 強烈な快感が、身体を走り抜けた。
 目は開いているのに、目の奥が明滅して何も映らない。身体中の熱が、細い蛇口からほとばしる。

「あぁ――ッ!」

 気持ち良すぎて、何も考えれない。放熱の余韻に肩を上下させていると、嚥下する音が鼓膜を叩いた。

「気持ち良かった?」

「う、、うぅ……飲んだの?」

「はい」

「嘘だろ、何で……」

 羞恥で死ねそうだ。ジュリアスの顔をまともに見られず、両手で顔を覆っていると、あやすように胸に抱きこまれた。

「どうしたの?」

「……恥ずかしい」

「すごくかわいかった。私で気持ち良くなってくれて、嬉しい」

「うぅぅ……かわいくない」

 照れまくる光希を、この上なく甘い表情でジュリアスは見つめている。
 恐る恐る顔をあげると、上気した麗しい美貌がすぐ傍にあった。愛情に満ちた眼差しだと感じるのは、光希の自意識過剰ではないだろう。
 これだけ近くにいても、少しも慣れない。ジュリアスは本当に神様みたいだ。
 滑らかな褐色の頬に手を伸ばすと、気持ち良さそうに瞳を閉じて、掌にすり寄ってくる。そのかわいらしい仕草に、思わずときめいてしまう。じっとしているのをいいことに、親指で優しくまなじりを撫でて……額の青い宝石に触れてみた。
 額の宝石に触れられるのは、光希がジュリアスの花嫁である証だという。
 ジュリアスのように額に青い宝石を持って生まれた子供は、神殿で成人するまで育てられるとサリヴァンから聞いた。
 彼等はその土地を加護する神の化身とも呼ばれ、東西の決戦を歴史が繰り返す時、神意により生まれるとも。
 敵に打ち勝つ為に与えられし神力を自在に操るが、感情に乏しく、喜怒哀楽は殆どない。
 只一つ、花嫁を欲する強い感情を生まれ持っており、それが彼等の行動原理の全てだという。
 “宝石持ち”或いは“神降ろし”と呼ばれる稀有な彼等の更に一握りだけが、己の花嫁に巡り合うことができるらしい。
 生まれながらにして砂漠の覇者であったジュリアスも、想像を絶する苦難の果てに光希を手に入れたのだ、とサリヴァンは話していた。

(なんで俺なんだろう……)

 ジュリアスのことを考えると、いつも思う。
 思いふけりながら青い宝石を撫でていると、宝石と揃いの青い双眸が開かれて、幸せそうにほほえんだ。
 その瞬間、ジュリアスの神力が具現化して、周囲に淡い光の粒子が舞った。

 本当に、ジュリアスは神様みたいだ。