超B(L)級 ゾンBL - 君が美味しそう…これって○○? -
2章:エナジー・ドリンク - 10 -
目が醒めた時、隣にレオはいなかった。
昨夜の情事が稲妻のように脳裡 に閃 いて、広海は両手に顔を沈めた。
「……はぁ~――……やっちまった……」
これまでにも際どい行為はしてきたけれど、最後の一線だけは越えずにいたのに……一体、昨日だけで何回飛び越えてしまったのだろう?
夕方から始めて、一回、二回……少し休憩してから、連続でまた二回? 三回?
記憶があやふやで、よく覚えていない。最後の方は殆ど半睡状態で、着替えや、ぐちゃぐちゃになったベッドの後片付けなんかも、全部レオがしてくれたような気がする。
「……」
躰を見おろすと、寝間着にしている短パンとシャツ、なかに下着もちゃんと履いていた。ドロドロのセックスをしたはずだが、肌はすべすべしている。そういえば、抱っこされて、シャワーも一緒に浴びたような……
たった一日の間に、告白や甘酸っぱいデートやらを全部すっ飛ばして、ゲイビ張りに濃厚な合体フルコースを経験してしまった。
「終わったな、俺……」
がっくり項垂 れたが、レオのことが気になり、ベッドを降りた。
彼を探して寝室をでると、テーブルに置かれたメモに、走り書きのような文字でベースへ行くと書いてあった。
時間はとうに昼を過ぎており、曇天 に覆われた街は時雨 に濡れている。
わざわざ憂鬱の天気のなか、でかけなくても良かったのに……そう思ったが、もしかしたら、彼も気まずかったのかもしれない。
基本的に理性的で冷静沈着な人だ。昨夜の飛ばし気味のセックスは、彼にとっても不本意だったのかもしれない。
(……後悔してんのかな)
そう思った瞬間、胸に軋 むような痛みが走った。
しばらく沈んだ気持ちで突っ立っていたが、ふと尻の具合が心配になった。
さんざん酷使 されて、ひどい有様になっていないだろうか?
急いで寝室に戻ると、下着を脱いで、全身鏡の前で四つん這いになった。
恐る恐る、鏡に尻を向ける。
情けない格好だが、自分の尻がどうなっているのか、心配でたまらなかった。
(意外と大丈夫そう……?)
大惨事になっているかと思いきや、そこは慎ましく窄まっていた。出血もしていないし、拡がってもいない。触れたところ、特に異変は感じられなかった。
(一体、あの液体はなんだったんだ? ……もうでてこないよな……?)
無色透明の不定形状 で、柑橘 みたいに甘い匂いがした……正体不明の物体Xが、尻から溢れてきたのだ。あのような症状、見たことも聞いたこともない。
今は落ち着いているが、いつまたあのような状態になるのか……想像するだけで、不安になる。
医者に診てもらいたいが、精神的に無理かもしれない。恥ずかしくて、こんなこと、たとえ医者でも話せそうにない。
自分はいよいよ、人間ではなくなってしまったのだろうか?
得体の知れぬ疲労感と恐怖に翻弄 されていると、鏡のなかで、レオと目が遭 った。
「ただいま」
彼は、このうえなく美しい微笑を浮かべながら、傍にやってきた。
「あのっ、これはそのっ」
広海は慌てて起きあがり、顔面蒼白になって下着を履こうとしたが、その手を掴まれた。
「何してンの?」
「うぅ、聞かないでください……パンツ履かせて」
「教えてくれたら、手ぇ離してあげる」
声は優しいが、にやにやと意地悪な笑みを浮かべている。この状況を面白がっていることは明白だった。
「……尻がどうなっているのか、見てました」
「ふぅん? どうだった?」
広海は憮然 となった。
「別に、普通でした。もぅいいでしょ、離してくださいよぅ」
「確かめてやるよ」
「え?」
レオは、広海の肩を掴んで鏡に向き合わせると、素早く膝上に広海をのせて、ふくらはぎを掴んで左右に割り開いた。
「ちょっ……やめてくださいっ!」
広海は真っ赤になって怒鳴った。
「自分じゃよく見えないだろ? 手伝ってやるよ」
「いらねーっ」
脚を振って暴れるが、レオは離そうとしない。宥 めるようにこめかみにキスされただけで、躰に震えが走った。
鏡に、丸出しの股間が映っている。昨夜の蕩 けるような愛撫が蘇 り、触れられてもいない股間が脈打ち、後孔 がはしたなくひくついてしまう。
「ゃ……っ」
「かわいい、ロミ……」
ちゅっちゅっと髪や瞼 にキスの雨を受けながら、性急にシャツを脱がされ、大きくて骨ばった手に翻弄 された。
胸の膨らみを揉みしだかれ、はしたなく膨らんだ亀頭が喘 ぎ、蜜をこぼす性器を上に下に扱 かれながら、乳首を摘まれると、たまらずに嬌声 が迸 った。
「あ、あっ……んぁッ」
「ちゃんと見ろよ」
顎を捕まれ、正面を向かされる。
鏡のなかの淫らな光景に、広海は泣きそうになった。だらしのない顔をして、あさましく乳首を濡らして、性器を勃 たせて、まるで得体の知れない化け物だ。
「やだぁ……っ」
逃げようとする広海の髪にキスをしながら、レオは、尻のしたに指をもぐらせた。
「……こっちも濡れてる」
耳元に囁かれて、広海の全身は燃えるように熱くなった。彼のいう通り、弁明のしようがないほど、感じてしまっている。
「お尻ぐしょぐしょだよ、ロミ……」
ぎゅっと広海は目を瞑った。しかし視覚を遮断しても、濡れた水音に聴覚を犯される。
「見ろよ、ほら」
嫌だ。唸 り声をあげて広海は暴れたが、レオに腕を掴まれた。
「ロミ、そんなに怖がるなよ。これはただの、分泌物だから。ほら、見てみ? その方が安心すっから」
優しく言われて、恐る恐る、広海は瞼 を開けてみた。
けれども目を開けた瞬間、死にたくなるほどの後悔に襲われた。
尻から、甘い媚薬 のような香りと、透明な淫蜜を溢れさせ、レオの指をしとどに濡らしてしまっている。
あまりの卑猥さに、広海は、魂が抜けたようにぼんやりとなり、眉をしかめ、瞳 を潤ませた。
「ふぅ……っ」
「泣くなよ、別におかしくないって……ほら、溢れてきた」
レオはうっとりしたような声音で呟くと、潤んだ蕾にそっと指をもぐらせた。
「だめっ」
焦って、股間をまさぐる腕を掴むが、レオは少しも動じない。
「ちゃんと見えた?」
囁きながら、指を淫らに前後させる。潤んだ孔に指が出入りするたびに、じゅぷっ……ぬぽっ……と聞くに耐えない水音が弾けた。
「もういい、判ったから! 離してっ」
広海はレオの胸に縋 りついて懇願した。
「ほんと? ちゃんと見た?」
「見ましたっ! 離してください!」
「いい匂い……」
レオが喉 を鳴らした。広海は恐々と、鏡のなかのレオを見つめた。炯々 と輝く捕喰者の目だ。
喰われる――そう思った時には、抱きあげられ、乱暴にベッドの上に放られた。
「あっ!」
スプリングの効いたベッドに躰が撥 ねる。逃げる間もなく、うつぶせにされ、背中から伸 しかかられた。
「やめて……っ」
尻たぶを両の親指で割り開かれ、うねる蕾に、熱い吐息がかかった。振り向けば、レオは高い鼻梁 を尻のあわいに埋めて、匂いを嗅ぎまくる。
「ひぃっ」
「お尻の滋養剤飲ませて」
「滋養剤じゃないぃ~~~っ」
広海は涙声で訴えたが、レオは躊躇 なく舌を伸ばした。
「じゃあ、エナジー・ドリンク? 飲ませて」
「違うぅっ」
「ン……ロミのエッチな淫液、美味しいよ」
「淫液いうなぁっ! ……あぁッ! あぁ……ん……っ」
孔の奥にまで舌が挿入 ってきて、脳髄 まで痺れた。強烈な悦楽に襲われ、びゅるっ……びゅく、びゅく……はしたなく溢れる正体不明の物体Xを啜 られてしまう。
「あぁッ! っ……あぁッ!!」
広海は逃げようと必死に藻掻 いた。どんなに暴れても振りほどけない。手足を振ってシーツの海を泳いでも、すぐに腰を掴んで引き戻される。
「ひッ……やだぁ、吸わないでぇ……っ」
情けなくも涙まじりの懇願だった。
逃げようとする広海を押さえつけて、レオは餓えた狼のごとく広海を貪 っている。
「っ、はぁ……うまいよロミ……」
焼けつくような熱さと、嬲 るような舌の動きに、広海は喘 ぎながらシーツをきつく掴んだ。
さんざん吸われて、何もでなくなると、ようやくレオは顔をあげた。満足そうに唇を舐める仕草は、さながらミルクの最後の一滴を舐めとる猫のようだ。
悪魔のような猫は、胸を喘 がせる広海を優しく抱き起こし、自分の膝上に乗せた。
「……ロミ、ヘーキ?」
ちゅっと唇にキスをされて、広海は敗北の目でレオを見つめた。
「へーきじゃなぃ……っ」
ぽろっと涙がこぼれ落ちる。レオは赤くなった眦 に、唇で触れた。優しい慰めの仕草だが、さんざん貪 っておいて、今更である。
「なんで、こんなことするの……?」
「……腹減ったから」
「喰料なら、まだ」
「違う」
レオはすぐに否定した。少し考えてから、唇を開いた。
「前にも言ったけどさ……あの日から、俺達はお互いを養えるように進化 したんじゃねーかな」
「……養えるように?」
「うん。俺はもう、以前のようには空腹を感じないんだ。でもロミは欲しい……お前は信じられないんだろうけど、俺はロミの唾液飲みたいし、おっぱいも精液も美味しく感じるよ。舐めると、驚くほど回復するっていうか……細胞が目覚めていくのが自分でも判るんだ」
「なに、いってるの……」
「たぶん、この危機的状況に、順応しようとしているんだと思う。ロミはどう? 最近空腹を感じる?」
広海は絶句した。
確かに、喰欲は失せている。心理的な要因もあるとは思うが、躰が喰料によるエネルギーを必要としていないのだ。排泄の仕方も変わってしまった。
「……俺は喰べますよ、人間だし」
まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
「嗜好品としては俺も好きだよ。珈琲とか、酒とかつまみとか。だけどもう、生命維持には不要なんだ。俺の生命線はロミだよ」
奇妙に確信めいた口調だった。レオは、言葉に詰まる広海を見て、さらに続ける。
「俺はロミを喰う と、超人みたいになれる。ロミはできなくても、俺ができれば問題ねぇし……これって、いわゆる相利共生 じゃねぇ?」
そういいながら、レオの手があやしく動き始めた。頬やこめかみにちゅっ、ちゅっと啄 むようなキスをしながら、膨らんだ胸を揉むようにして撫であげる。
「ぁ……待って」
「やだ? ……でも、溢れちゃってるし……飲ませて……ね?」
胸の痼 りを指にそっと摘まれて、広海はびくんっと震えた。レオはゆったりした仕草で顔をさげ、ふくよかな胸に唇をつけた。感じやすく硬くなった乳首をくちに含み、そっと吸いあげる。
「んぁっ」
迸 る悦楽に、救済と破滅を感じる。思わずレオの頭を掴んだ。そっと吸われて歯をたてられると、股間が脈打った。
「あぁッ……変っ、俺、俺ぇ、おかしいって」
「ン……おかしくねぇよ、これでいいんだ」
レオは唇を離し、広海の腰を抱きながら、唇にちゅっとキスをした。朱くなる広海を、金緑 の瞳 で愛おしそうに見つめながら、
「俺も変わったよ。目の色もだけど、今朝シャワー浴びたら、体毛がなくなってた」
「え……?」
広海は戸惑いつつ、レオの艷やかな黒髪を見た。髪の毛ならふさふさしているが……と、無言の問いに答えるように、レオは立ちあがり、男らしくシャツを脱ぎ捨て、ジーパンも蹴るようにして脱ぎ捨てた。
「ほら」
一瞬、しなやかな肉体美を誇示 しているのかと思ったが、色っぽい頸筋 、鎖骨、割れた腹筋……雄々しく勃起している股間に視線をとめ、目を瞠 った。
陰毛が、綺麗さっぱり、なくなっていた。
「……脱毛?」
「ちげぇ、勝手に抜けた」
レオは淡々と答えた。
意味がわからず、広海は頸 を傾げた。
……よく見れば、彼の腕や脚の柔らかな体毛までもがない。元々薄い方だったが、今は絹のようななめらかさだ。髪以外の、全身の毛がなくなっていた。
「まぁ、驚くよな。俺もびびったし……涼しくていいっちゃいいんだけど」
広海はなんとく、自分の手を見た。レオと違って、体毛がある。彼の変化は、広海にはあてはまらないようだ。それにしても、毛深さは人並みと思っていたが、無毛のレオに比べると、自分が毛むくじゃらになった気分だった。
と、じっと見つめていた腕を、レオにとられた。はっと顔をあげると、迫力の増した獰猛な瞳 に射抜かれた。
「俺は、生きるためにロミが必要なんだ。だから、躊躇 ったりしねぇよ」
突然、レオは乱暴な仕草で広海を組み敷いた。
「レオっ」
広海はレオの肩を掴んだが、レオは構わず、身を乗りだしてきた。
「んっ」
頬を掴まれ、唇を奪われた。舌を搦 めながら、レオは広海の肌に触れてきた。
腕を使って抵抗を試みるが、巧みに押さえこまれてしまう。甘い責め苦に囚われ、熱病に罹 ったように朦朧 となるが、脚首を持ちあげられた瞬間に少し冴えた。
「も、やりたくなぃ……」
広海は、弱々しく頸 を振った。レオはふーっと荒い息を吐きながら、腰を進めてきた。
「はぁうぅっ」
一気に貫かれて嬌声 が迸 る。熱い楔 が根本まで沈みこみ、ゆっくり抜けていき、また挿入 ってきた。
「ぁっ……あぅ、あ、ん……っ」
ぬぷぬぷと浅いところを抜き挿しされると、焦れったくて、もどかしくて、広海は頭を振って身悶 えた。
物足りない……おずおずと視線をあわせると、ぐぐっと腰が沈みこんだ。
「はぁ……気持ちいーよ、ロミ……っ」
昨夜教えこまれたばかりの剛直を喰 みしめ、蜜を搦 めてしゃぶれば、全身が、甘い蜜となって蕩 けていくように感じられた。
「ぁ……ふぁ……んっ」
達 くには刺激が足りなくて、自分で慰めようと前に伸ばした手を、レオに掴まれた。
「……もうちょい、我慢して」
広海は泣きそうになった。それなのに、レオは濡れた性器の根本を締めあげ、淫らな抽挿 で追い打ちをかける。
「レオっ、い、たいっ、はなしてっ」
「……イくとこ、見して」
焦げつくような欲望の眼差しに、広海の全身に漣 のように震えが疾 った。
「無理っ、手ぇはなして……っ」
深く穿 たれ、荒々しい律動に、ベッドが悲鳴をあげている。
熱くて長大なものが股間を貫き、ずしりとした睾丸が尻にあたる艶めかしい衝撃と共に、淫らな音をたてる。
敏感な痼 りを灼熱 の肉棒に擦られて、広海の下半身は、どろどろに溶けていた。全身ぐずぐずに蕩 かされて、全く力が入らない。
「あ、あっ、レオ、ゆっくり……もっと、優しくぅっ」
涙声で懇願すると、レオの双眸 が翳 った。広海の黒髪を優しくかきあげながら、力強く突きあげた。
「あぁっん……や、あぁうぅぅ……ッ!」
一突きごとに結合部が泡立ち、自分とは思えぬ甘い喘 ぎ声、腰のぶつかる音が脳天に響く。解放を求めて、広海は背を弓なりにした。
さしだされた胸にレオは顔を伏せ、尖った乳首をくちに含んだ。舌を搦 めて、ぢゅぅっと溢れる蜜を美味 そうに啜 りあげる。
「――ぁッ……んぁ……あッ!」
ぞくぞくっと震えが脊柱 を疾 り抜け、広海はレオの引き締まった躰にしがみついた。
「ん、ロミ……ッ」
レオは局部をいっそう押しつけ、荒々しく広海を揺さぶり始めた。限界が近いのだ。
「離してぇっ」
広海は股間を掴む手を掴み、泣いて懇願した。指環に戒 められた陰茎は、朱く膨らんで、はらはらと涙をこぼしている。もう限界だった。動けぬようしっかりと押さえつけられたまま、灼熱 の熱塊 に激しく貫かれる。
「いッ、イっちゃ、も、だめ、あ、あぁぁ……ッ!!」
歓喜。恍惚。悦楽。
眼裏 に閃光が疾 って、白い焔に飲みこまれた。
戒 めがほどかれた瞬間、高められた快楽が爆発して、失神しかけた。
全身を戦慄 かせながら、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ…………長く、断続的に精液を噴いていた。
昨夜の情事が稲妻のように
「……はぁ~――……やっちまった……」
これまでにも際どい行為はしてきたけれど、最後の一線だけは越えずにいたのに……一体、昨日だけで何回飛び越えてしまったのだろう?
夕方から始めて、一回、二回……少し休憩してから、連続でまた二回? 三回?
記憶があやふやで、よく覚えていない。最後の方は殆ど半睡状態で、着替えや、ぐちゃぐちゃになったベッドの後片付けなんかも、全部レオがしてくれたような気がする。
「……」
躰を見おろすと、寝間着にしている短パンとシャツ、なかに下着もちゃんと履いていた。ドロドロのセックスをしたはずだが、肌はすべすべしている。そういえば、抱っこされて、シャワーも一緒に浴びたような……
たった一日の間に、告白や甘酸っぱいデートやらを全部すっ飛ばして、ゲイビ張りに濃厚な合体フルコースを経験してしまった。
「終わったな、俺……」
がっくり
彼を探して寝室をでると、テーブルに置かれたメモに、走り書きのような文字でベースへ行くと書いてあった。
時間はとうに昼を過ぎており、
わざわざ憂鬱の天気のなか、でかけなくても良かったのに……そう思ったが、もしかしたら、彼も気まずかったのかもしれない。
基本的に理性的で冷静沈着な人だ。昨夜の飛ばし気味のセックスは、彼にとっても不本意だったのかもしれない。
(……後悔してんのかな)
そう思った瞬間、胸に
しばらく沈んだ気持ちで突っ立っていたが、ふと尻の具合が心配になった。
さんざん
急いで寝室に戻ると、下着を脱いで、全身鏡の前で四つん這いになった。
恐る恐る、鏡に尻を向ける。
情けない格好だが、自分の尻がどうなっているのか、心配でたまらなかった。
(意外と大丈夫そう……?)
大惨事になっているかと思いきや、そこは慎ましく窄まっていた。出血もしていないし、拡がってもいない。触れたところ、特に異変は感じられなかった。
(一体、あの液体はなんだったんだ? ……もうでてこないよな……?)
無色透明の
今は落ち着いているが、いつまたあのような状態になるのか……想像するだけで、不安になる。
医者に診てもらいたいが、精神的に無理かもしれない。恥ずかしくて、こんなこと、たとえ医者でも話せそうにない。
自分はいよいよ、人間ではなくなってしまったのだろうか?
得体の知れぬ疲労感と恐怖に
「ただいま」
彼は、このうえなく美しい微笑を浮かべながら、傍にやってきた。
「あのっ、これはそのっ」
広海は慌てて起きあがり、顔面蒼白になって下着を履こうとしたが、その手を掴まれた。
「何してンの?」
「うぅ、聞かないでください……パンツ履かせて」
「教えてくれたら、手ぇ離してあげる」
声は優しいが、にやにやと意地悪な笑みを浮かべている。この状況を面白がっていることは明白だった。
「……尻がどうなっているのか、見てました」
「ふぅん? どうだった?」
広海は
「別に、普通でした。もぅいいでしょ、離してくださいよぅ」
「確かめてやるよ」
「え?」
レオは、広海の肩を掴んで鏡に向き合わせると、素早く膝上に広海をのせて、ふくらはぎを掴んで左右に割り開いた。
「ちょっ……やめてくださいっ!」
広海は真っ赤になって怒鳴った。
「自分じゃよく見えないだろ? 手伝ってやるよ」
「いらねーっ」
脚を振って暴れるが、レオは離そうとしない。
鏡に、丸出しの股間が映っている。昨夜の
「ゃ……っ」
「かわいい、ロミ……」
ちゅっちゅっと髪や
胸の膨らみを揉みしだかれ、はしたなく膨らんだ亀頭が
「あ、あっ……んぁッ」
「ちゃんと見ろよ」
顎を捕まれ、正面を向かされる。
鏡のなかの淫らな光景に、広海は泣きそうになった。だらしのない顔をして、あさましく乳首を濡らして、性器を
「やだぁ……っ」
逃げようとする広海の髪にキスをしながら、レオは、尻のしたに指をもぐらせた。
「……こっちも濡れてる」
耳元に囁かれて、広海の全身は燃えるように熱くなった。彼のいう通り、弁明のしようがないほど、感じてしまっている。
「お尻ぐしょぐしょだよ、ロミ……」
ぎゅっと広海は目を瞑った。しかし視覚を遮断しても、濡れた水音に聴覚を犯される。
「見ろよ、ほら」
嫌だ。
「ロミ、そんなに怖がるなよ。これはただの、分泌物だから。ほら、見てみ? その方が安心すっから」
優しく言われて、恐る恐る、広海は
けれども目を開けた瞬間、死にたくなるほどの後悔に襲われた。
尻から、甘い
あまりの卑猥さに、広海は、魂が抜けたようにぼんやりとなり、眉をしかめ、
「ふぅ……っ」
「泣くなよ、別におかしくないって……ほら、溢れてきた」
レオはうっとりしたような声音で呟くと、潤んだ蕾にそっと指をもぐらせた。
「だめっ」
焦って、股間をまさぐる腕を掴むが、レオは少しも動じない。
「ちゃんと見えた?」
囁きながら、指を淫らに前後させる。潤んだ孔に指が出入りするたびに、じゅぷっ……ぬぽっ……と聞くに耐えない水音が弾けた。
「もういい、判ったから! 離してっ」
広海はレオの胸に
「ほんと? ちゃんと見た?」
「見ましたっ! 離してください!」
「いい匂い……」
レオが
喰われる――そう思った時には、抱きあげられ、乱暴にベッドの上に放られた。
「あっ!」
スプリングの効いたベッドに躰が
「やめて……っ」
尻たぶを両の親指で割り開かれ、うねる蕾に、熱い吐息がかかった。振り向けば、レオは高い
「ひぃっ」
「お尻の滋養剤飲ませて」
「滋養剤じゃないぃ~~~っ」
広海は涙声で訴えたが、レオは
「じゃあ、エナジー・ドリンク? 飲ませて」
「違うぅっ」
「ン……ロミのエッチな淫液、美味しいよ」
「淫液いうなぁっ! ……あぁッ! あぁ……ん……っ」
孔の奥にまで舌が
「あぁッ! っ……あぁッ!!」
広海は逃げようと必死に
「ひッ……やだぁ、吸わないでぇ……っ」
情けなくも涙まじりの懇願だった。
逃げようとする広海を押さえつけて、レオは餓えた狼のごとく広海を
「っ、はぁ……うまいよロミ……」
焼けつくような熱さと、
さんざん吸われて、何もでなくなると、ようやくレオは顔をあげた。満足そうに唇を舐める仕草は、さながらミルクの最後の一滴を舐めとる猫のようだ。
悪魔のような猫は、胸を
「……ロミ、ヘーキ?」
ちゅっと唇にキスをされて、広海は敗北の目でレオを見つめた。
「へーきじゃなぃ……っ」
ぽろっと涙がこぼれ落ちる。レオは赤くなった
「なんで、こんなことするの……?」
「……腹減ったから」
「喰料なら、まだ」
「違う」
レオはすぐに否定した。少し考えてから、唇を開いた。
「前にも言ったけどさ……あの日から、俺達はお互いを養えるように
「……養えるように?」
「うん。俺はもう、以前のようには空腹を感じないんだ。でもロミは欲しい……お前は信じられないんだろうけど、俺はロミの唾液飲みたいし、おっぱいも精液も美味しく感じるよ。舐めると、驚くほど回復するっていうか……細胞が目覚めていくのが自分でも判るんだ」
「なに、いってるの……」
「たぶん、この危機的状況に、順応しようとしているんだと思う。ロミはどう? 最近空腹を感じる?」
広海は絶句した。
確かに、喰欲は失せている。心理的な要因もあるとは思うが、躰が喰料によるエネルギーを必要としていないのだ。排泄の仕方も変わってしまった。
「……俺は喰べますよ、人間だし」
まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
「嗜好品としては俺も好きだよ。珈琲とか、酒とかつまみとか。だけどもう、生命維持には不要なんだ。俺の生命線はロミだよ」
奇妙に確信めいた口調だった。レオは、言葉に詰まる広海を見て、さらに続ける。
「俺はロミを
そういいながら、レオの手があやしく動き始めた。頬やこめかみにちゅっ、ちゅっと
「ぁ……待って」
「やだ? ……でも、溢れちゃってるし……飲ませて……ね?」
胸の
「んぁっ」
「あぁッ……変っ、俺、俺ぇ、おかしいって」
「ン……おかしくねぇよ、これでいいんだ」
レオは唇を離し、広海の腰を抱きながら、唇にちゅっとキスをした。朱くなる広海を、
「俺も変わったよ。目の色もだけど、今朝シャワー浴びたら、体毛がなくなってた」
「え……?」
広海は戸惑いつつ、レオの艷やかな黒髪を見た。髪の毛ならふさふさしているが……と、無言の問いに答えるように、レオは立ちあがり、男らしくシャツを脱ぎ捨て、ジーパンも蹴るようにして脱ぎ捨てた。
「ほら」
一瞬、しなやかな肉体美を
陰毛が、綺麗さっぱり、なくなっていた。
「……脱毛?」
「ちげぇ、勝手に抜けた」
レオは淡々と答えた。
意味がわからず、広海は
……よく見れば、彼の腕や脚の柔らかな体毛までもがない。元々薄い方だったが、今は絹のようななめらかさだ。髪以外の、全身の毛がなくなっていた。
「まぁ、驚くよな。俺もびびったし……涼しくていいっちゃいいんだけど」
広海はなんとく、自分の手を見た。レオと違って、体毛がある。彼の変化は、広海にはあてはまらないようだ。それにしても、毛深さは人並みと思っていたが、無毛のレオに比べると、自分が毛むくじゃらになった気分だった。
と、じっと見つめていた腕を、レオにとられた。はっと顔をあげると、迫力の増した獰猛な
「俺は、生きるためにロミが必要なんだ。だから、
突然、レオは乱暴な仕草で広海を組み敷いた。
「レオっ」
広海はレオの肩を掴んだが、レオは構わず、身を乗りだしてきた。
「んっ」
頬を掴まれ、唇を奪われた。舌を
腕を使って抵抗を試みるが、巧みに押さえこまれてしまう。甘い責め苦に囚われ、熱病に
「も、やりたくなぃ……」
広海は、弱々しく
「はぁうぅっ」
一気に貫かれて
ぬぷぬぷと浅いところを抜き挿しされると、焦れったくて、もどかしくて、広海は頭を振って
物足りない……おずおずと視線をあわせると、ぐぐっと腰が沈みこんだ。
「はぁ……気持ちいーよ、ロミ……っ」
昨夜教えこまれたばかりの剛直を
「ぁ……ふぁ……んっ」
「……もうちょい、我慢して」
広海は泣きそうになった。それなのに、レオは濡れた性器の根本を締めあげ、淫らな
「レオっ、い、たいっ、はなしてっ」
「……イくとこ、見して」
焦げつくような欲望の眼差しに、広海の全身に
「無理っ、手ぇはなして……っ」
深く
熱くて長大なものが股間を貫き、ずしりとした睾丸が尻にあたる艶めかしい衝撃と共に、淫らな音をたてる。
敏感な
「あ、あっ、レオ、ゆっくり……もっと、優しくぅっ」
涙声で懇願すると、レオの
「あぁっん……や、あぁうぅぅ……ッ!」
一突きごとに結合部が泡立ち、自分とは思えぬ甘い
さしだされた胸にレオは顔を伏せ、尖った乳首をくちに含んだ。舌を
「――ぁッ……んぁ……あッ!」
ぞくぞくっと震えが
「ん、ロミ……ッ」
レオは局部をいっそう押しつけ、荒々しく広海を揺さぶり始めた。限界が近いのだ。
「離してぇっ」
広海は股間を掴む手を掴み、泣いて懇願した。指環に
「いッ、イっちゃ、も、だめ、あ、あぁぁ……ッ!!」
歓喜。恍惚。悦楽。
全身を