超B(L)級 ゾンBL - 君が美味しそう…これって○○? -

3章:サヴァイヴァー - 9 -

 十二月二十五日。百十八日目。
 零時三十分。
 疫癘えきれいに侵された聖夜の東京に、突然、軍事放送が響いた。
「“こちらは大都守護部隊本部です”」
 ベッドで眠っていた広海は、勢いよく撥ね起きた。レオも起きあがり、千里を見透すように虚空を睨んでいる。
「“こちらは大都守護部隊本部です。生存者を安全な避難区域に、誘導いたします”」
 広海はベッドを降りると、転がるようにしてバルコニーに飛びだした。
 辺りを見回すが、真っ暗で何も見えない。
 放送音源は不明だが、先程から同じ情報をひたすらに繰り返している。
「“こちらは大都守護部隊本部です。生存者を安全な避難区域に、誘導いたします。一月一日の午前九時に、指定場所へ集合してください。場所は――”」
 複数の場所が放送される。そのうちの一つは、渋谷で、広海たちの要塞から歩いて十分程である。
 広海は目に希望を灯して、隣にやってきたレオを見た。
「避難区域だって!」
 レオは表情を崩さずに、一言。
「いかないからな」
「えっ!?」
「群れていいことなんかねぇよ」
 広海は呆気にとられた。
「でも、軍隊ですよ?」
「今更おかしいだろ。生存者の救済っていう大義名分で、別に目的があるんじゃねーの」
 危うく広海は、うんざりという気持ちが顔にでそうになった。咄嗟に表情を繕うが、発する言葉に、呆れた響きを隠せなかった。
「そんな……いちいち疑っていたらきりがないでしょ」
「だめだ。ゾンビより人間の方が危険だ」
 全く、ああいえばこういう。レオが一度でも広海に賛同することはあるのだろうか?
「ここにいたって、いつまでもうまくいきっこないよ」
「うまくいってるじゃねーか」
「レオは強いけど、でも、人は一人じゃ生きてはいけないんですよ」
「一人じゃないだろ、俺とロミの二人だろ。俺達にとって、感染者は無料で手に入る最強の便利なバリケードなんだぜ? ここ以上に安全な場所はねぇよ」
「……ずっと考えていたんです。俺に免疫があるなら、ひょっとしたら俺の血液から、ウィルスに対抗するワクチンをつくれるんじゃないかって!」
「はぁ?」
 金緑の眼光が鋭さを増した。
 思わず怯みそうになったが、広海は目を逸らさなかった。
 躰が変化してから、自己嫌悪と自己肯定の間で激しく揺れる広海にとって、人類への医療貢献への可能性は希望だった。
「簡単にいうけどお前、ワクチン開発がどれだけ大変か判ってる? 軍が総力をあげて取り組んで、感染者を隔離して、あらゆる投薬を試してるけど、成果がでてないんだぞ? お前が協力したら、解決するとでも思ってンの?」
「それは……やってみないと判らないけど、試してみる価値はあるでしょう」
「百歩譲って、ロミの血液からワクチンを作れたとしても、多額の費用と時間がかかるだろ。臨床試験にさらに数ヶ月かかる。どこにそんな設備があるんだ? 完成する頃には、全員死んでるよ」
「なんで、否定ばっか……やってみないと判らないじゃん」
「ったく、いいかげん判れ。感染者より人間の方が遥かに危険なんだって。お前を守れるのは俺だけなんだよ!」
 独裁者のような命令口調に、広海は唇を噛み締めた。
「……判りました。俺一人でいきます。レオはここに残ればいい」
 レオは怖い顔になった。有無をいわせず広海の腕を掴んで寝室に戻ると、ベッドに突き飛ばして伸し掛かってくる。躰の自由を奪ってから、噛みつくように唇を奪った。
「んぅっ」
 頭にきた広海は、力の限り精一杯に暴れたが、膂力りょりょくの差は歴然だった。犯すように唇を貪られながら、服を奪いとられ、素肌を掌が這いずり回る。
 ようやく唇が離れた時、広海の唇は朱く腫れて、涙に濡れていた。レオは唇を指でぬぐいながら、
「……どうすんだよ、キスだけでこんな風になっちまうくせに。襲われたら、一巻の終わりじゃねぇか」
「っ、こんな、ことするの、レオだけだしっ」
「はぁ? 軍事施設にいくんだろ、実験と称していろんなことされるぜ」
「いろんなって、別にセクハラされるわけじゃない。血の提供とか、そういう……」
 レオは嘲弄ちょうろうをこめて鼻で嗤った。
「アホか、てめーは。相手は専門家だぞ。徹底的に調べ尽くすに決まってンだろ。唾液から血液、精液、尻もいじられて、エナジー・ドリンクだすなんて知られてみろよ、搾取するに決まってンだろ。どろどろに蕩けて、喘ぐロミ見て、勃起させながらお前のこと弄りまくるよ」
「ふぅ……っ」
 悔しさのあまり、嗚咽がこみあげてくる。
 レオは不意に黙りこむと、すすり泣く広海の髪を優しく撫でた。休戦のしるしかと思われたが、いきなり、剥きだしの尻を掴まれた。
「離せっ」
「ほらぁ、びしょびしょじゃん……お前、正体明かして、無事で済まされるなんて本気で思ってンの?」
「思うよ! こんなことするのレオだけだよ、皆がするわけないだろっ」
「するに決まってるだろ」
 レオは片頬を歪めて嗤うと、中指を熟れた尻孔に突き立てた。びくびくと身悶える広海を舐め廻すように見つめながら、ぐりぐりと奥を探る。
「あッ! 嫌だ、抜いて……っ」
「あーぁ……簡単に挿入はいっちゃった。すっげぇ柔らかいよ。口では嫌っていいながら、感じちゃってるんだ」
「違う! うぅ、えっちすぎるよぉ……もうやだ、ふ、普通になりたい……っ」
 レオの呼気が荒くなり、広海の耳を舐めあげた。はぁはぁと荒い息をたてながら、耳孔に舌をねじこむ。ぐちゃぐちゃと濡れた音に鼓膜を嬲られ、広海は全身を戦慄わななかせた。
「えっちなのはロミだろ。俺がちょっと触るだけで、乳首もちんぽもびしょびしょに濡らして、えっちなお尻からエナジー・ドリンク溢れさせちゃうんだろ」
「いわないでよぉ……んぅ」
 顔を背けようとしたが、強引に唇を奪われた。後孔を指で撹拌かくはんされて、じゅぷぷっと蜜が溢れでる。シーツにはしたない旨味しみが沁みをつくるほど、しとどに尻が濡れてしまっている。
「あ、あっ! やだ……ぃや……レオ、ごめんなさ……あぁッ」
 とうとう敗北の泣きが入ったが、レオはやめようとしなかった。執拗なほど尻を指で犯したあと、そこに顔をうずめた。高い鼻梁を突き刺すようにして、匂いを嗅ぎまくる。
「やめろぉッ」
 広海は羞恥に喚いた。れろぉ……っと濡れた尻を舐められ、背筋がぞくぞくと慄える。
 嗚呼――
 泣きながら、広海はこれから何をされるのか悟った。恥ずかしい水音を立てながら、吸われてしまうのだ。得体の知れない何か、いやらしい広海のエナジー・ドリンクを。
 熱を孕んで膨らんだ孔に、ぴったり唇が押し当てられた。
 髪に手を差しこみ、必死に押しのけようとするが、びくともしない。レオはいっそう興奮した様子で鼻息荒く、しゃぶりつくような勢いで舌をもぐらせてきた。
「ああぁぁんッ」
 信じられないほど甘い嬌声が迸った。
 艶めかしい音を立てながら啜られ、犯すみたいに、獣のように貪られて、広海の瞳から涙が溢れでた。
 理性が砕かれる刹那、渾身の力でレオの拘束を振りほどき、逆にレオの腕を掴んだ。
「レオッ!」
 頬を上気させたレオは、驚いた顔つきで広海を見た。
「やっぱり俺たち異常だよっ! 一緒に避難所にいこう? 病気じゃないか診てもらおう?」
 レオの表情が険しくなる。一瞬にして、広海の両足を脇に挟みこみ、強引に割り開いた。
「ぅわ、ちょっ」
 思いきり身をよじったら、片足が自由になった。そのままレオを蹴飛ばそうと脚を振りあげた拍子に、陰茎が撥ねて、蜜が飛び散る。
 レオは暴れる脚を難なく押さえると、ふくろごと肉茎を掴んだ。
「ッ!」
 急所を潰されかねない恐怖に、広海は震えあがった。哀願するようにレオを仰ぐと、捕喰者のような眼で見つめ返された。視線で動きを封じたまま、頬に撥ねた蜜を、紅い舌で舐めとる。
 ぞくりとするほどの艶かしさで、広海は胸の奥を鷲掴まれたような心地がした。
「……暴れんな。抑え効かなくなっから」
 低く囁くと、レオは身を屈め、薄い蜜を垂らしている肉茎に舌を這わせた。
「ひぁっ」
「じっとしてな、ロミ」
 ふくろに柔らかく歯をたてられると、広海は怖くて、抵抗ができなくなる。
 熱い舌は、蜜をこぼしている肉茎をぞろろっ……と下から上へと大胆に舐めあげた。
「あぁッん」
 強烈な快感がはしった。極めてしまいそうなほどに。レオは切なげに震える亀頭を咥えこむと、じゅぽじゅぽと音が立つほどの激しい口淫を始めた。
「んぁっ、やめてぇ……ッ」
 形の良い唇が押し拡げられ、広海の性器がでたり挿入はいったりしている。えもいわれぬ快感。悦びの戦慄が脊柱せきちゅうを這いあがってくる。
「あ、あ、あッ……イ、イくぅ~――……ッ!」
 絶頂を極めて、びくびくと痙攣する広海の腰をレオは両手で掴み、こぼすまいと唇をぴったりと押しつけて、噴きあがる蜜を飲み干している。
「くぅっ……もぅ……舐めないで……っ」
 最後に、じゅうううっと鈴口を吸ってから、レオは顔を離した。
「ン……あっま」
 顔をあげたレオは、壮絶に艶めいていた。広海の視線は、濡れた唇に釘づけになる。レオは微笑を浮かべ、服を脱ぎ捨てると、裸身で迫ってきた。
 逃げようとする広海を全身を使って押さえつけたまま、乳首を指で摘む。
「ぁっ」
 先程から疼いていた双つの胸粒に、じわりと蜜が滲む。つぅと垂れて下腹まで滴り落ちる。恥ずかしいのに、胸が切なくしこって、疼いている。
(吸ってほしい……)
 無意識の、秘めた欲望だった。
 尖りきった乳首をそっと吸われると、敏感な肉芽に奔流がはしり抜けた。繊細な動きで舌が動き回り、優しく、甘く淫らに嬲られる。
「ひぃ、ぁ゛っ」
 強烈な射精感が乳首を震わせ、白い悦楽が噴きあがった。ちゅぅっと強く吸いあげられ、舌鼓を打つような、水の撥ねるような淫靡な水音にさえ感じてしまい、広海は髪を振り乱してむせび泣く。
「ぁんっ、ひぁ! も、吸わないで、やだよぉ……っ」
 熱い強靭な躰に捕らわれたまま、片方の乳首をしゃぶられながら、もう片方をくにくにと指で弄ばれている。
 ぷはっ、とレオが唇を離した瞬間、白蜜が飛び散り、レオの顔を濡らした。
「は……やだじゃねーよ、こんなエロい匂いさせておいて……っ」
 滴り落ちる雫を舌で舐めとりながら、再び顔をさげてそそり立つ乳首にそっと歯を立てた。
「あっ! はぁっ……ん」
 甘美な刺激に、広海の躰は、びくびくと艶かしく波打った。レオの頭を掴んで押しのけようとするが、うまく力が入らない。
「ふ、あぁ……んっ……も、やめて」
 いつまで経っても、快感の渦から抜けだせない。このままでは、一欠片の羞恥さえ粉々になってしまいそうだ。
 餓えた狼のように、レオはかわるがわる左右の胸に舌を這わせ、喉を鳴らして貪っている。
 淫らな吸引は長く続き、一滴も乳が滲まなくなると、ようやくレオは顔をあげた。
 満足そうに濡れた唇を舌で舐めとりながら、ぐったり四肢を投げだす広海をひっくり返し、双丘を両手でぐっと割り開いた。
「やだ! あ、あぁッ」
 止める間もなく、再びぬかるんだ孔に舌がもぐりこんできた。
 じゅるじゅる、信じられないほど淫靡な音が尻から聞こえてくる。シーツを掴み、逃げようと藻掻き、喚いて、啼いて、それでもレオは赦してくれない。飽かず貪欲に貪っている。
 彼の喰欲は、日毎夜毎ひごとよごと強まっていくように感じる。異常だけれど、広海はもっと異常だ。性的嗜好の変化についていけない。
 まるで自分が、得体の知れない生き物になったように感じられた。
 淫らな痴戯ちきの虜になってよがり狂い、全身を汗と蜜とに濡らしながら、忘我の涯てに貫かれた。