アッサラーム夜想曲

『幾千夜に捧ぐ恋歌』





 ― 『幾千夜に捧ぐ恋歌・八』 ―




 逃げようとしたわけではなかった。ただ、落ち着いて話をしたかっただけだ。
 戸惑ったように視線を揺らす光希をどう思ったのか、ジュリアスは性急な手つきで下履きを脱がせた。咄嗟に拒めなかったが、むき出しの下肢に手が触れて、急速に理性を呼び戻された。

「さ、さすがに、それは」

「コーキに触れたい。もっと」

 力なく垂れた中心を摩られて、光希はおののいた。逃げようとすると、強い力で腰を引き戻される。

「ジュリッ!」

 ジュリアスは、端正な顔を沈めると躊躇もなく光希の性器に舌を這わせた。年端もゆかぬ美しい少年が、いやらしい舌遣いで光希を高めてくる。

「ッ、離して」

 拒んでも、ジュリアスは離そうとしない。暴れると、性器を甘噛みされた。急所に歯を立てられる恐怖に、反抗心は手折られてしまう。

「駄目だって、もう、ちょっとッ」

 切羽詰まった様子を、今度はジュリアスが上目遣いに見上げている。感じ入る光希の痴態を眺めながら、強く屹立を吸い上げた。

「あぁ!」

 腰を震わせている間も、ジュリアスは吸引をやめなかった。精管からほとばしる雫を、喉を鳴らして嚥下していく。

「……もっと欲しい」

 未熟な身体の少年は、頬を上気させて陶然と呟いた。
 淫靡な光景に怯み、身体を捻って逃げようとする光希を、逃がさないとばかりに、背中からジュリアスが体重をかけてのしあがってきた。

「ここに、私を……」

「駄目!」

 尻のあわいを指でなぞられ、光希は背を慄わせた。緊張を解くように、ジュリアスは項や背中に啄むようなキスを降らせた。

「んぅッ」

 天鵞絨びろうどのような唇が、肌のそちこちに雨と降る。
 甘い唇に翻弄されて、どうせ夢なのだから奔放に振る舞っても構わないではないか……天秤にかけられた理性と誘惑が、激しくせめぎ合った。

「こんなに綺麗な肌、見たことがない……柔らかくて、手に吸いつくよう。甘くて、いい匂いがする」

「んん!? 待って。そこはちょっと」

 尻たぶを掴む手を咄嗟に掴むと、少々乱暴に手を振り払われた。ジュリアスは、強引に親指で尻穴を割拡げると、すっと通った鼻梁を尻の間に埋めた。

「あ、んッ」

 優しく舌で突かれて、光希の腰も声も跳ね上がった。這って逃げようとすると、強い力で腰を掴まれる。

「貴方は、こんなに甘い声を、他の誰かに聞かせたのですか?」

「ジュリだけだって……んぅ」

 背に覆いかぶさるジュリアスに項をきつく吸われて、一際甲高い声を上げた。本当に? と耳朶に囁かれて、身体中が熱くなる。

「腰を上げて……」

「……」

 迷っていると、蝶を針で縫い留めるように、寝台に強く身体を押しつけられた。

「私だけに、肌を許してくれるのでしょう?」

「そうだけど……」

「貴方が欲しい。お願いです、どうか応えてください」

 どこか不安そうに請われて、光希はおずおずと膝をついて、腰をあげた。顔は伏せた状態で、下肢を高く上げる。
 あらぬところに息がかかり、甘い刺激を予感して身体は勝手に揺れた。

「あ……ッん」

 年端もいかない少年に、なんという真似を……幽かに残った理性が囁くが、尻たぶを揉みこまれると、だらしのない声が喉から迸った。ぬかるんだ入り口を、熱い舌がなぞりあげる。

「だ、め」

 やっぱり――土壇場で理性が目覚め、腰を引かせようとすると、ジュリアスは叱るように舌で深く穿った。

「あふッ」

 激しい抜き差しで、後孔を犯される。じゅぷっと、濡れた音が弾けて、光希は全身を赤く染めた。
 これが初めての経験であるはずなのに、少年は恐れも躊躇もなく、光希の身体に舌で触れてくる。

「あぁッ! あ、あ、はぁッ、ん」

 幼くても、ジュリアスの触れ方は情熱的だ。後孔を舌で解しながら、反応し始めている光希の中心に指を這わせる。
 甘く貪られて、光希も次第に乱れていった。なけなしの理性は、とうに崩壊している。
 仰向きに体位が変わり、膝裏に腕を入れられた。見つめ合ったまま、つぷりと肉塊が押し入ってくる。

「熱い……コーキの中、すごく私を締めつけて」

「ジュリ……」

 手を伸ばすと、意図を察したように身体を倒して、光希に覆いかぶさった。欲するままに唇を合わせる。
 情熱的な口づけをかわすうちに、慎重な腰遣いは、荒々しいものへと変わっていった。光希も夢中で背中に腕を回して、しがみつく。
 部屋に反響こだまする、濡れた音。舌を絡め、腰がぶつかり、荒い息遣いが部屋に充満していく。
 熱気に包まれながら、微かな笑声を耳に拾い、光希はうっすら眼を開けた。

「暖かい……コーキの腕に抱きしめられて、こっちも……私をきつく抱きしめてくれる」

「んッ」

 身体の奥を突かれて、一際高い声を上げた。
 撥ねる身体を舐めるように見下ろして、ジュリアスはふと真顔になる。光希の右足を持ち上げると、身体を横に傾けて、深く貫いた。

「あぁっ、ふッ、ン」

 堪らない。光希の感じるところを探るように、緩急をつけて腰を振られる。開いた胸を掌で撫で上げ、汗ばんだ身体を伏せたかと思えば、胸に舌を這わせる。

「あ、あぁ……」

 しこった乳首を食まれ、びくびくと腰が撥ねた。ジュリアスは熱に浮かされたように、いやらしく胸を揉みこみ、先端を指で弾いた。

「んぅッ、ふっ、あぁッ」

 形の良い唇に吸われ、甘噛みされて、ねぶられる。淫らな愛撫に、光希は何度も甘い声を上げた。

「は、はな……う、もたなッ」

「もっと見たい……」

 切羽詰まった表情を見て、ジュリアスは腰遣いを緩めた。抽挿の合間に、汗のしたたる首筋、鎖骨、胸、腹に舌を這わせる。もどかしいほど丁寧な愛撫を繰り返して、光希の欲望を煽りたてる。
 我慢できずに、光希の方から腰を揺らすと、ジュリアスは表情を綻ばせた。

「かわいい人……私で、気持ちいいのですよね?」

「もっと……」

「もっと?」

「……」

「あぁ、コーキ! こんな幸せがあるだなんて」

 信じられない、そう呟きながら、ジュリアスは自身を引き抜くと、深く光希を貫いた。

「んッ」

 強烈な快感が爪先から、頭の天辺まで駆け抜けていった。甘い刺激にもだえる光希を引き寄せ、ジュリアスは何度も後ろから穿つ。

「あぁッ」

 背後から交わった後、身体を仰向けて、正面から抱き合った。
 幼いながらも、細く引き締まった裸体は美しい。
 腰を打ちつける身体に手を伸ばすと、褐色の肌は熱く、硬い筋肉によろわれていた。うっすら割れた腹筋を指でなぞると、ジュリアスは艶っぽい呻き声を漏らした。欲にたぎった瞳で、強く光希を射抜く。天使のように整った顔立ちをしているのに、欲情した男の瞳をしている。

「あ、んぁッ!」

 熱い杭に前立腺を刺激されて、光希は仰け反った。うねる粘膜に締め付けられ、ジュリアスも顔を歪める。
 快感を貪り、共に上り詰めていく。
 絹をきつく握りしめ、快感に耐える光希の胸に、ジュリアスは指を這わせた。

「や、あ」

 胸の先端を指の腹で愛撫されて、光希は身悶えた。もう、我慢できそうにない。放熱の欲に支配されていると、唇を割って、指がもぐりこんできた。

「……ッ……このまま、貴方の中で果てたい」

 口内を探る指に舌を絡ませて、光希はジュリアスを見上げた。欲する情熱が、触れ合ったところから伝播する。

「ん――ッ」

 足の指先を丸めて、光希は背を弓なりにしならせた。絶頂を迎えて、頭の中は真っ白になる。
 吐精は長く続き、二人の間を濡らした。ジュリアスに指で扱かれる度に、びくびくと細かな飛沫が散る。
 放熱の余韻に浸っていると、暖かな手に両頬を包まれた。達したばかりなのに、下肢を開かれる。

「んぅッ」

 唇を貪られながら、ぐんっと突き上げられた。
 痙攣するように、二度目の放熱を遂げても、ジュリアスは光希の身体を放そうとしない。

「ん……ッ……僕、もう」

「もっと、貴方を感じていたい」

 殆ど透明な飛沫を散らしながら、光希は潤んだ瞳で、幼い恋人を見つめた。壮絶な色香に、頭がくらくらする。情熱に呑みこまれて、意識は混濁していった。




『幾千夜に捧ぐ恋歌』


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